ワイララパ|NZのブルゴーニュ「マーティンボロ」はピノ・ノワールで世界からの高評価を得る

北島の最南端に位置するワイン産地のワイララパ地方(Wairarapa)は、首都ウェリントンから車で1時間の小さな街(南島の「ワイパラ」と間違えやすいので要注意!)。

ワイン好きの間では「ワイララパ」よりも「マーティンボロ」という小さな地域の方が有名で「ワイララパといえば、マーティンボロ」が定着しています。

ぶどうの生産量はニュージーランド全体のたった1%と決して生産量が多い地域ではないのですが、この小さな地域が作り出す繊細なピノ・ノワールは世界中で高く評価されており、入手困難なものもあります。

白ワイン用ぶどう品種はソーヴィニヨン・ブランが多く植えられていますが、リースリングピノ・グリにも注目が集まっています。

それでは、ワインの名産地マーティンボロを有するワイララパ地方の魅力を探っていきましょう。

どんな地域?

ワイララパはマオリ語で “輝く水の土地” という意味。その名の通り自然豊かな地域です。

息を飲むほど美しいワイララパ湖を有し、羊の放牧地帯として知られ、観光客はもちろん週末には首都ウェリントンの住人達も家族でピクニックやアクティビティを楽しみます。

比較的せまい産地なのでワインの生産量自体は少ないのですが、気候、土壌など非常に恵まれたこの地では少数精鋭のワイナリーが高品質なワインを作り出しています。

ブルゴーニュに似た気候と土壌

1970年代に大手ワイナリーのモンタナ社の依頼により開始された政府の地質調査で、土壌学者のディレック・ミルネ博士が「(ワイララパ地方の)マーティンボロの土壌気温・降水量がブルゴーニュに似ている」と発表しました。

しかしマーティンボロの中でぶどう栽培が可能な土地があまりにも狭かったため、同社は2番目に博士が推奨した「マールボロ地方」を選び開拓先とし、それが後のニュージーランド最大のワイン産地になったのです。

そんな経緯があったんですね!

1978年にはミルネ博士らの土壌レポートが一般公開されたので、博士の他にも興味を示した人達がマーティンボロでワインづくりを始めました。

1日や1年の中の寒暖差がワインの骨格を決める

1年を通じた、気候変動の特徴をみていきましょう。

涼しい春が終わると、1日の中の寒暖差が激しい夏がやってきます。夏の平均最高気温は30℃ですが、夜は一気に下がり、平均最低気温12℃とぐっと肌寒くなります。

この1日の中の激しい寒暖差が早熟なピノ・ノワールをゆっくりと成長させ、更に涼しい秋がぶどうの遅摘みを可能にし、糖度の高いぶどうを作り上げます。

寒い冬~春にかけてはぶどうに霜がついてしまうので、それを防ぐ為のスプリンクラーやヘリコプターなどが大活躍します。

このような1日や1年の中の寒暖差が、高品質なぶどうを作り出します。

少ない降水量と水はけの良い土壌

ワイララパには高い山があるおかげで雨雲が遮られ、年間降水量は600~700mmと少ないのが特徴。

そして全体的に砂利などの小さい石が多い、水はけの良い土壌が広がっています。

水はけの良い痩せた土地でぶどうを育てると、ぶどうの樹は生き延びるために栄養を求め、地中深くに根を張り、水分や養分を取り込もうとします。そして枝や葉よりも優先的に「実」に栄養を蓄えるので、糖度がぐっと高くなるのです。

ぶどう栽培において「水はけの良い痩せた土地」というのはまさにキーワード。糖度の高いぶどうを作るには欠かせない条件です!

知らなかったなあ〜

うん、野菜や果物って、肥料や水分がたっぷり必要なんだと思っていました…!

ワイララパと言えばピノ・ノワール。その他のぶどう品種も。

この地域を代表するぶどう品種は何と言っても、赤ワイン用ぶどうのピノ・ノワール。

気難しい品種として知られるピノ・ノワールですが、ワイララパ地方の気候と土壌が本場フランス・ブルゴーニュと似ているとあって、この地でも素晴らしいものが作られています。

また、香り豊かな白ワイン用ぶどう品種からも目が離せません。

赤ワイン用ぶどうの特徴は?

この地域のぶどうは、果皮が厚く酸味豊かで、ボディがしっかりとしていて濃厚な味わいなのが特徴です。

そのため、赤ワインのなかでも明るい色味が特徴であるピノ・ノワールも、ワイララパでは濃いめの色味をしています。

香りはプラム、チョコレート、さらには獣っぽい香りが感じられるような、本格的でエレガントなスタイルです。

白ワイン用ぶどうの特徴は?

