ワインの貴重な映像の宝庫!映画「ソム:イントゥー・ザ・ ボトル」徹底解説

この前観た「ソム」というソムリエのドキュメンタリー映画、勉強になりました!!ワインの世界の奥深さが少し分かった気がします。

▶映画「ソム(SOMM)」のレポートはこちらから

ワインを題材にしている映画の中でも、「ソム」のシリーズはストイックにワインに向き合う人たちを追いかけた本格的なドキュメンタリー映画です。ワインの世界をちょっと覗いてみたいという人、そして今ワインを勉強している人にはとても良い手引きになると思いますよ。

「ソム」(2012年)の続編である、「ソム:イントゥー・ザ・ボトル」(2015年)は、ワインに関わる多分野のエキスパートたちが、ワインを知る上で必要となる様々なテーマについて熱く語る映画です。この映画の大きな特徴は、なかなか見ることが出来ないワイナリー内部の映像や、ワインの歴史を知る上で貴重な資料が数多く映像に収められていること。また、自然の中に広がる綺麗に整備されたぶどう畑や、美しいぶどうの房など、豊かな自然を感じさせる映像もたっぷり含まれていますよ。

ソム:イントゥーザボトル
引用元:amazon

この映画の進行役は、前作の「ソム」に登場したマスター・ソムリエ(MS)たち。

その他にも、ワインメーカー(生産者)、ぶどうの科学者、マスター・オブ・ワイン、ワインディレクター(ワインの製造の仕組みを管理する人)など、世界で活躍するワインのプロたちが数多く出演しています。その中には有名ワイナリーである「ロマネ・コンティ」「ルイナール」「ロバート・モンダヴィ」の家族や関係者たちも。

こういったワイン界のキーパーソンが、それぞれの立場で、自分たちの信念や現在ワイン業界で起こっていることを語り、ワインの世界の楽しさや奥深さを紹介しています。

映画の内容はやや専門的です。しかし初心者の方でも、畑やワイナリーなどの美しい映像がリズミカルに切り替わっていく作品全体を通して、長い歴史のあるワイン文化特有の空気感を感じることができる作品だと思います。

映画の詳細


※こちらのプロモーション動画に字幕はついていませんが、本編(日本版)では日本語字幕が付いています。

映画ジャンル ドキュメンタリー
テーマ ワイン
製作年/国 2015年/アメリカ
時間 90分
監督 ジェイソン・ワイズ
キャスト ブライアン・マクリンティック
イアン・コーブル
シルヴィア・アルターレ
公式情報 ▶ SOMM Documentary Film

この映画は、三部作になっています。マスターソムリエの受験に密着した「ソム」が2012年にリリースされ、そのヒットを受けてこの第二弾「ソム:イントゥー・ザ・ボトル」(2015)が、その後、第三弾「SOMM3」(2018)が制作されました。

 

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「ソム」、「ソム:イントゥー・ザ・ボトル」の2作品は、Amazonプライムで視聴できます。

映画「ソム:イントゥー・ザ・ボトル」の概要

この映画は、端的にいえば「ワインとは何か?」を、ソムリエが90分かけて解説するドキュメンタリー映画です。

まず最初に“What is sommelier?”(ソムリエって、どんな存在?)という投げかけから映画はスタートします。

その問いに、実際にソムリエとして働く人たちはこう答えます。

「レストランでのポジションの1つ」

「ワインの責任者」

「コルクを抜いて、人々を幸せにする仕事」

「教育者であり、鑑定人であり、給仕をする人」

「ワインを語るストーリーテラー」

ソムリエの仕事をどう捉えるか。それは、人によって様々ですが、ここに出てくるすべてのソムリエが、自分の信念を持って仕事に取り組んでいることを垣間見ることが出来ます。

さて、この映画では、下記の「10のテーマ」にそって話が進みます。各テーマごとにワインのプロたちが自分の見解を述べていき、それとともに、そのテーマに即した貴重な取材映像が挟み込まれるという構成になっています。

  1. THE WINEMAKER (ワインメーカー)
  2. THE VINTAGE(ヴィンテージ)
  3. THE HISTORY(歴史)
  4. THE WARS (闘い)
  5. THE NEW WORLD (新世界)
  6. THE COST(原価)
  7. THE BARRELS(樽)
  8. THE PONT SCORES(ポイントスコア)
  9. THE SOMMELIER(ソムリエ)
  10. THE MEMORY (記憶)

