ホークス・ベイ地方|ニュージーランド第2位の総栽培面積を誇る重要産地

大きな弓を描くホーク湾沿いに広がるホークス・ベイ地方(Hawke’s Bay)は、ニュージーランド北島の東側に位置します。

平原が広がる豊かな大地に、美しい湾岸の風景、さらに「ネーピア(Napier)「ヘイスティングス(Hastings)といった華やかな街のあふれる活気。バラエティー豊かな顔を持つ、とても魅力的な地方です。

また、ニュージーランド屈指のワイン生産地でもあります。その総栽培面積は、国内最大である産地マールボロ地方に次ぐ第2位。ワイナリーも数多くあり、国内では有力な産地です。

代表する主なぶどう品種は、

この赤ワイン用ぶどう3種においては、ニュージーランド国内では最大の栽培面積と生産量を誇り、その品質は国際的にも高く評価されています。

中でも、栽培面積がぐんと増えてきたのがシラー。国内の栽培面積の約70%を占めていて、近年大変注目を集めている品種です。

そしてここホークス・ベイ地方では、ぜひ知っておいて欲しい重要なサブリージョンがあります。

「ギムレット・グラヴェルズ」という地域です。

なんとここは、1931年に起きたニュージーランド史上最悪の自然災害と言われる「ホークス・ベイ地震」によって生まれたぶどう産地なのです。

地震とぶどう産地が、一体どのようにつながるのでしょうか。

これには奇跡的とも言える、とても興味深い事実があるんです…!後ほど詳しく説明しますね。

さらに注目すべき街「ネーピア」では、地震災害の復興後に素晴らしいアールデコ様式の建築物が数多く再建され、美しく生まれ変わりました。

ネーピア空港は、国内最大の都市オークランドから飛行機で約1時間。ホークス・ベイ地方の玄関口でもあり、ワイナリーの多くはこのネーピア空港から簡単にアクセスできるので、旅行者にとっては非常に行きやすい地域です。

日本ではまだ知名度の低い産地ですが、ワインの他にもみどころが多く、ぜひ知ってもらいたい生産地です。

ここでは、たくさんの魅力につつまれたホークス・ベイ地方について、詳しく紹介していきます。

ニュージーランド国内でも歴史あるワイン産地

ホークス・ベイ地方のぶどう栽培の歴史は1850年代にさかのぼり、カトリック教会のミサで使うためのワインがつくられていたことから始まります。ワイン新興国といわれるニュージーランドの中では、特に古い歴史があり、質の高いワインが受け継がれてきました。

キリスト教ではミサにワインは欠かせません。

そして最初に商業用ワインが作られたのは、1905年のこと。

「ヴァイダル エステート(Vidal Estate)」が設立されました。100年以上たった今も、ヴァイダル エステートはホークス・ベイ地方の主要ワイナリーです。

このように大きな商業的ワイナリーもありますが、小規模ワイナリーも数多くあり、それぞれがワインづくりに力と情熱を注いでいます。

▶ヴァイダル エステート

雨が少なく豊富な日照量

ホークス・ベイ地方は西側に連なる山々のおかげで、年間を通して比較的雨が少ない産地です。年間降水量は約800mm程。東京都の年間平均降水量が1,500mm程なので約半分ということになります。

また、日照時間は約2,200時間と国内の他地域と比べても長いのが大きな特徴です(NZ国内では年間約2,000時間が平均です)。日照量が多いことは、果実の栽培に理想的な環境です。

ぶどうの成長期である夏場(1月)の気温は

  • 最高気温は25℃
  • 最低気温は14℃

夏場の最低気温が14℃って、日本にいるわたしたちからするとかなり涼しく感じますね。

そして長い夏が終わると、乾燥した秋がやってきます。

またホークス・ベイ地方はとても広いエリアなので、サブリージョンの天候が多様性に富んでいるということも特徴のひとつです。天候の違いがあることで、収穫の時期が一ヶ月以上ずれることもあるのです。

このように、同じ地方でありながらもサブリージョンごとに変化が生まれ、それぞれのワインの複雑さや個性を楽しめるという面白さがあります。

栽培されている品種について

ホークス・ベイ地方では、

これらの品種が栽培されていて、主にボルドー系品種(メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン)とシラーの産地として、ニュージーランド国内で重要な地位を築いてきました。

近年では、栽培面積もどんどん増えてきているシラーが大変注目を浴びています。

ホークス・ベイ地方のシラーは香り高くスパイシー

シラーは、フランス・ローヌ地方が原産の品種です。

フランスからオーストラリアに伝えられ、「シラーズ」として進化し、世界各国にも広がっていきました。病気に強く育てやすい品種で、近年、世界でも栽培面積は増加しています。なんと1990年から2010年の20年間で、栽培量が5倍になったという人気者です。

基本的にぶどうの栽培は冷涼な気候のほうが向いているのですが、シラーは温暖で乾燥した気候を好む品種です。なので、ニュージーランドの中でも暖かい気候であるホークス・ベイ地方は栽培に向いていると言えます。

