北海道の魅力満載!心にしみるヒューマンドラマ「ぶどうのなみだ」の感想とあらすじ

今回ご紹介するワイン映画は、北海道が舞台の「ぶどうのなみだ」です。

 

大泉洋さん主演の映画と聞いて、ずっと気になっていた作品です!

 

北海道はいま、日本ワイン生産地として、とても注目されているんですよ。

ぶどうの涙

引用元:ぶどうのなみだ | アスミック・エース

物語の中心は、北海道の空知地方でワインづくりをするアオ(大泉洋)、亡き父から受け継いだ小麦畑で働くロク(染谷将太)の兄弟と、突然キャンピングカーに乗って現れ、アオのぶどう畑のすぐそばで勝手に穴を掘り始める謎の女性、エリカ(安藤裕子)の3人。

冒頭、アオが畑に佇み、斧で自決しようとしている重いシーンから始まります。

アオがそこまで思い詰めてしまった理由はなんなのか?

なぜワインづくりを始めたのか?

そんな兄を見てロクは何を思うのか?

謎の女性エリカの目的は?

だんだん紐解かれていく登場人物たちの心情と、ゆっくりと変化していく彼らの関係。それらを、のどかな風景と素朴で可愛い食器や家具、北海道の食材を使ったおいしそうなお料理と、ワインが彩ってくれます。

【この記事の登場人物】

 

なっちゃん
Web系の会社に勤める29歳。もっとワインを楽しめるといいな、とワイン勉強中。
岩須
このサイトの監修を担当する、ソムリエ。自身が名古屋で営むバーでは、ニュージーランドワインを豊富に取り揃える。

「ぶどうのなみだ」詳細情報

監督・脚本の三島有紀子さんと主演の大泉洋さんは、この作品の1年ほど前に公開されたオール北海道ロケの映画「しあわせのパン」でもタッグを組んでおり、小規模上映ながらヒット作となりました。

そしてこの「ぶどうのなみだ」も前作同様、オール北海道ロケ、北海道出身の大泉洋さん主演、企画はクリエイティブ オフィス キュー(大泉さんの所属する北海道の芸能事務所)。

これに同じく大泉洋さん主演の「そらのレストラン」を加えた3作品は「北海道映画シリーズ」とも呼ばれています。

映画ジャンル ヒューマンドラマ
テーマ 北海道の魅力、人々の暮らし ワインづくりについて
制作年/国 2014年/日本
時間 117分
監督・脚本 三島有紀子
出演 大泉洋 染谷将太 安藤裕子 他
公式サイト https://www.asmik-ace.co.jp/lineup/1301

監督・キャストの紹介

監督や主要キャストをご紹介します。

監督:三島有紀子

北海道映画シリーズ「しあわせのパン」や、「ビブリア古書堂の事件手帖」などを手掛ける。

アオ役:大泉洋

「水曜どうでしょう」などの北海道ローカルバラエティで一躍脚光を浴び、以降は「探偵はBARにいる」「アイアムアヒーロー」など数々の映画やドラマ、舞台に出演。受賞歴も数多く、日本を代表する俳優のひとり。

ロク役:染谷将太

7歳の頃から子役として活動し、「ヒミズ」「寄生獣」「さよなら歌舞伎町」など話題作に続々出演中。2020年の大河ドラマ「麒麟が来る」では、織田信長を演じる。

エリカ役:安藤裕子

女優であり、シンガーソングライター。2003年ミニアルバム「サリー」でデビューし、CMソング等にも起用される。その他にも多くの映画、ドラマの主題歌を手がけている。

その他の出演者

  • 田口トモロヲ
  • 前野朋哉
  • りりィ
  • きたろう
  • 小関裕太
  • 内川蓮生
  • 高嶋琴羽
  • 大杉漣
  • 江波杏子

「ぶどうのなみだ」を見た感想

とても印象的だったのは、作品全体に漂うちょっと現実離れした世界観。メルヘンというかファンタジックというか、独特の雰囲気ですね。これは監督の前作「しあわせのパン」にも共通する作風のようです。

地べたに敷物を敷いて、その場でラムチョップやとうもろこしを焼き、ワインで乾杯。

ウエスタン調のインテリアを揃えた、屋根のない床屋さん。

ヨーロッパのケルト民族のような可愛らしい衣装を着て、楽器を鳴らしながらぶどう畑を練り歩く登場人物。

そんな、見て楽しい演出が随所にちりばめられていて、ほっこりしたり食欲が刺激されたり、穏やかなようでなかなか忙しかったです。

しかしその穏やかな雰囲気とは違い、主人公アオ(大泉洋)の心は冷たく閉ざされています。夢破れて空知に戻ってから、くすりとも笑うことなく難しい顔でぶどうを育て、ワインづくりをする毎日。 

 

普段テレビで見るおしゃべりな大泉さんのイメージとは全然違って、新鮮でしたね(笑)

共に暮らす弟のロク(染谷将太)は父親から受け継いだ小麦畑で働くことが好きで、その小麦でパンを焼き兄の待つ食卓へ届けます。

そんなおいしそうなパンを囲む食卓すら、どこかよそよそしく寂しく見えてしまうのは、兄弟の間に溝があるからだろうと感じました。

そこへ登場するのが、正体不明の旅人エリカ(安藤裕子)です。なんの前触れもなく現れ、理由もまともに説明せず、ぶどう畑のすぐそばで勝手に穴を掘り始めます。

キャンピングカーでやってきたエリカはその場に居座り、事情を聴きに来た警察官(田口トモロヲ)や野次馬の郵便配達員(前野朋哉)を巻き込んで、おいしそうな食事をつくります。

青空の下でジュージューと肉を焼き、こんがりと焼けたとうもろこしにバターをのせ、みんなでワインで乾杯。

兄弟のちょっと暗い食事風景とはとても対照的な、思わず食欲とワイン欲が刺激されてしまう、そんな素敵なシーンが繰り広げられます。 

 

エリカの着ている鮮やかな赤いワンピースも、自然の中でとても映えて印象的でした!