タイトルだけ見ていると、なんだかワイン学校の授業みたいですよね…(笑)

確かにそうですね(笑)1時間半かけて、ワインスクールの体験入学をしてみるつもりで、観てみると良いかもしれません。

ただ、この映画の日本語字幕版を鑑賞する際に、少しだけ注意しておきたいポイントがあります。とても素晴らしい内容の映画ですが、ちょっと字幕が見づらいと感じるかもしれません。この映画は全体的にタイトな編集で小気味よくカットが変わります。しかし情報量が多いために、字幕を読んでいる最中にその字幕が消えてしまうことがよくあるんです。また、ぱっと見て理解しづらい表現もよく出てきます。なので、最初から字幕を全部を追おうとせずに、取りこぼしてもOKくらいの感じで観るとちょうどいいかもしれません

各パートの解説

ここからは、各パートごとの解説や見所の紹介です。

少し「ネタバレ」にもなるかもしれませんが、専門的な映画なので、観る前に理解を深めるための予習として読んで頂けたら思います。

絶対にネタバレは嫌だ!という人は、ここから先は映画を見た後で、ちょっと復習したいな〜となったら戻ってきて下さい(笑)

1. THE WINEMAKER (ワインメーカー)

ワインに関する10の話は、その生産者であるワインメーカー」の話からはじまります。

まず最初に、進行役のマスター・ソムリエは「ワインをつくる仕事は、誤解を招きやすい」と語ります。それは、なぜか。ワインがつくられる産地は非常に美しく神秘的で、その仕事にも幻想を抱かれがちであると指摘します。しかし実際は、ワインづくりはとても地道で、過酷な仕事。

ワインメーカーたちは人生の多くの時間を、ぶどうやその畑の管理、ワインの醸造、出来上がったワインの保管などに費やさねばなりません。しかし、いくら人間側が努力したとしても、必ず良い結果が出るという保証はないのです。

本作では、その自然がもたらす災いの例として、アメリカで起こった悲惨な出来事を紹介しています。

2014年8月24日にマグニチュード6.0の地震が、カリフォルニアを直撃。有名なワイン産地である「ナパバレー」の多くのワイナリーも甚大な被害を受けました。本作に登場する、スティーブ・マサイアソンのワイナリーもそのうちの1つ。取材は地震の2日後に行われました。倉庫内のいたるところで、ワインが入った樽が散らばっている状態が映し出されています。

 

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2013年はぶどうにとって大変気候に恵まれた年でした。出来上がったワインは凝縮感があり、熟成後はとても素晴らしい出来になると予測されました。しかし、地震によって熟成中だった一部のワインが失われてしまったのです。

しかし、スティーブは、この出来事をただ悲観的には捉えるのではなく、「この年のワインは“地震のヴィンテージとして後世に残るんだ」と力強く語ります。

自然の出来事とは言え、せっかく上手くできたワインがめちゃくちゃになってしまったら悲しいですよね…。それでも諦めず、ワインをつくり続ける姿は本当にすごい。

そうですね、ワインには生産者たちの思いや努力がつまっています。自然を相手にする仕事は大変ですが、だからこそ、良いワインが出来た時の感動が大きいいんだと思います。

2. THE VINTAGE(ヴィンテージ)

「ヴィンテージ」とは、「ぶどうの収穫年」のこと。転用され「古くて価値がある」という意味でもよく使われますが、本来ワイン用語では「そのワインがどの年に採れたぶどうを使っているか」を示す言葉です。

同じワイナリーで同じぶどう品種で作ったワインでも、ヴィンテージによってその出来は異なります。

それを左右する一番大きな要素は、「天候」です。特に天候に恵まれた「グレート・ヴィンテージ」と呼ばれる年のぶどうは、非常に複雑で凝縮した味わいになります。そして、そんなグレート・ヴィンテージに仕込まれた一部の高級ワインは、とても長い時間をかけて、瓶の中でゆっくりと熟成していきます。ワイナリーで働く人々は、そういった偉大なワインを貯蔵庫に寝かせ、適切に熟成できる環境を整えるのです。

この映画ではその例として、フランス・シャンパーニュのメゾン「ルイナール」を紹介しています。ルイナールは、シャンパーニュで1729年から続く老舗中の老舗のワイナリー。

 