ホークス・ベイ地方のシラーの特徴はなんといっても、香り高くスパイシー。さらにエレガントさも兼ね備えたトータルバランス抜群のワインが生み出されています。

河川に沿って集中する産地

ホークス・ベイ地方には、ホーク湾に向かって北から

  • エスク川
  • ナガルーロロ川
  • トゥキトゥキ川

という3本の川が流れています。

その河口付近は、土砂が堆積することで出来る扇状地。この扇状地にぶどう畑が集中しています。

川に運ばれた土や砂が積み重なった土壌は、 それぞれの川ごとに少しずつ異なり、豊富なバリエーションのワインを生み出す要因となっています。

ここでは、代表的なサブリージョンを紹介します。

エスク リヴァー ヴァレー

「エスク リヴァー ヴァレー(Esk River Valley)」は、ホークス・ベイ地方の中で一番北のサブリージョンです。コースタル・エリア(沿岸地域)として分類されています。

ここは、海風のおかげで特に温暖。冬も霜が降りません。ぶどうの栽培において霜は天敵ですから、良好な環境といえるでしょう。

ここでは「エスク ヴァレー エステイト」というワイナリーが高い評価を受けています。

エスク ヴァレー エステイト

ニュージーランドを代表するワイナリー「ヴィラマリア(VILLA MARIA)」傘下である、エスク ヴァレー エステイト(Esk Valley Estate)はこの地域の最前線で活躍しているワイナリーの一つです。

▶エスク ヴァレー エステイト

場所はネイピア空港から車でわずか10分。抜群のアクセスで、旅行者にも人気のワイナリーです。

ワイナリーには小さなセラードアがあります。

エスク ヴァレー エステイトでつくられるメルロー主体のブレンドワインは、まるでニュージーランドを象徴するような赤ワイン。フルボディで豊かな味わいが特徴です。

また、これまでに様々な賞を受賞。高い評価を受けているワイナリーです。

ギムレット・グラヴェルズ

「ギムレット・グラヴェルズ(Gimblett Gravels)」は日本ではあまり知られてない産地ですが、ここでつくられるワインは、近年国際的にとても高い評価を得ています。

ナガルーロロ川下流周辺に広がる約800haの砂利だらけの土地が、ギムレット・グラヴェルズと呼ばれるエリア。

他のサブリージョンよりも夏の平均気温が2〜3度高く、より乾燥しているという特徴も。そのため、凝縮したぶどうからは力強いワインが生み出されています。

栽培しているぶどうの90%が赤ワイン用のぶどうです。

などの様々な品種が栽培されています。

「ボルドーブレンド」と「シラー」の赤ワインを得意とし、いずれもスパイシーで豊かなタンニンが感じられるのが特徴です。

ボルドーブレンドとは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなど複数の品種をブレンドするフランス・ボルドー地方の伝統的な製法です。

ブレンドすることで、複数の品種の持つ酸味や渋み、甘みなどのキャラクターが複雑さを生み出し、奥深い味わいのワインを生み出します。

では、このギムレット・グラヴェルズという産地はどのように生まれたのか。冒頭でも少し触れましたが、ここは1931年に起きたホークス・ベイ地震が大きく関与しています。

このホークス・ベイ地震は、ニュージーランド史上最悪の自然災害といわれる大地震とも言われ、この地方の地形を大きく変えてしまいました。

地震によって生まれた、神聖な産地

1931年2月3日にホークス・ベイ地方を襲った地震のマグニチュードは7.8。近隣の街である、「ネーピア」と「ヘイスティングス」では合わせて258名の犠牲者を出し、街は壊滅的な被害を受けることになります。

地盤は最大4メートル上昇。さらに、流れていたナガルーロロ川をも押し上げ、その流れを変えました。干上がってしまった場所には、砂利ばかりの川底が姿を現したのです。

しかしこの川底は耕作地や住宅地として利用することが可能ということがわかりました。さらにぶどう栽培に向いている土壌としても大変注目を集めることになったのです。

かつては川底だった土壌は、砂、砂利、石ころ。

ということは、養分があまりないので根がよく伸びます。そして水はけがいいので腐らない。ぶどうにとっては最高の土壌と言えるのです。

また砂利質の土壌は、日中十分な太陽の熱を蓄え、夜間でも気温は下がりにくくなり、ぶどうの育成に理想的な環境にしてくれます。

ギムレット・グラヴェルズの「GRAVELS」は砂利という意味。

名前のとおり砂利ばかりのこの土壌は、かつては “ホークス・ベイ地方で最も貧しく生産性の低い土地” と見なされていました。

しかし開拓者たちの努力によって、生産者の誰もが欲しがる地域になり、やがて土地の値段も高騰するほどになったのです!

