Kiwi映画監督 ジェーン・カンピオン、アカデミー賞の歴史を塗り替える

ニュージーランド 夕焼け

3月27日、アメリカで第94回アカデミー賞授賞式が行われました。

日本映画からは、村上春樹の短編小説を原作に、濱口竜介監督がメガホンをとり、西島秀俊、三浦透子らが出演した「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞を受賞。日本映画では「おくりびと」以来、13年ぶりとなる受賞で話題となりましたね。

また、初めて主演男優賞を受賞したウィル・スミスが司会のクリス・ロックを平手打ちにするというトラブルも世界中で大きなニュースに。

でも、今回のアカデミー賞、ニュージーランドにとっても大きなニュースがあったんです。

「監督賞」はニュージーランド人

第94回アカデミー賞の監督賞を受賞したのは、ベネディクト・カンパーバッチが主演を務めた映画”The Power of the Dog”(パワー・オブ・ザ・ドッグ)ジェーン・カンピオン監督。カンピオン監督は、ニュージーランドの首都、ウェリントン出身なんです!

1954年4月30日、俳優であり脚本家である母と、教師、そして舞台・オペラの監督である父との間に次女として生まれたカンピオン監督は、両親の影響を受け、姉・弟と共にニュージーランドの舞台業界の中で育ちました。

しかし、若い頃は演劇の道に進むことを拒否し、ウェリントンにあるヴィクトリア大学では人類学を専攻。卒業後、イギリス・ロンドンにあるChelsea College of Arts(ロンドン芸術大学)に在籍、ヨーロッパを旅して回ります。その後はシドニー大学にある芸術大学で絵画の視覚芸術を学びました。のちに芸術大学での学びが基礎となっていると語っており、影響を受けた芸術家に、メキシコの画家、フリーダ・カーロや、ドイツの彫刻家、ヨーゼフ・ボイスの名をあげています。

その後、絵画だけでは満足できず、映画の世界へ。Australian Film Television and Radio School(オーストラリアの映画、テレビ、ラジオの学校)で学びながら数々の短編映画を制作しました。

2度のノミネートは史上初

1982年にオーストラリアで在学中に制作した短編映画”Peel”が第39回カンヌ国際映画祭・短編映画でパルム・ドールを受賞。初期から高い評価を受けます。

そして1993年、3作目の長編映画監督、脚本も手がけた"The Piano"(邦題・ピアノレッスン)で、第46回カンヌ国際映画祭パルムドールを女性監督として初めて受賞。また、第66回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、監督賞など8つの賞にノミネート。その際は監督賞の受賞はかないませんでしたが、脚本賞を受賞しています。

2度目の監督賞ノミネートとなった今回のアカデミー賞で見事受賞。女性監督として、アカデミー賞監督賞に2度ノミネートされたのは史上初、受賞は3人目の快挙となりました。

12の賞にノミネート

そんなカンピオン監督が手がけた、パワー・オブ・ザ・ドッグは、昨年の第78回ヴェネツィア国際映画祭において初上映され、銀獅子賞(Leone d'Argento)を受賞。

今回のアカデミー賞では、12の賞にノミネートされましたが残念ながら獲得したのは監督賞のみ。これほど多くのノミネートを受けながら1つの賞しか獲得できなかったのは珍しいそうです。

この映画は、ニュージーランド南島の最南部、オタゴ地方の田舎で主に撮影が行われました。ニュージーランドは、ハリウッド映画のロケ地としても人気。ニュージーランド人監督ピーター・ジャクソンが手がけたロード・オブ・ザ・リング、ホビットや、渡辺謙、真田広之、小雪らも出演して話題となったラスト・サムライなどもニュージーランド国内で撮影されています。

パワー・オブ・ザ・ドッグのロケーションは、ベネディクト・カンパーバッジ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンスら素晴らしい俳優たちと同じように映画に花を添えたと評価されています。ツアー等はまだ組まれていないようですが、ロケーション情報が数々のサイトで公開されています。

撮影されたオタゴ地方の中でも、セントラル・オタゴはピノ・ノワールで有名なワインの産地。ぜひ一度ワイナリーと共に訪れてみたいですね。

セントラル・オタゴ地方のワインはこちら 

この記事の筆者

石黒
石黒 沙弥
高校・大学時代を過ごしたNZを故郷と愛する。購入するワインは100%NZで、常備しているのはSILENIのソーヴィニヨン・ブラン。マーマイト大好き。歴代彼氏の半分以上がKiwi。
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