ワイララパ|NZのブルゴーニュ「マーティンボロ」はピノ・ノワールで世界からの高評価を得る

北島の最南端に位置するワイン産地、ワイララパ地方(Wairarapa)。この地方には、世界でもトップクラスのピノ・ノワールの生産地として知られる「マーティンボロ」というエリアがあります。

風光明媚な景色が広がるこの地方は、首都ウェリントンから車で約1時間というアクセスの良さもあり、リゾート地としても人気です。

栽培面積が狭いこの地方は、生産者のほとんどが小規模経営者ということもあり、生産量はニュージーランド全体の約1%程度しかありません。

しかし、「プレミアム・ワイン」や「カルトワイン」と呼ばれるような希少価値の高いワインがつくり出される名産地として知られています。

そんなワイララパ地方のワインの魅力を探っていきましょう。

ワイララパ地方とマーティンボロの気候・土壌の特徴

「ワイララパ」とはマオリ語 “輝く水の土地” という意味で、その名の通り豊かな自然が残る地域です。

冒頭でも述べましたが、この地方の「マーティンボロ」というエリアでつくられる赤ワインの「ピノ・ノワール」は世界で高い評価を得ています。

この地方の特徴は以下の3つです。

  1. サブリージョンの「マーティンボロ」が特に有名
  2. 1日の寒暖差が激しい
  3. 降水量が少なく、水はけの良い土壌

それでは詳しくみていきましょう。

「ワイララパ」よりも有名な「マーティンボロ」

NZのワイン産地は「リージョン」と呼ばれる大きな地域があり、さらにその中に「サブリージョン」という少域の地域があります。

普通はその大きな区域の方が認知度は高くなりますが、「ワイララパ地方」は例外です。認知度で言えば、マーティンボロ > ワイララパとなるんですよ。

そのきっかけは1970年代、当時の大手ワイナリー「モンタナ社」の依頼により開始された政府の地質調査でした。土壌学者のディレック・ミルネ博士が「(ワイララパ地方の)マーティンボロの土壌や気温、降水量がブルゴーニュに似ている」と発表したことで、この地がぶどう栽培に適していることが判明したのです。

しかし、マーティンボロのぶどう栽培が可能な土地があまりにも狭く、同社は博士が2番目に推奨した「マールボロ地方」を開拓先に選んだのです。その後1978年にはミルネ博士らの土壌レポートが一般公開されたことを機に、そのデータに興味を示した人達がマーティンボロでワインづくりを始めました。

そして今ではマールボロ地方がNZを代表する巨大産地となり、マーティンボロは希少価値の高いワインを生み出さすプレミアム産地となっています。

そんな経緯があったんですね!

マーティンボロでは、本場ブルゴーニュのものとも負けずとも劣らないようなピノ・ノワールが生み出されています。しかし、ブルゴーニュと比べるとコスパが良いワインが多いので「手が届く範囲の価格で、本格的なピノ・ノワールを楽しみたい!」という方にはおすすめの産地です。

1日の中の寒暖差がピノ・ノワールに好条件

ワイララパ地方の気候は、春は涼しく、夏は1日の寒暖差がとても大きい、という特徴があります。具体的に見てみると、夏の平均最高気温は30℃ですが、夜は一気に下がり平均最低気温12℃とぐっと肌寒くなります。

この1日の中の激しい寒暖差は、ピノ・ノワールの栽培には好都合な条件。早熟なピノ・ノワールをゆっくりと成長させ、更に涼しい秋がぶどうの遅摘みを可能にし、糖度の高いぶどうができるのです。

逆に生産者を悩ませるのは、冬〜春にかけての寒い時期。ぶどうに霜が付かないように、スプリンクラーなどを活用し対策しています。

少ない降水量と水はけの良い土壌

ワイララパ地方には高い山があり、それによって雨雲が遮られ年間降水量は600~700mmと少なくなっています。東京の年間降水量が1,500〜1,800mm程度ですので、東京の半分以下ということになります。

更にこの地方の土壌は、砂利などの小さい石が多く、水はけが良いのが特徴です。地中に水分や栄養があまり含まれていない、いわゆる「痩せた土地」は、ぶどうを育てるのに最適。なぜかというと、ぶどうの樹は生き延びるために栄養を求め、地中深くに根を張り、水分や養分を取り込もうとするからです。そして枝や葉よりも優先的に「実」に栄養を蓄えるので、糖度がぐっと高くなるのです。

「水はけの良い痩せた土地」というのは、糖度の高いぶどうをつくるには欠かせない条件なんです!