ピノ・ノワールの他は、ほとんど白ワイン用ぶどうが作られていて、ワイララパの冷涼な気候を活かした香り豊かなものが中心のラインナップです。

主な品種は

この地域で世界的に有名な日本人ワイナリーの「クスダ・ワイン」では、ピノ・ノワールだけでなくリースリングでも受賞経験があります。

特色のあるワイナリー

ワイララパ地方のワイナリーの多くが、マーティンボロの中の「マーティンボロ・テラス」という小さい地域に集中しています。

ここでは、この地域を語る上で外せない4つのワイナリーをご紹介します。

ドライリバー

「ドライリバー(Dry River)」は老舗のワイナリーで、そのワインは伝説的な存在のワインとして崇められています。

1979年にニール・マッカラム博士夫妻によって設立され、ドライリバーという名の実際の川が1kmズレてできた川床に、ピノ・グリなどの白ワイン用ぶどう品種を植えたのが始まり。

博士はオックスフォード大学出身で科学者だったので、ぶどうを科学的な見地から栽培していました。なのでピノ・ノワールの作り手達の間では伝説的な人物です。

ドライリバーのワインは、ニュージーランド国内でも入手が困難とされるほど人気です。

▶ドライリバー

アタ・ランギ

「アタ・ランギ(Ata Rangi)」はピノ・ノワールの名手として知られ、国内外で数多く受賞経験を持つ5つ星のワイナリー。

マオリの言葉で「夜明けの空、新しいはじまり」という意味のアタ・ランギはマーティンボロの草分け的な存在で、彼らの作るピノ・ノワールは “ニュージーランドのロマネ・コンティ” とまで呼ばれるほどです。

アタ・ランギは1980年、クライヴ・パットン氏と彼の妻ら4人により、マーティンボロの痩せた土地に設立されました。

彼らのワインはピノ・ノワール以外も優れており、全てのワインに野生酵母が使われています。

▶アタ・ランギ

マーティンボロー・ヴィンヤード

ニュージランドのパイオニア的な存在である「マーティンボロー・ヴィンヤード(Martinborough  Vineyard)」は、1979年に行われた地質調査を担当していたデレック・ミルヌ博士自らが設立したワイナリーです。

1997年には、ロンドンのインターナショナル・ワイン・チャレンジで、世界最高のピノ・ノワールに贈られる、ブシャール・ファンレイソン・トロフィーを獲得しています。

マーティンボロー・ヴィンヤードのピノ・ノワールは、まるでフランスのブルゴーニュの特級畑で作られたように優れていて、評価が高く「スクリューキャップ(簡易的なねじ式のキャップ)のリシュブール(特級畑)」と呼ばれるほどです。

▶マーティンボロ−・ヴィンヤード

クスダ・ワインズ

「クスダ・ワインズ(Kusuda Wines)」は、ニュージーランドで最も有名な日本人ワイナリーです。

設立者の楠田浩之さんは、ワイン好きな兄の影響を受けワインづくりを志しました。ドイツの大学で醸造学を学び、2001年大学卒後すぐにここマーティンボロを訪れ、このワイナリーを設立しています。

ニュージーランドを代表するマスター・オブ・ワインである、ボブ・キャンベルが主導するニュージーランドトップワイナリー2020版でも、8位にランクインしているほど評価の高いワイナリー。

ピノ・ノワールが有名で、それは少量しか出回らないので入手困難が続いています。その他には、シラー、リースリングも人気。

▶クスダ・ワインズ

ワイララパ地方より有名なサブリージョン、マーティンボロ

ワイララパ地方のサブリージョンは主に3つあります。

  • マーティンボロ
  • グラッドストーン
  • マスタートン

しかしマーティンボロさえ抑えておけば大丈夫!というほど、そのほとんどがマーティンボロで作られています。

ほか2つのサブリージョンはまだ認知度が低く、産地は「ワイララパ」と表記されることが多いのが現状ですが、マーティンボロと同様、ぶどう栽培には大変適した土地といえます。

それでは、マーティンボロを中心に3つ地域の特徴をみていきましょう。

マーティンボロ

首都のウェリントンを北東に55kmほど進んだ場所にある、人口わずか1,500人ほどの小さな街「マーティンボロ(Martinborough)」。ここでは、世界中に素晴らしいワインを届ける小規模ワイナリーが集まっています。

小旅行先としても親しまれ、週末にもなれば上質なワインと食事を求めたセレブ達で賑わいを見せます。

マーティンボロ・テラス

「マーティンボロ・テラス(Martinborough Terrace)」と呼ばれる長さ4km、幅最高2kmのこの地域は、フアナルア(ハンアグラ)・リバーが2万年以上に流れていたかつての川床、流域が1kmほど北側にずれてできあがったもの。