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ワイナリーの地下貯蔵室では、長期熟成するためのワインが保存されています。ルイナールの他にも、いくつかの歴史あるワイナリーの地下貯蔵室の映像が映し出されますが、そこで貯蔵されたワインボトルには「カビ」が生えているものが多くあります。なんとワインメーカーたちは、「そのカビの世話をしている」と話すのです。

カビだらけのワインボトルを見て驚きました!正直、なんだか不衛生なのかなと思ってしまいました。

そうですよね。初めて見たら、少しびっくりしますよね(笑)

ワインが熟成するために適切な温度や湿度って、カビが生えやすい環境なんです。でも実は、カビが生えていることは最適な状態で保存されている証。ただもちろん、ボトルの中のワインがカビで汚染されているというわけではありませんよ(笑)

ワインメーカーにとって、カビはとても大切なパートナー。彼らがペットのようにカビを可愛がっている様子は、とても印象的です。

3. THE HISTORY(歴史)

続いては「ヒストリー」のパートです。

ここでは、ドイツに現存する世界最古のワイナリーに残されている、ワインに関する古書の紹介からはじまります。その古書とは、1世紀頃に書かれたワインの醸造に関する文書、1400年代に使われていた仕入れ帳など。山のように存在する歴史的な記録文書から、いかにワインが歴史とともにある飲み物であるかが伝わってきます。

ある文献によると、ローマ帝国の時代、シーザーは兵の健康管理の目的で、1日1〜1.5リットルのワインを飲むよう命じていたそうです。また、戦いの前には、その2倍の量を飲ませていたとのこと。これが世界最初のドーピングかもしれないと解説されています。

そんなにワインをガブガブ飲んでいたんですね!戦いの前に飲んだら、逆に酔っ払って動けなくなってしまいそうですが(笑)

日本人の感覚からするとそうですよね(笑)でも、ヨーロッパではアルコールに強い体質の人が多いので、飲み水代わりにワインはちょうど良かったんですね。そもそもヨーロッパでは清潔な水を確保することが難しい地域が多く、そういったところでは水分補給の目的で飲まれていました。

また、ワインは宗教とも結びつきの強い飲み物。なかでも、ワイン文化の基礎を固めた「修道士」の存在が大きかったと言われています。彼らは1日のほとんどの時間をぶどう畑で過ごし、そしてそのワインづくりに関する出来事の詳細を記録していました。

その他にも、有名なワインに関する物語として「エルミタージュ」が紹介されます。エルミタージュは、北部ローヌの丘陵地に広がる、紀元前400年から続く歴史ある産地。物語上では十字軍の英雄「ハーミット」が丘の上で傷を癒やしたと伝えられています。

 

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エルミタージュは、黒ぶどうの「シラー」が大変有名な産地でもあります。中でも「ジャン・ルイ・シャーヴ」というワイナリーは、1481年創業以来、6世紀に亘りワインをつくり続けてきました。本作には、マスターソムリエたちが現代の”ハーミット”だと呼ぶ、16代目当主が登場しています。

4. THE WARS (闘い)

このパートでは、一人のワインメーカ−が「GREAT WINE(偉大なワイン)」の定義を語るところからはじまります。

彼の考える「偉大なワイン」とは、

  • バランス感覚
  • 複雑さ
  • 繊細さ
  • テロワール(ワインが生まれる環境)
  • 熟成
  • 美味しさ

の6つを満たすもの。そして、その全ての項目を満たすものとして、白ワイン用ぶどうのリースリングを挙げています。

リースリング

白ワイン用ぶどう品種「リースリング」

本作に登場するマスター・ソムリエたちは、ソムリエはみんな「リースリング」に夢中であると語り、一般の消費者の間で広がってきた「リースリング=甘い」という認識は誤解であると指摘します。

リースリングは甘口というイメージが強いかもしれませんが、実は辛口のリースリングこそ、美味しいものが多いんですよ。

なぜ、リースリングが戦争を伝えるパートで紹介されているんでしょうか。それは、フランスとドイツの間で繰り返された争いの歴史を物語るワインでもあるからです。かつて、フランスはドイツに占領されていました。そして、リースリングのワインは、原産国であるドイツからフランスに渡ったのです。

しかし、長く続く両国間の争いの中で、フランス側のワイン文化は壊滅寸前の危機に追い込まれます。多くのワインメーカーが犠牲となり、ぶどう畑は破壊され、貴重なワインも発見され次第、兵によって飲まれてしまいました。その当時、ワイナリーの人々が命がけで守ったワインのみが、現在も残る貴重なワインであるのです。