知らなかったなぁ〜野菜や果物って、水分と肥料がたっぷり必要なんだと思ってました…!

「ワイララパ」と言えば「ピノ・ノワール」。その他のぶどう品種も。

この地域を代表するぶどう品種は何と言っても、赤ワイン用ぶどうの「ピノ・ノワール」です。

気難しい品種として知られるピノ・ノワールですが、その本場ブルゴーニュ地方の気候や土壌とよく似ているワイララパ地方では高品質なワインがつくられています。

また、香り豊かな白ワイン用ぶどうも人気です。

赤ワイン用ぶどうの特徴は?

この地域のぶどうの特徴は、果皮が厚く豊かな酸味を持ち、しっかりとしたボディで濃厚な味わいです。そのため、赤ワインのなかでも明るい色味が特徴であるピノ・ノワールも、ワイララパでは濃いめの色味をしています。香りはプラム、チョコレート、さらには獣っぽい香りも感じられます。

白ワイン用ぶどうの特徴は?

ピノ・ノワールの他は、ほとんど白ワイン用ぶどうが作られていて、ワイララパ地方の冷涼な気候を活かした香り豊かなものが中心のラインナップです。

主な品種は、

この地域で世界的に有名な日本人ワイナリーの「クスダ ワイン」では、ピノ・ノワールだけでなくリースリングにも定評があります。

この地方のワイナリー

ワイララパ地方のワイナリーの多くは、マーティンボロの中の「マーティンボロ・テラス」という小さい地域に集中しています。ここでは、この地域を語る上で外せない4つのワイナリーをご紹介します。

ドライリバー

「ドライリバー(Dry River)」は老舗のワイナリーで、ピノ・ノワールのつくり手達から伝説的な存在として崇められています。

ニール・マッカラム博士夫妻によって1979年に設立。「ドライリバー」という実際の川が1kmズレてできた川床に、ピノ・グリなどの白ワイン用ぶどう品種を植えたのが始まりとされています。

博士はオックスフォード大学出身の科学者であり、科学的な見地からぶどう栽培をしていました。ドライリバーのワインは、NZ国内でも入手が困難なほど希少です。

▶ドライリバー

アタ ランギ

「アタ ランギ(Ata Rangi)」はピノ・ノワールの名手として知られ、国内外で数多く受賞経験を持つ5つ星のワイナリーです。1980年、クライヴ・パットン氏と彼の妻ら4人により、マーティンボロの痩せた土地に設立されました。

マオリの言葉で「夜明けの空、新しいはじまり」という意味のアタ ランギは、マーティンボロの草分け的な存在で、彼らがつくるピノ・ノワールは 「ニュージーランドのロマネ・コンティ」とまで呼ばれるほどです。

すべてのワインの発酵には、野生酵母が使用されているのが特徴で、一部のぶどう畑はバイオダイナミック農法によって管理されています。

▶アタ ランギ

マーティンボロー ヴィンヤード

NZのパイオニア的な存在である「マーティンボロー ヴィンヤード(Martinborough  Vineyard)」は、1979年に行われた地質調査を担当していたデレック・ミルヌ博士自らが設立したワイナリーです。

1997年には、ロンドンのインターナショナル・ワイン・チャレンジで、世界最高のピノ・ノワールに贈られる、ブシャール・ファンレイソン・トロフィーを獲得しています。

マーティンボロー ヴィンヤードのピノ・ノワールは、まるでフランスのブルゴーニュの特級畑でつくられたワインのようだ。という意味で「スクリューキャップ(簡易的なねじ式のキャップ)のリシュブール(特級畑)」と呼ばれるほどです。

