ニュージーランドで安楽死を合法化?9月の国民投票で決定

ニュージーランドでは、assisted dying(死のほう助)やvoluntary euthanasia(患者の意思による安楽死)について、長年議論が繰り返されてきていました。

昨年の11月にThe End of Life Choice Act(直訳すると生を終える選択の法)が賛成69、反対51で議会を通過。希望した末期患者が薬による死のほう助を受けられる、いわゆるEuthanasia(安楽死)を合法化すべきか否か、今年9月の国民投票によって決定することが決まっています。

Assisted dying 死のほう助とは?

このthe End of Life Choice Act(直訳すると生を終える選択の法)によると、assisted dying(死のほう助)、またはEuthanasia(安楽死)とは、医師やナース・プラクティショナー(診断や処方ができる上級看護師)が、末期患者に対し致死量の薬物を与えることで患者が死を迎えられるというもの。

そう、この「末期患者」というのがポイントで、誰もが望めば死のほう助を受けられるわけではありません。

  • 治療不可能な病気と診断されていること
  • 余命が六ヶ月以内とされていること
  • 現状の医療ではこれ以上の治療が望めないこと
  • 苦痛が軽減できないこと
  • 理解力、決定力があること

などが、安楽死が受けられる条件になるとされており、知的及び身体障害、たんに高齢者だから希望する人は対象外となります。

安楽死合法化への国民の反応は?

首都Wellington(ウェリントン)にある調査機関、Research New Zealandによると、現在64%以上のニュージーランド人が

人生をどのように尊厳をもって終えるかは個人の選択であるべきで、薬による安楽死も選択の一つとするべき

と、この安楽死合法化に賛成しているとのこと。

一方で、障害者、病人など社会的に弱い立場にいる人にとっては、安楽死の選択肢がプレッシャーになってしまうのではとの懸念が生まれることから、反対をしている人もいます。

例えば、高齢者が家族の介護の負担を軽減するために安楽死を選択せざるを得ない状況に陥ってしまったり、安楽死が合法化されることへの障害者への影響がどれくらいのものになるかは未知だとの心配も。また、安楽死を希望しない末期患者が、医療費や家族の介護の負担を逆に正当化しなければならなくなるような事態も起こってくるのではと考えられています。

苦痛緩和治療、緩和ケアを行うホスピスなどの施設からは、利用者である患者とその家族、そしてホスピスのスタッフの信頼関係があって初めてより良い緩和ケアが提供できるが、安楽死がその信頼関係に陰りを生むものだとする声も聞こえてきます。

国民投票の1年後に法が有効に

もし9月19日に行われる国民投票で、半数以上が賛成した場合、この安楽死を合法化する法律は、国民投票の結果が出た日から一年後に施行されます。

安楽死を行う医療従事者側は、治療を行っている間、患者本人に安楽死を薦めることはできません。あくまで患者本人の希望・決定である必要があります。

患者が安楽死を認められるためには、自身の主治医と、第三者の立場である医師の二人が、患者が安楽死を受ける条件を満たしていること、また患者本人が安楽死を希望する意思決定能力があるかどうか診断します。もし、この二人の医師が両方とも、患者本人の意思決定能力を疑問視した場合は、患者に対し、精神科医による診断が行われます。

もし安楽死が認められた場合、安楽死の方法と日時が決められます。また、実際に安楽死が行われる際には、再度患者の意志が確認され、もし患者に気持ちの変化があればすぐに中止となります。

国民投票の正式な結果は10月9日発表の予定。もし可決されれば、スイス、アメリカの一部の州、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、オーストラリアのビクトリア州、そして2017年に試験導入がスタートした韓国についで、既に他人による安楽死を法律で容認している国に加わります。

この記事の筆者

石黒
石黒 沙弥
高校・大学時代を過ごしたNZを故郷と愛する。購入するワインは100%NZで、常備しているのはSILENIのソーヴィニヨン・ブラン。マーマイト大好き。歴代彼氏の半分以上がKiwi。
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