NZのワイン用ぶどう2023年「年間収穫量データ」発表!収穫量はやや減少

「ニュージーランド・ワイングロワーズ」(New Zealand Winegrowers)より、2023年版の「ヴィンテージ・インジケーター」(ヴィンテージ指標)が発表されました。

New Zealand Winegrowers公式サイト

今回はそのデータに基づき、NZワインのヴィンテージ情報をお届けまします。

 

「ヴィンテージ・インジケーター」って、どういうものなんですか?

 

その年のワイン用ぶどうの収穫量などを、まとめた指標のことです。 NZは南半球なので2〜4月にはぶどうの収穫が終わり、6〜7月頃になると「ぶどうの年間収穫量ランキング」が発表されるんですよ。

昨年の記事はこちらです。

NZのワイン用ぶどう2022年「年間収穫量ランキング」発表!今年は収穫量大幅アップ」 

それでは、2023年のNZのワイン用ぶどうの収穫量や、それに関する動向を簡単にお伝えします。

2023年ぶどうの収穫量や、近年の生産に関する動向

収穫年 全体の収穫量
2022年 532,000t
2023年 501,000t(-6%)
※収穫量の表示単位 t=トン

参照データ:NZ Wine Vintage Indicators

 

昨年よりも収穫量は少し減ったんですね。なにか原因はあるのでしょうか?

 

実は2023年、ぶどうの収穫期の直前である1〜2月、ニュージーランドは甚大な自然災害に見舞われたのです。

1月の大洪水、2月のサイクロン襲来によって、一部地域では大幅に収穫量が少なくなりました。その影響がNZ全体にも及んでいると思われます。

地域別の収穫量ランキング

地域別の収穫量は、下記のようになっています。

地域 収穫量(割合) 前年比
マールボロ 393,865t (81.3%) -5%
ホークス・ベイ 38,409t (7.9%) -4%
セントラル・オタゴ 11,955t(2.5%) -5%
ネルソン 11,472t (2.4%) +6%
ギズボーン 10,967t (2.3%) -43%
ノース・カンタベリー 11,090t (2.3%) +13%
ワイララパ 5,528t (1.0%) +3%
オークランド 709t (0.1%) -47%

参照データ:NZ Wine Vintage Indicators

ニュージーランドのワイン産地

 

オークランド、ギズボーンは収穫量が大幅に減少

今年の1月末にオークランドを中心に行った大洪水、2月の上旬に北島を襲った大型サイクロン「ガブリエル」による影響で、オークランドとギズボーンのぶどうの収穫量は大幅に減少しました。

また、数字上は4%減にとどまっているホークス・ベイでも、ガブリエルによって壊滅的な被害を受けたワイナリーもありました。

ぶどう品種別の収穫量ランキング

続いて、ぶどう品種別の収穫量をみていきましょう。

品種 収穫量(割合) 前年比
ソーヴィニヨン・ブラン 378,330t (78.1%) -4%
ピノ・ノワール 30,532t (6.3%) -12%
ピノ・グリ 26,097 (5.4%) -14%
シャルドネ 22,528t (4.6%) -24%
メルロー 9,092t (1.9%) +21%
リースリング 6.001t (1.2%) +19%

参照データ:NZ Wine Vintage Indicators

メルロー、リースリングは収穫量増。その他の品種は減少

品種のランキングは、昨年と比べて変動はありません。ソーヴィニヨン・ブランはわずかに収穫量が減少し、ピノ・ノワールやピノ・グリ、シャルドネも減少しています。これらの減少には、おそらく、北島の洪水やサイクロンが関わっているものと思われます。

その一方で、メルローやリースリングはもともとの収穫量こそ多くないものの、2023年は豊作となり昨年よりも約20%収穫量が増えています。

NZワインの明るいニュース

自然災害により、大きな被害を被ったワイナリーも多く2023年ヴィンテージは苦難の年でもありました。しかし、NZワインは世界でも益々その存在感を大きくしています。そこで、最近のNZワインに関する明るいニュースを2つお届けします。

輸出額が昨年の25%増。NZが世界第6位のワイン輸出国に

2023年5月までの1年間のNZワイン輸出総額は、24億ドルでした。昨年比で25%も増えたということになります。

NZは世界のワイン生産量ではわずか1%ですが、「輸出額ベース」では世界第6位になりました。特にアメリカではNZワイン、特にソーヴィニヨン・ブランの需要がかなり高まっています。

NZワイン生産者協会の最高経営責任者(CEO)であるフィリップ・グレーガン氏は、

世界最大かつ最も競争の激しい市場へのワイン輸出額が過去最高を更新したことは、ニュージーランドワインの輸出業者にとって素晴らしい成果であり、ニュージーランドワインに対する世界的な需要がますます高まっていることを証明するものです。

とコメントしています。

 

ニュージーランドは、生産するワインの大部分を輸出している国。

多くのワイナリーは、海外のお客さんが美味しいと思ってくれる味を追求しています。その努力の結果、こうして世界有数のワイン輸出国になったのだと思います。

ホークス・ベイが「グレート ワイン キャピタル」に選出される

また、今年の5月には北島のホークス・ベイが世界で12番目の「グレート ワイン キャピタル オブ ザ ワールド(Great Wine Capital of the World)」に選ばれました。

「グレート ワイン キャピタルズ」は、1999年にボルドーで設立された、ワイン産業と観光の振興を目的に繋がる都市間のネットワークです。

グレート ワイン キャピタル オブ ザ ワールドの評価対象は、都市や地域そのものだけでなく、その地域のワイン生産産業、歴史やワインツーリズム、教育機会、ビジネスなど多岐にわたります。

「グレート ワイン キャピタル オブ ザ ワールド」の他の11都市は以下の通りです

  • アデレード(南オーストラリア)
  • ビルバオ(スペイン)
  • ボルドー(フランス)
  • ケープタウン(南アフリカ)
  • ローザンヌ(スイス)
  • マインツ(ドイツ)
  • メンドーサ(アルゼンチン)
  • ポルト(ポルトガル)
  • サンフランシスコ(アメリカ)
  • バルパライソ(チリ)
  • ヴェローナ(イタリア)
 

現在、どのワイン産地でも、ワインと観光を結びつけるワインツーリズムの重要性が叫ばれています。

まだワイン業界の中でこのグレートワインキャピタルはそれほど知られていませんが、異なる都市同士でワインの魅力を発信する方法を共有するこの取り組みは、今後大きな実を結ぶのではないかと期待しています。

そして今回その輪に、ホークス・ベイが加わったことはNZワインファンにとっては喜ばしいニュースです。おそらくホークス・ベイのワインツーリズムは、今後さらに洗練されていくことでしょう。

まとめ

ワインづくりは、その地域の天候や環境に大きく左右されるもの。今回、ニュージーランドの2023年のデータを見ても、やはり、それを再認識しました。

2023年は、人間ではどうしようもない洪水やサイクロンといった大きな自然現象によって、ぶどうの収穫量を大きく落とした北島の地方もありました。ぶどう畑が壊滅的な被害を受けたという報告も耳にします。なるべく早く立ち直り、また美味しいワインを世界中に届ける日が来ることを祈ります。

対する南島では、例年とほぼ変わらない、安定した収穫量が確保できた年になりました。2023年産の白ワインが日本に入ってくるのは2023年の夏以降。赤ワインは2024年からがほとんどです。

それらのワインを飲むとき、1本1本が「できて当たり前のワインではない」ということを少しでも思い出しながら楽しめたらと思います。

この記事の筆者

ボクモワイン
ボクモワイン編集部
ボクモワインの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆&編集しています。

この記事の監修

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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