▶マーティンボロー ヴィンヤード

クスダ ワインズ

「クスダ ワインズ(Kusuda Wines)」は、NZ国内で最も有名な日本人ワイナリーです。オーナーの楠田浩之さんは、ワイン好きな兄の影響を受けワインづくりを志しました。ドイツの大学で醸造学を学び、2001年大学卒後すぐにここマーティンボロを訪れワイナリーを設立しています。

楠田さん

楠田さんは、NZで初めてワインをつくった日本人なんですよ。

クスダ ワインズは国内外での評価が非常に高く、NZワインの権威であるマスター・オブ・ワインのボブ・キャンベルが主導する「ニュージーランドトップワイナリー2020版」でも、8位にランクインしました!

日本人の方が、NZのワイナリーの中でトップ10に入るなんて、すごいですね!!

クスダ ワインズのワインで最も力を入れているのはピノ・ノワールです。少量しか市場に出回らないため、入手困難なワインと言われています。その他の品種では、シラー、リースリングも人気です。

▶クスダ ワインズ

ワイララパ地方のサブリージョン

ワイララパ地方のサブリージョンは、以下の3つです。

  • マーティンボロ(Martinborough)
  • グラッドストーン(Gradstone)
  • マスタートン(Masterton)

サブリージョンは3つありますが、ワイララパ地方のほとんどのワインが「マーティンボロ」で生産されているので「マーティンボロ」さえ押さえておけば大丈夫です!

「マールボロ」と名前が似ていますよね(笑)

そうなんです(笑)NZには他にも似たような名前の産地があって、ちょっとややこしいんですよね〜。

マールボロ=NZを代表する巨大産地。

マーティンボロ=ワイララパ地方にある名産地。

と覚えておいて下さい。

他の2つのサブリージョンはまだ認知度が低く、産地は「ワイララパ」と表記されることが多いのが現状です。ただ、ぶどうの栽培に適した土地であるのは間違いなく、今後の飛躍が期待されます。

それでは「マーティンボロ」を中心に、3つ地域の特徴をみていきましょう。

マーティンボロ(Martinborough)

首都ウェリントンを北東に55km進んだ場所にある、人口わずか1,500人ほどの小さな街「マーティンボロ(Martinborough)」。ここには、高品質なワインを作り出す小規模ワイナリーが集まっています。

この地域は小旅行先としても親しまれ、週末になると上質なワインと食事を求めた人々で賑わいます。

マーティンボロ・テラス

「マーティンボロ・テラス(Martinborough Terrace)」と呼ばれる長さ4km、幅最高2kmのこの地域は、フアナルア(ハンアグラ)・リバーが2万年以上前に1kmほど北側にずれて出来ました。極めて水はけの良い場所なので、人気ワイナリーの畑が密集しています。

グラッドストーン

マーティンボロの北東に位置する「グラッドストーン(Gradstone)」。

ここには「アーラー(URLAR)」という、日本人経営社のワイナリーもあります。アーラーは、前オーナーのアンガス・トムソン氏が、交友のあった鹿児島県の西酒造8代目当主の西陽一郎さんに譲り渡して始まったワイナリーです。現在、ネルソン地方「グリーンソングス」というワイナリーを経営する小山浩平さんが栽培醸造責任者となり、自然界に最大の敬意を払う「バイオダイナミック農法」でぶどうが栽培されています。

マスタートン

マスタートン(Masterton)は、ワイララパ地方の中で最も人口の多い地域です。「アルパカプレイス」という人気のスポットでは、動物たちと触れ合えます。

マーティンボロのワインの楽しみ方

「マーティンボロ」はNZ国内の中でもワインの伝統のある地域で、風光明媚な景色とともにワインが楽しめるので観光客やワインファンにも人気です。ここでは、この地域のワインの楽しみ方として「ワイナリー巡り」「ワインのお祭り」についてご紹介します。

人気エリアを自転車でワイナリー巡り

この地域のワイナリー巡りは、マーティンボロの中でもワイナリーが特に集中する「マーティンボロ・テラス」というエリアがおすすめです。セラードアという試飲直売所も多くあり、気軽にワイナリー訪問をすることができます。

自転車があると複数のワイナリーを効率よく巡ることができます。レンタルサイクルショップだと3,000円〜くらいで借りられますよ!

