ワインの歴史を変えた事件「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」の感想とあらすじ

今回ご紹介するワイン映画は「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」です。

 

この映画、実話がもとになった映画とのことですが…

 

パリ・テイスティング事件のことですね。とてもドラマチックな出来事なので、ワイン好きにはぜひ知ってもらいたいです。

ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡

引用元:Amazon

「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」は、ワイン業界で伝説となっている「パリ・テイスティング事件(パリスの審判)」がモチーフのアメリカ映画です。

かつてワインと言えばヨーロッパワインがすべてだった時代に、当時世界では無名とも言える「カルフォルニアワイン」がワインの品評会で勝利するという、革命がおきました。

そんな、ワイン業界で起きた実話がベースの物語。

そこに登場するバレット親子の確執と絆や、息子・ボーを取り巻く友情とちょっとした恋愛要素なども入り混じり、ワインに詳しくない人でも純粋に楽しめる、爽快なサクセスストーリーです。

【この記事の登場人物】

 

なっちゃん
Web系の会社に勤める29歳。もっとワインを楽しめるといいな、とワイン勉強中。
岩須
このサイトの監修を担当する、ソムリエ。自身が名古屋で営むバーでは、ニュージーランドワインを豊富に取り揃える。

「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」詳細情報

インディー作品ながら、ワインバーなどでの地道なPR活動が成功しヒット作となりました。日本では劇場未公開でDVDリリースのみでしたが、ワイン好きの間では有名な作品です。

 

いまは動画配信サービスで見られるから便利ですね!

映画ジャンル ヒューマンドラマ
テーマ ワインづくり、親子愛、友情、恋愛
原題 Bottle Shock
制作年/国 2008年/アメリカ
時間 109分
監督・脚本 ランドール・ミラー
出演 アラン・リックマン (「ハリー・ポッター」シリーズ、「ダイ・ハード」) クリス・パイン (「スタートレック」シリーズ) ビル・プルマン (「インデペンデンス・デイ」「あなたが寝てる間に…」)
 

アラン・リックマンはハリーポッターシリーズの重要人物「スネイプ先生」役で有名ですね!

物語のあらすじ

1976年、パリでワイン評論家として活動していたイギリス人、スティーヴン・スパリュアは、自分のワインショップの経営がうまくいかずに悩んでいました。そんな中カリフォルニアで良質なワインがつくられていると聞き、カリフォリニアとフランスのワインを飲み比べるイベントを企画します。ちょうどアメリカが独立200周年記念というタイミングで、店の宣伝と話題作りになるだろうと踏んだのです。

しかし当時アメリカのワインはヨーロッパでほとんど流通していなかったため、スパリュアは自ら現地へ視察に訪れます。訪れた先はカリフォルニア州、ナパ・バレー。そこでワイナリー「シャトー モンテレーナ」の人々と出会います。

モンテレーナは元弁護士のジム・バレットが脱サラして始めたワイナリーで、彼は理想のシャルドネをつくることに苦戦している最中でした。

大学を休学してワイナリーを手伝うはずの彼の息子・ボーは、ヒッピー文化に染まり遊びまわるドラ息子。ワイナリーが破産寸前に陥ったことで奮起しますが、思うようにはいきません。

一方スパリュアは、初めて味わったカリフォルニアワインの素晴らしさにすっかり感銘を受けていました。モンテレーナにも、飲み比べのイベントに出品して欲しいと申し出ますが、フランスワイン界に対し懐疑的なジムは突っぱねてしまいます。

ボーはこのイベントで高評価を得られれば、ワイナリーの窮地を救うことができると考え、強硬手段に出ることに…

「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」を見た感想

ナパのぶどう畑

カリフォルニアのぶどう畑

この映画の見どころは3つあると思います。

まず一つ目は、カリフォルニアの広大なぶどう畑の映像。

オープニングでは空撮により、美しい風景を堪能できます。眩しい太陽と、車が通れば激しく砂埃が舞うような渇いた大地。こういう場所でぶどうが育つんだなぁという臨場感に包まれます。

二つ目は、息子のボーを取り巻く人間関係です。

シャトー モンテレーナのオーナーであるジムとの親子関係の確執や、従業員のグスタボとの友情、ワイナリー実習生として登場するサムとの恋愛事情など、ボーにフォーカスを当てることによって青春映画の要素が強く出ています。

特にグスタボは時代を反映する役割も担っています。彼は父親が農業労働者としてアメリカにやってきたメキシコ移民ですが、まだ白人至上主義という差別が横行する中で、ワインづくりという仕事にプライドを持って生きています。ワインに対する熱い想いを語る彼はとてもかっこよく見えて、胸を熱くさせられました。そんな彼に影響を受け、遊び歩いていたボーも次第に変わっていきます。

三つ目は、ワイン評論家のイギリス人・スパリュア

実在する人物ですが、おそらくかなり脚色されていて、コミカルなシーンがたくさんあります。とにかくキャラが濃く、印象に残ります。

パリでワインショップを営み、ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」の設立者でありながら、現地のワイン界でははみ出し者のような扱いを受けていたり、アメリカに単身で乗り込んだものの、いきなり車のタイヤがパンクしてしまったり。

