世界初 トランスジェンダーのNZ女性がオリンピック代表に

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新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されながらも、昨年延期となった東京オリンピックが今年は開催の方向に向かいつつある中、一人のニュージーランド人女性アスリートが世界で話題になっています。

このアスリートはウエイトリフティング(重量挙げ)の、LaurelHubbard(ローレル・ハバード)選手。

国際重量挙げ連盟(IWF:InternationalWeightliftingFederation)は6月11日に東京オリンピックへの出場を決めるための世界ランキングを発表。ハバード選手は女子87キロ超級で7位となり、各階級でのオリンピックへの出場権が獲得できる世界8位以内に入りました。そして、ニュージーランド重量挙げ連盟がハバード選手を候補として推薦し、ニュージーランドオリンピック委員会が、代表基準を満たしているのかを審査。正式にニュージーランド代表としてオリンピックに出場することがきまりました。

なぜ、ハバード選手が話題のアスリートなのでしょうか。

史上初トランスジェンダーのオリンピック代表

出場権を獲得したハバード選手は43歳。2013年に性別適合手術を受け、男子から女子に性別を変更する前は、男子選手として活躍、ニュージーランドの国内ジュニア記録を保持していました。そう、ハバード選手はトランスジェンダーの選手。現在は女子選手として競技をしているのです。ハバード選手は性別を変更した後にオリンピックに出場する、史上初のトランスジェンダーアスリートになったのです。

2017年の世界選手権で銀メダルを獲得、2018年にはコモンウェルスゲームズ(ニュージーランドのように、イギリス連邦に属する国・地域で開催される総合競技大会)ではニュージーランド代表になったものの、肘に大怪我を負ってしまいます。この時は、選手生命を絶たれたと絶望したそうですが、2019年のパシフィックゲームズ(南太平洋諸国が参加する総合競技大会)で、見事銀メダルを獲得する復活を果たしました。

ハバード選手は以前国営放送のインタビューで、

私は私。歴史を変えようとは思わない。ただ私のすべきことをするだけ

と答えていたことがありました。

トランスジェンダー女性の参加は不公平?

生まれ持った性ではなく、性別適合手術を受けたあとの性で競技に参加することについて、大きな議論が生まれています。

性適合手術を受けたとはいえ、骨格や筋肉は男性のものだと主張する人。またハバード選手の場合、過去に男子選手として競技をしていた経験があることから、体(筋肉)がその時の経験を覚えており、それが優位に働くのではという意見も。最近のリサーチで、すでに、ハバード選手と同じ階級の選手からは、LGBTQ+コミュニティーを支持するとしながらも、ハバード選手には肉体的に優位であり不公平だという声も上がっています。

ちなみに現段階で、国際オリンピック委員会(IOC)やスポーツ医学の世界では、この骨格や筋肉の差は、性別ではなく個人差なだけだという見解を発表しています。

まだまだ問題が山積み

一方で、ハバード選手がオリンピックの出場基準に合わせて競技を行うことも、大きなチャレンジ、そしてリスクがあるそうです。

性別適合手術は、肉体的にはリスクが大きいもの。術後は自身の体でホルモンを作り出すことができません。そのため、精神的、肉体的に自身を支えるために性別適合手術を受けた人は、サプリメントや注射などで、必要なホルモンを補います。

ハバード選手が女性として競技に参加するための条件の一つに、男性ホルモン(テストステロン)の数値を低くしておく必要があります。これがハバード選手のようなトランスジェンダーアスリートには大きなリスクに。またIOCがこの数値を定めるに至った根拠は医学的に古すぎると批判する声も。

オリンピックの方がトランスジェンダーアスリートを受け入れる準備ができていない。XYの染色体を持つ人(男性)のテストステロン値を下げればXX染色体を持つ人(女性)と同じテストステロン値になるだけだとするのは大きな間違い。

と語るのは自転車競技の選手でニュージーランドとカナダ両方の国籍を持ち、自身もトランスジェンダーであるKristenWorley(クリステン・ウォーレイ)さん。ウォーレイさんは過去にトランスジェンダーであったためIOCからオリンピックへの出場を拒否されたことを人権侵害だと訴え、勝訴した経験があります。

トランスジェンダーのスポーツへの参加は、アスリートを守るためにも、人権の面からだけでなく、精神的、肉体的な方向からもさらなる議論と研究が必要とされそうです。

ハバード選手のコメントがニュージーランドオリンピック選手団Webサイトに掲載されています。

ニュージーランドの多くのみなさんの思い、そしてサポートにとても感謝し、恐縮しています。

3年前のコモンウェルスゲームズで腕を骨折した時、選手としてのキャリアが終わりに来たのではとアドバイスを受けました。でもみなさんのサポート、励まし、そして愛が私を暗闇から救い出してくれたのです。

ここ18ヶ月は家族、コミュニティーの力強さ、そして同じ目的に向かうことの大切さを教えてくれました。シルバーファーン(ニュージーランドを象徴するシダ)のMana(マオリ語で超自然的な力という意味)はみなさんから来ています。私は(ニュージーランドのシンボルであるシルバーファーンを)誇りを持って身につけたいと思います。

この記事の筆者

石黒
石黒 沙弥
高校・大学時代を過ごしたNZを故郷と愛する。購入するワインは100%NZで、常備しているのはSILENIのソーヴィニヨン・ブラン。マーマイト大好き。歴代彼氏の半分以上がKiwi。
株式会社デック 取締役
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