見ている側としては「なるほど、きっとエリカがアオの閉ざされた心を開いていくんだな?」と予想しますが、当然ながらアオは天真爛漫なエリカに対して反発します。

なんのために穴を掘っているのか?という理由は途中まで分からないままなんですが、これが相当深くまで掘り進められます。

エリカの身長の2倍くらいは掘ってましたね。 そんな深い穴を掘り進める間に近付いていく、エリカとアオの距離。

それとともに変化していく、ロクをはじめとする周りの人間との関係。 ゆっくりと、しかし着実に物語は進んでいきます。

アオはピノ・ノワールのワインづくりに励みますが、それがなかなかうまくいかず、また思い詰めてしまいます。

なにせたったひとりで文献などをもとに栽培も醸造も行っている様子。まわりに相談することもできず、これじゃあつらいだろうなと思わず同情しました。

苦悩するアオをみんなが元気づけようとするなか、エリカが起こした行動とは… ぶどうの涙、アオの涙、エリカの涙…それぞれの涙にそれぞれの意味がある。

そんな、じんわりと心にしみるような物語でした。 

 

アオがつくったワイン、どんな味がするんでしょうね…

北海道発の映画を作りたいという熱意

「北海道映画シリーズ」の2作目といわれている「ぶどうのなみだ」ですが、企画したのは、大泉洋さんが所属する演劇集団TEAM NACSで有名になった北海道の芸能事務所、クリエイティブ オフィス キューです。

鈴井亜由美社長は、北海道ロケというのはよくあるけれど、実際の映画制作は東京で行われることがほとんどという状況に難しさを感じていました。

しかしこれからの北海道のことを考えると、ロケだけでなく全ての制作、発信まで行っていくことが必要と考え、この企画を立ち上げたそうです。

その一作目「しあわせのパン」が全国的に成功を納め、二作目に繋げることができたのは、大きな成果だったのではないでしょうか。

実際に「ぶどうのなみだ」は、そこに住む人々、景観、食べ物や工芸品などの魅力が全面に出ていて、なんだか北海道っていいなぁ、行ってみたいなぁと思わせてくれる映画でした。

それも鈴井社長の熱意によるものだったんですね。

ロケ地について

オール北海道ロケということで、現地ののどかな風景やぶどう畑の風景をたくさん見ることができるこの映画。

映画を見る前でも見た後でも参考になるように情報をまとめました。

北海道のワイナリー

北海道のワイナリー

 北海道は、日本では山梨に次いで重要なワイン産地として、GI指定もされています。

梅雨のない北海道は年間雨量も少なく、昼夜の寒暖差が大きいので実がよく熟します。よく熟した糖度の高いぶどうは、ワインづくりに適しています。

しかし冬には2メートルもの雪が積もり、ぶどうの樹はほとんど埋もれてしまいます。そのような環境で育つ樹はとてもたくましく地中深くまで根を張り、そして栽培家さんの創意工夫により素晴らしい実をつけます。

 

雪に埋もれちゃうなんてすごいですね!そんな環境でもぶどうの樹は育つんですね〜。

 

人間にとっては過酷な環境でも、栽培家さんによる細かなケアがあれば、むしろ立派な果実を実らせることができるんですね。

ワイナリーは、ニッカウイスキーでも有名な「余市ワイン」、全国のスーパーでもよく目にする「おたるワイン」などがメジャーどころですね。この映画の舞台となった空知地方にも、メインのロケ地である「山崎ワイナリー」などいくつかのワイナリーがあります。

観光資源としても注目されていて、ワイナリーとチーズ工場をハシゴする、ワイン好きにはたまらないツアーなどもあります。

本州に住んでいると感覚として分かりにくいんですが、北海道の土地は信じられないほど広大です。空知地方だけでも、東京都と神奈川県を足した面積より広いんですよ(総面積5,792km²)。

北海道空知

 農作物、酪農と日本の食を支えてくれている北海道ですが、今後その広大な土地にぶどう畑がどんどん増えていくのではないでしょうか。

 

実際、新規就農でワイナリーを始めようという人達に北海道は非常に注目されています。

地球温暖化の影響もあって、ワイン用のぶどう(特にピノ・ノワールやケルナーといった品種)の栽培に適していると考える人が増えています。今後、北海道に新しいワイナリーが続々と誕生していくのは間違いなさそうです。

空知の「山崎ワイナリー」

この映画のメインのロケ地である「山崎ワイナリー」は、空知地方の三笠市にあるブティックワイナリーです。四代に渡り農作業に従事されてきたご家族で、ワイナリー事業は2002年に始められました。

残念ながらワイナリーの見学などは受け付けていないようですが、直売所でワインの試飲、購入ができます。

シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、バッカス(バフース)、ピノ・ノワール、メルロー、ツヴァイゲルトなど、ヨーロッパ品種を取り扱っています。

 
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通販もされていますので、ぜひ公式サイトをチェックしてみてください。

▶︎山崎ワイナリー公式サイト

まとめ

「ぶどうのなみだ」は北海道の魅力と、それを伝えたいという製作側の想いがたくさん詰まった素敵な映画です。
この映画を見たら、きっとワインが飲みたくなると思いますよ!
映画「ぶどうのなみだ」を配信している動画配信サービスを調べるには、こちらのサイトが便利です。

ぶどうのなみだ(Filmarks映画)

 

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この記事の筆者

ボクモワイン
ボクモワイン編集部
ボクモワインの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆&編集しています。

この記事の監修

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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