その悲惨な歴史が一番濃く残るのが、ドイツと国境を接するフランスのアルザス地方。この地方のあるワインメーカーが語るところ、祖父はドイツ語を話し、父はアルザス語を話し、現在の世代である本人はフランス語を話すといいます。歴史に翻弄された、この地方の過去が今も垣間見えるエピソードです。

このパートの最後には、世界中の人々に崇拝されるリースリングとして、「トリンバック」というアルザスの伝統的なワイナリーの単一畑「クロ・サンテューヌ」のワインが紹介されます。

トリンバックは1626年に創業し、4世紀13代に亘って歴史と伝統を育んできたアルザスきっての名門。クロ・サンテューヌの辛口のリースリングは“アルザスのロマネ・コンティ”と称されています。

 

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5. THE NEW WORLD (新世界)

こちらのパートでは、ニューワールドの紹介として、アメリカの最大のワイン産地「カリフォルニア」のワインを例に紹介しています。

「ニューワールド」って、どんな国なんですか?

ニューワールドとは、ワインの伝統国であるヨーロッパと比べると歴史が浅く、後から加わった国のことをいいます。NZも、ニューワールドの国の1つですね。

フランスのような古い歴史のある国は、先祖代々受け継がれてきた畑やその伝統を重んじます。一方ニューワールドでは、決まりに縛られない、チャレンジ精神が旺盛な生産者が多いですね。

アメリカでは、ゴールドラッシュ後に、ワインは産業として確立しつつありました。しかし、1920年〜1933年まで続いた「禁酒法」(酒類の製造や販売を禁止する法律)によって、その産業が一時、強制的に中断されたのです。

禁酒法が解かれた後も、停滞気味であったアメリカのワイン産業を変えたのがカリフォルニアワインの父と呼ばれる「ロバート・モンダヴィ」でした。彼はとても野心的で、フランスやその他の国に負けないワインをカリフォルニアでつくることを目標にし、次々に巨大な投資を行っていきました。

こうした彼の取り組みがカリフォルニアの高級ワイン産地「ナパバレー」を一躍有名にし、フランスこそがワインの本場であるというそれまでの概念をくつがえすことになります。本作では、そんな偉大な先駆者ロバート・モンダヴィに1995年に行ったインタビューの映像も収められています。

ちなみに、カリフォルニアワインが今日のような躍進を遂げるきっかけのひとつに「パリスの審判」という有名なテイスティングイベントがあります。カリフォルニアがフランスワインに勝利するという、歴史的なイベントです。

そのパリスの審判が行われた史実をもとにした映画「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」は、アメリカのワインが好きな方にはぜひお薦めしたい映画です。当サイトでは、その映画の紹介もしています。是非ご覧ください!

▶ワインの歴史を変えた事件「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」の感想とあらすじ

6. THE COST(原価)

こちらのパートでは、ワインを製品にするまでの「費用」や、ワインにつけられる「価格」について語られます。

安いものから高いものまで、価格に大きな幅があるワイン。その価格はどのように決まるものなのでしょうか?それにはまず、「原価」の成り立ちを考えなくてはいけません。

ワインをつくるためには、その土地の選定からはじまり、ぶどうの苗木の管理、収穫、醸造、ボトリングなど、多くの工程があります。それに対する人の関わりが、価格に反映されるのです。

また、マスター・ソムリエのひとりは、「ワインは人の魂が込められたアートであるという認識こそ、ワインの価格を決める際に重要とされるべきである」と語り、「そのアートに対する価値が価格に反映されるべきだ」と主張します。

そういった芸術作品のようなワインの代表格として、ブルゴーニュ「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)」が紹介されています。ロマネ・コンティのワインは、世界でいちばん高値がつくワインとしても知られていますよね。

このパートの最後では、DRCの17代目当主であるオーべル・ド・ヴィレーヌが、自らワイナリーを案内し、そのワインの価値を語ってくれます。普段は見学は受け付けておらず、ワインの世界のプロたちでさえも見たことがある人は多くありません。それだけにこの映像はたいへん貴重です。

文化的価値の頂点とも言えるそのワインを、当主はこともなげに「ワインは飲むためにある。喉を潤すためのものだ」と言い切るシーンはとても印象的です。

 