2001年には、土地を所有する生産者たちによる団体「Gimblett Gravels Winegrowews Association」が設立。現在ワイン用ぶどうの育成地域として、登録商標となっています。

ここに加盟している生産者は、ワインに「Gimblett Gravels」もしくは「Gimblett Gravels Winegrowing District」と表記することができます。

こちらは、Gimblett Gravels Winegrowews Associationの公式サイトです。

▶ギムレット グラヴェルズ

生産者の彼ら皆が、ギムレット・グラヴェルズでワインをつくっていることを大変誇りに思っていることが伝わってきますね。

日本で買えるものは、

  • トリニティ・ヒル(Trinity Hill)
  • クラギー・レンジ(CRAGGY RANGE)

などがありますが、、、それはなかなかお目にかかれない品かもしれません。

もし日本で「Gimblett Gravels」とラベルに表記してあるワインを見つけられたら、是非飲んでみてくださいね!それはもう大変貴重なことですよ。

やっぱりなかなかないんですか?

そうですね、もし出会えたらかなりラッキーだと思います!

かつては川底だったという過去を持つ、ギムレット・グラヴェルズ。

この地が生まれたことは、ニュージーランドワインの歴史において、とても重要なことと言えるでしょう。

アールデコで蘇った街、ネーピア

ネーピアは、ホークス・ベイ地震で中心市街地の約9割が被災するという、壊滅的被害を受けました。

しかし積極的な復興事業により、当時流行していたアールデコ様式の建築物をずらりと並べ、素晴らしい街に生まれ変わったのでした。

再建前のネーピアの建物は単調な色のものが多かったのですが、復興後は柔らかなパステルカラーも多く使われています。「アールデコの首都」として明るく華やかに生まれ変わったネーピアは、見事な街になりました。

またアクセスもよく、この地域のワイナリーをめぐる拠点としても最高の立地です。

ちなみに皆さんおなじみのティッシュブランド、王子製紙の「ネピア」はここネーピアの街に由来しているそうですよ。

ブリッジ・パ・ トライアングル

「ブリッジ・パ・トライアングル(Bridge Pa triangle)」は、ギムレット・グラヴェルズより西側にあり、川に沿って三角形に広がる地域です。

水はけの良い土壌と、暖かく乾燥した気候が特徴で、よりぶどう栽培に向いている地域として知られています。

ホークス・ベイ地方では最も栽培面積が広い2,000ha。

ここで作られる赤ワインの特徴は、柔らかな口当たりと滑らかな果実味があり、ギムレット・グラヴェルズとは少し異なるキャラクターの赤ワインを生み出しています。

また、オーストラリアのシラーズと差別化を図り、冷涼な気候を生かした質の高いシラーを生産しています。さらに国際シンポジウムが開催されるなど、ますます注目が高まっています。

ハブロック・ヒルズ

ハブロック・ノース(Havelock North)という小さな町を中心に広がるサブリージョン、「ハブロック・ヒルズ(Havelock Hills)」。

産地としては新しい地域で、主にボルドー品種のワインをつくっています。

代表的なワイナリーはなんと言っても「テ・マタ・エステート(Te Mata Estate)」。

テ・マタといえばハブロックヒルズです。

テ・マタ・エステート

テ・マタ・エステートは1896年に設立された、ニュージーランドでも非常に古い歴史を持つワイナリーです。

▶テ・マタ・エステート

家族経営ワイナリーながらも、ニュージーランドでも5本の指に入るワイナリーとも言われています。

テ・マタ・エステートでは、ホークス・ベイの伝統的なぶどう畑から11種類のワインを生産。ワインボトルの進化にも怠らない姿勢が、その品質の評価を支えています。

手摘みで収穫したぶどうからつくる高品質の赤ワインは、長年に渡って世界中から高い評価を受けています。

ホークス・ベイ地方でのワイナリー巡りは自転車がおすすめ

ニュージーランドを代表するワイン生産地ホークス・ベイ地方には、数多くのワイナリーがあります。

そこで是非おすすめしたいのが、自転車でサイクリングしながらのワイナリー巡り。というのもホークス・ベイ地方は、平坦な地が多いのです。レンタル業者もいくつかあり、ワイナリーの敷地内に駐輪場も用意されています。

ワイナリー巡りを自転車で!?

ははは!少し驚きますよね(笑)

日本では自転車も軽車両に属するので飲酒運転とみなされますが、NZでは自転車の飲酒に関しては少し緩め。それに、実際たくさんのワイナリーを回ると疲れてしまうかもしれません。

しかし、日本とは違って温暖で乾燥したニュージーランドなら、気持ちよくサイクリングできそうです。美しいアールデコ調の街並みをはじめ、広大なぶどう畑、農場などを眺めながらのサイクリング。わたしたち日本人にとっては新鮮なアクティビティですよね。

ぜひチャレンジしてみたいですね!

また、ワイナリーの多くはセラードアや地元の食材を使ったレストランを併設していて、一日を満喫できるのでおすすめです。

数えきれないたくさんの魅力がつまった、ホークス・ベイ地方。

ニュージーランドを訪れたら、もう寄らずには帰れませんね。

 

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