 

序盤はツイてなさそうな人だな〜という印象でした(笑)

初めて見た某ファーストフード店のフライドチキンを恐る恐るかじるシーンや、ワイナリーで出されたワカモレ(アボカドのディップ)を見て「これは食べ物なのか?」と警戒するも一口食べて「意外といけるな」というような笑みを浮かべるシーンは、とてもチャーミング。

スパリュアは気難しいワインオタクではありますが、フランスやヨーロッパのワインだけに固執せず、ちゃんとおいしいものは受け入れようという、当時にしては柔軟な心を持っている人物なんです。

いかにも高慢な英国人なのに、ちょっとズレているせいで可愛く見える、そんな魅力的なキャラクターを名優アラン・リックマンが巧みに演じています。

もちろんこの映画の軸は実際にあった出来事である「パリ・テイスティング事件(パリスの裁判)」ですが、そこに至るまでのドラマがメインに描かれています。なので、ワインの知識が全くなくても楽しむことができると思います。

 

遊び人だった息子が、仲間と共にワイナリーの危機を救うシーンが爽快でした!

実際にあった「パリ・テイスティング事件」とは

「パリ・テイスティング」は、1976年、アメリカ独立200周年を祝うイベントとして、実際にフランスで行われたワイン品評会です。

フランスの名のあるシャトーのワインと、主催者のスティーヴン・スパリュアが厳選したカリフォルニアのワインを、ブラインドテイスティングで順位を付けて評価するというイベントでした。

審査員は全員フランス人で、ワイン業界では権威ある人物ばかり。報道関係者も複数招待しましたが全く相手にされず、唯一現場を目撃した記者はもともとスパリュアと繋がりのあった米国TIME誌のパリ駐屯記者、ジョージ・テイバーだけ。

当時はフランスワインこそが至高であり、カリフォルニアワインは当然格下だというのが常識だったため、事前の注目度はさほど高くなかったようです。

しかし結果は、赤・白ともにカリフォルニアワインが1位を獲るという、それまでのワインの歴史をくつがえすものに。

 

歴史をくつがえすって…そんなに凄い出来事だったんですね。

 

審査員たちも、まさか自分たちがカリフォルニアワインに高得点をつけたとは信じられないというような、まさに青天の霹靂だったと思います。

記者のジョージがTIME誌に寄稿したこの事件の記録は、小さな記事ではありましたが、その衝撃的な内容はじわじわと世界中に広がっていきました。記事のタイトルが「パリスの審判」とされていたことから、この事件もそう呼ばれることがあります。

それ以降カリフォルニアワインは爆発的な人気を獲得し、これをきっかけに現在ニューワールドと呼ばれる国々がワイン生産地として注目されるようになりました。

主催者のスパリュアも一躍有名人となり、彼が創立したワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」は世界中に広がり、現在もワイン業界の発展に貢献しています。

 

日本にも彼が作ったスタイルを受け継いだ、同名のワインスクールがあります。

カリフォルニアワインについて

「パリ・テイスティング事件」を境に世界中から注目を集めるようになったカリフォルニアワインですが、中でもシャトー モンテレーナのあるナパ・バレーは名産地として知られています。 ナパは、サンフランシスコのベイエリア北部に位置する地域です。

この地域では、ロバート モンダヴィをはじめとする大規模なワイナリーから、小規模なブティックワイナリーまで、数多くのワイナリーが存在しています。

 

ロバート・モンダヴィって?

 

カリフォルニアワインの父」と呼ばれている人物ですね。日本でも多く流通している大規模ワイナリーの設立者です。

ナパ・バレーのワインは、豊富な日照量と昼夜の寒暖差を受けてよく熟したぶどうが育つため、濃厚で力強い味わいのものが多く生産されています。

赤はカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなど。白はシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどが多く栽培され、他にも様々な品種が植えられています。

映画に登場したシャトー モンテレーナは現存するワイナリーで、今は息子のボー・バレット氏が経営責任者となり活躍中。明るい人柄で、日本でもセミナーなどを積極的に行われてきました。

モンテレーナはもちろん、ナパ・バレーは今後も素晴らしいワインを世界中に送り出してくれることでしょう。

 

映画に出てきたシャルドネを飲んでみたいと思って検索したんですけど…かなり予算オーバーでした…(汗)

 

確かに高い! でも、特別な日に開けたいスペシャルなワインとして、名前を覚えておいてもよいと思いますよ。

まとめ

「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」は、ワイン業界で起きた実際の出来事をモチーフにした物語ですが、ワインのことを知らない人でも楽しめるサクセスストーリーです。 この映画をきっかけに、カリフォルニアワインを飲んでみてはいかがでしょうか。

 

もちろん、飲みながら見るのもおすすめです!

映画「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」を配信している動画配信サービスを調べるには、こちらのサイトが便利です。

ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡 (Filmarks映画)

 

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この記事の筆者

ボクモワイン
ボクモワイン編集部
ボクモワインの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆&編集しています。

この記事の監修

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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