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7. THE BARRELS(樽)

このパートでは「樽」について語られます。その議論の中心は「オーク」を使用した樽について。

樽は「ワインのアルコール発酵」にも、「発酵が終わったあとの熟成」にも使用でき、ワインづくりになくてはならないものです。もともとはワインを運ぶ目的で使用しはじめたとされ、何千年もの歴史があると考えられています。

 

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ただ、「新しいオーク樽」を使用するかしないかは非常に議論の分かれるところ。ワインに風味を付け加えるオーク樽ですが、中にはぶどうの不出来をごまかすためだけにオーク樽を使用するワイナリーもあると、ひとりのマスター・ソムリエは語ります。

そして、本作でフォーカスされるのは、オーク樽がワインに与える影響の「強弱」について。樽の香りが強すぎるワインは、よくないと考える人もいるのです。ぶどう本来の香りや味わいのみを優先したいという考えのワイナリーは、「ニュートラル・オーク」という香りが少ない樽を使用しています。

映画の中では、オークを「塩加減と同じ」と話していて、分かりやすかったですね。何事も、行き過ぎはよくないということですね。

そうですね、樽の香りを、出来上がったワインにあとから乗せる調味料と捉えると分かりやすいですね。「果実や植物の香り」と「樽の香り」が調和したワインは、素晴らしく複雑な旨みを持つワインになります。

「オーク派」、「非オーク派」をめぐる論争は今に起こったことではなく、1970年代にはもっと激しい議論があちこちで交わされていたといいます。

その例として紹介されるのが、イタリアの名産地「バローロ」で起こった革命です。1970年代のイタリアでは、ビジネスとして成り立つワインが少ない時代でした。

しかし、「エリオ・アルターレ」という一人の人物が、イタリアワインのモダン化を計りました。当時の様子を、娘シルヴィアが語ります。

エリオは1976年にブルゴーニュのワイナリーを巡り、現地の確立されたワイン事業を目の当たりにし、大いに感化されます。そして、バローロのワインのモダン化を計るのです。その1つに、樽の刷新があります。彼のワイナリーで代々受け継がれてきた「大樽」を破棄し、「フレンチ・オーク」を取り入れたのです。

エリオの父は伝統を壊すようなこのやり方に激しく反対し、親子の仲には大きな溝ができてしまいました。しかし、これらのエリオが起こしたワインの革命はバローロのワインの地位を飛躍的に高める結果となったのです。

8. THE PONT SCORES(ポイントスコア)

「ポイントスコア」もまた、ワインの世界で二極化する議論の1つです。ポイントスコアとは、有名なワインの愛好家や評論家が、100点満点でワインを採点する方法のこと。

そのポイント制度で、世界で一番影響力のある人物はアメリカの「ロバート・M・パーカー・Jr.」でしょう。彼が創刊した「ワイン・アドヴォケイト誌」で高得点をつけられたワインは、人気が急上昇する傾向にあります。つまり「売れるワインになる」わけです。ということで、当然、パーカーに高得点をつけられることを目標にするワイナリーも出てきます。

マスター・ソムリエの中では、この制度に関しては非常に意見が分かれるようでした。本作のメインの進行役であるブライアン・マクリンティックは、彼に影響を受け、ワインの道を進むようになったと話します。ブライアンは、ポイント制度がワインを分かりやすくし、新規の消費者を取り込んでいると主張します。

一方で、それぞれの生産者たちが一生懸命つくったワインを、数字のみで評価する制度を快く思わないと話す人もいました。

オーストラリアの「ペンフォールズ」は、ロバート・パーカーの点数によってその運命が変わったワイナリーです。なかなか満点をつけるワインが現れない状況の中で、100点を獲得したワイナリーとして一躍世界で注目されるようになりました。

 

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9. THE SOMMELIER(ソムリエ)

「ソムリエ」のパートでは、主に食べ物とワインの組み合わせである「ペアリング」を語ります。

食事とワインの提案をすることは「ソムリエ」の大事な仕事の1つ。しかし本作に登場するソムリエの一人は、“そんなに深く考えずシンプルに捉えたらいい”と語ります。

 

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ワインの一般論として、そのワインが作られた地域に根付いた食べ物との相性が良いとされています。また、合わせるものに困った時は「シャンパーニュ」のワインであれば、どんな食事にも合うという意見も出ていました。