水はけは極めてよい場所なので、人気ワイナリーの畑が密集しています。

グラッドストーン

マーティンボロの北東に位置する「グラッドストーン(Gradstone)」。

有名なワイナリーは、「アーラー(URLAR)」。

前オーナーのアンガス・トムソンが、交友のあった鹿児島県の西酒造8代目当主の西陽一郎さんに譲り渡し始まったものです。ネルソンの有名なワイナリーのグリーンソングスの小山浩平さんが協力する形で、人気のワイナリーへと成長していきました。

マスタートン

マスタートン(Masterton)は、人口2万人ほどのワイララパ地方の中で最も大きな街。ここではアルパカプレイスなどで、動物たちと触れ合えます。

マーティンボロのワインの楽しみ方

マーティンボロはニュージーランドの中でもワインのパイオニア的な地域で、生産量は少量ですがこの地の上質なワインを楽しみにしている観光客も多くいます。

自転車でワイナリー巡り

マーティンボロの中のマーティンボロテラスでは、狭い地域の中に有名なワイナリーの畑がひしめき合っているので、観光客の多くが自転車をレンタルしてワイナリー巡りをします。

セラードアという試飲直売所も多くあり、気軽にワイナリー訪問をすることができます。

レンタル自転車のお店では一般的な自転車であれば、約3,000円で借りることができるので、ワイナリーのオープン時間を確認してから出かけるようにしましょう。

トースト・マーティンボロ

11月には、トースト・マーティンボロ(Toast Martinborough)というワインのお祭りがあり、地元のワインはもちろん、牡蠣などの地元の食材と共に、音楽が楽しめたりと街全体がパーティー会場のように。

トーストという言葉には「乾杯!」という意味もあり、この地域のワインを皆で楽しみ、称賛する意味でこのイベントは開かれています。

このお祭りの期間中には、1日に8,500リットル近いワインが消費されるほど。

▶トースト・マーティンボロのHP

ワイララパ・ワイン収穫祭

3月には、ワイララパのワイン収穫祭(Wairarapa Wines Harvest Festival)が行われます。

ルアマハンガ川のほとりで行われるこのお祭りでは、入場者は足なしのワイングラスを首から下げて、各ワイナリーのワインを気軽に飲み比べしたりして楽しむことができます。

来場者はワインはもちろん現地の食べ物を楽しんだりダンスをしたりして、このお祭りを楽しみます。

▶ワイララパ・ワイン収獲祭のHP

アクセス・周辺観光情報

ワイララパ地方は首都のウェリントンから車で約1時間。

この地を巡る際に必ず拠点となるウェリントンのアクセスや観光情報を中心にお伝えします。

アクセス

首都ウェリントンには日本からは直行便は出ておらず、北島のオークランド、もしくは南島のクイーンズ・タウンから国内便で飛行機で訪れる方法があります。

オークランドから車で行くことも可能ですが約9時間以上かかるので、ここでは飛行機のみの紹介をします。

オークランド(北島) クイーンズ・タウン(南島)
飛行機所要時間 約1時間5分 約1時間20分

ウェリントン空港から市内までは市バスで行くのが主流で、20〜30分で到着します。

ウェリントン

ニュージーランドの首都「ウエリントン(Wellington)」は、首都ではあるのですが人口はオークランドの3分の1程度の約41万人で、穏やかでゆったりとした街です。

ニュージーランドの首都ウエリントンとは

1865年南島のゴールドラッシュに合わせて、オークランドから南島に近いウェリントンに首都が移されました。海峡から強風が吹き付けるので、ウィンディ・ウエリントンとも呼ばれています。

ウェリントンの街並を見渡せるマウント・ヴィクトリアや、ニュージーランドの歴史が学べる国内最大の国立博物館デ・パパなどが集約しているので、1日あれば街歩きは十分できます。

またウェリントンは「コーヒーの街」と呼ばれるほどコーヒーが有名なので、街の至るところにカフェが並んでいます。メニューの中では、エスプレッソにきめ細やかに泡立てたスチームミルクを注ぐ「フラットホワイト」が名物で、どのカフェに行っても楽しむことが出来ます。

芸術と映画産業の街

ウェリントンは映画の都で、芸術、映画産業の街とも言われています。

最近では街全体が映画の街として盛り上げようという動きをしていて、ハリウッドを模したウェリウッドの看板も掲げられているほど。

「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」などを制作したり「アバター」の特殊効果を担当したウェタ・デジタル会社もここウェリントンにあります。現地では映画のロケ地や、映画に使われた小道具などを展示する場所を巡る映画ファンにはたまらないツアーも開催されています。

映画とワイン、両方とも大好きという方は、まずはウェリントンで映画の世界を堪能して、そこから車で1時間のマーティンボロへ足を伸ばすというコースならば、申し分なくこの地域の魅力を感じられるでしょう。

他の人にも教える!

ストップ! 20歳未満飲酒・飲酒運転。お酒は楽しく適量で。妊娠中・授乳期の飲酒はやめましょう。のんだあとはリサイクル。