自転車でワイナリー巡りなんて最高ですね!大自然の中で飲むワインは格別だろうな〜。

トースト・マーティンボロ

11月にはトースト・マーティンボロ(Toast Martinborough)というワインのお祭りがあり、来場者はワインと牡蠣などの地元の食材と共に、音楽を楽しみます。

「トースト」という言葉には「乾杯!」という意味もあり、この地域のワインを皆で楽しみ、称賛する意味でこのイベントは開かれています。このお祭りの期間中には、1日に8,500リットル近いワインが消費されるそうです。

▶トースト・マーティンボロのHP

ワイララパ・ワイン収穫祭

3月には、ワイララパ・ワイン収穫祭(Wairarapa Wines Harvest Festival)が行われます。

来場者は各ワイナリーのワインの飲み比べや現地の食べ物を満喫し、ダンスを踊ってお祭りを楽しみます。

▶ワイララパ・ワイン収獲祭のHP

アクセス・周辺観光情報

ワイララパ地方は首都「ウェリントン」から車で約1時間。この地を巡る際に必ず拠点となる「ウェリントン」のアクセスや観光情報を中心にお伝えします。

ウェリントンへのアクセス

首都ウェリントンには日本からは直行便は出ておらず、北島のオークランド、もしくは南島のクイーンズ・タウンを経由する必要があります。

ウェリントン

各地域からの所要時間は下記の通りです。

オークランド(北島) クイーンズ・タウン(南島)
飛行機 約1時間5分 約1時間20分

空港から市内まではバスが便利で、20〜30分程で到着します。

NZの首都ウエリントンとは

「ウエリントン(Wellington)」は首都ではあるものの、人口はオークランドの3分の1程度(約41万人)です。

1865年南島のゴールドラッシュに合わせて、オークランドから南島に近いウェリントンに首都が移されました。海峡から強風が吹き付けることから「ウィンディ・ウエリントン」とも呼ばれています。ウェリントンの街並を見渡せる「マウント・ヴィクトリア」や、NZの歴史が学べる国内最大の国立博物館「デ・パパ」などが観光スポットとして人気です。

街の至るところにカフェが立ち並び、エスプレッソにきめ細やかに泡立てたスチームミルクを注ぐ、NZ発祥の「フラットホワイト」が楽しめます。

また、ウェリントンは「映画の都」としても知られ、映画や芸術産業が特に盛んです。近年は「ハリウッド」ならぬ「ウェリウッド」の愛称でも親しまれており、ハリウッドを意識してつくられた看板も話題になりました。あの「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」などの制作を手掛け、「アバター」の特殊効果を担当したことでも知られる「ウェタ・デジタル」も、ウェリントンの会社です。現地では、映画のロケ地を巡るツアーも人気で、街全体で映画産業を盛り上げています。

まとめ

ワイララパ地方は、首都ウェリントンよりほど近いリゾート地としても人気のワイン産地です。決して生産量は多くない地域ですが、サブリージョン「マーティンボロ」のピノ・ノワールはワイン愛好家達の間でも高く評価されています。

「ピノ・ノワール」と言えばブルゴーニュが本場ですが、その本場のピノ・ノワールのお値段は世界で最高額のものもあるほどで高値になりがちです。一方、そのブルゴーニュと気候や土壌がそっくりだと考えられているワイララパのワインは、高品質でありながらブルゴーニュと比べると価格は落ち着いています。

品質も非常に高いワイララパ、特に「マーティンボロ」のワインは試してみる価値ありですよ!

この記事の筆者

NZワインラバーズ編集部

NZワインラバーズ編集部
NZワインラバーズの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆しています。
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監修

NZワインラバーズ編集部

岩須 直紀
ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
ボクモ(BOKUMO)
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当サイト「ニュージーランドワインラバーズ」は一般社団法人日本ソムリエ協会 認定 ソムリエで飲食店「ボクモ」のオーナー岩須直紀が全記事を監修、一部執筆しているNZワインの専門サイトです。