ただ、そのような定番のペアリングではなく、プロ中のプロであるマスター・ソムリエたちがおすすめする「意外性のあるペアリング」は次のように紹介されていました。

などなど。

そして最後にマスター・ソムリエたちは、世界で一番過小評価されている地域として、フランスの「ボージョレ」の魅力を伝えます。ボージョレのワインには2種類あり「知的なワイン」と「(シンプルに)美味しいワイン」があるという言います。ホットドッグなどシンプルでカジュアルな食事にも、よく合うと紹介しています。

岩須さんが、いつも提案してくれるワインと食事の組み合わせも、とても美味しいです。やっぱり、ワインにどんな食事が合うかなぁって考えるのは楽しいですよね!

そうですね。僕も、ワインを飲むときにはいつもペアリングを意識しています。うまくいった時は、味わいの相乗効果が生まれて、とても幸せな気分になりますよね。うまくいかなかったときも、話のネタにはなるから、一石二鳥です(笑)

当サイトで行っているNZワインのレビューには、必ずペアリングの提案を掲載しています。ペアリングが気になった方は、是非こちらのレビューを参考にしてみてくださいね。

▶岩須のニュージーランドワインレビュー

10. THE MEMORY (記憶)

最後のパートは、この映画シリーズにとっても重要人物である「フレッド・ドーム」について中心に語られています。

フレッドは、アメリカで最も影響力のあるマスター・ソムリエ(MS)。40年以上ワイン業界で働き豊富な知識とその実力でソムリエ業界を牽引してきた人物です。特に後進の指導に力を入れ、何百人ものソムリエを育てあげてきました。

 

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マスター・ソムリエたちは口々に「フレッドなしにアメリカのサービスは語ることができない」と語ります。

そんなフレッドの大事な記憶として語られたのは、当時CIAの長官であったレオン・パネッタのこと。彼はウサマ・ビンラディンを追っていました。その当時、レオンが通うレストランでソムリエをしていたフレッドは1870年の「シャトー・ラフィット・ロートシルト」というボルドーの超高級ワイン(メドック格付け1級)を地下貯蔵庫で保存していました。

そして、ウサマ・ビンラディンが捕まったお祝いとして、レオンの友人がその”ラフィット”を購入したのです。しかし、パーティーのゲストは50人。悩んだフレッドは、「CIAのロゴ入りのショットグラス」にほんの少しずつだけ注ぐ形でサーブしたのでした。さすがの機転!

ソムリエというものは、ただの瓶に入った飲み物を注ぐのが仕事ではない。いつ、誰と、どのように飲むのか、その場のシチュエーションに応じた空間自体を演出する、それこそがソムリエの腕の見せ所ということなんでしょうね。

映画の感想

正直、この映画は私にはすごく難しかったです!(笑)

でも、ワインづくりの裏側やその歴史を知ることで、ワインをもっと楽しめる気がします。

そうですね。ワインの面白さって、長い歴史の中で育まれたその背景が、知的好奇心をガッツリと刺激してくれるところだと思うんです。

まあ、それほど難しく考えなくても、このワインと、前に飲んだワインは何が違うんだろう?どこでつくられたんだろう?とか、自分の興味があるところから掘り下げていくといいと思いますね。この映画には、貴重な映像がぎゅっとつまっているので、この映画に出てくるようなワインに出会ったら、また改めてそのパートを見返すのもおすすめです。

まとめ

ワインの貴重な映像が盛りだくさんの「ソム:イントゥー・ザ・ボトル」は、少し難しい内容が含まれた映画ですが、ワインに興味がある方なら見て損はないと思います。きっと「ワインは文化である」ということがよく分かると思います。

ワインに情熱を注ぐ多方面の専門家によるディベートや、伝説的なワイナリーの様子が見られるので、ワインを勉強中の方にとっては、この映画は絶好の教材となることでしょう。

また、この10のテーマがそれぞれ独立したパートになっているため、ワインの資料集として使えるのも特徴です。もし気になるテーマがあれば、そこを繰り返して観てみると、専門家たちの言葉がより分かるようになると思います。

もし、この映画に出てくるワインを飲む機会があれば、該当部分を見直してみてください。きっとそのワインに対する理解がとても深まると思いますよ。

この記事の筆者

NZワインラバーズ編集部

NZワインラバーズ編集部
NZワインラバーズの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆しています。

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