ネルソン地方|穏やかな気候でアーティストが集う、個性的なワイン産地

ネルソン地方(Nelson)はネルソンという小さな街周辺に広がる、ワイン生産地です。

 

NZ南島の北海岸に面し、豊かな自然に囲まれた緑あふれる地域です。

この地は「サニーネルソン」と呼ばれるほど晴天率が高く、1年を通して過ごしやすい気候が特徴。それを活かした果物や、ビールの原料であるホップ、そしてワインの生産が盛んです。

またアートの街としても有名で、街中にはカフェやギャラリーが点在。ガラス工芸、絵画、彫刻、写真、ファッションなど、幅広いジャンルのアーティストが暮らしています。

また地域を囲む3つの国立公園では、シーカヤックやハイキングなどのアクティビティや野生動物の観察など、NZの大自然を余すことなく感じることができます。

アベル・タスマン国立公園

アベルタスマン国立公園

ワインに目を向けると、この地方特有の穏やかな気候を活かして、果実味が豊かで骨格のしっかりとした高品質なワインが生み出されます。

代表的なものは、ソーヴィニヨン・ブランピノ・ノワールシャルドネなど。

ネルソン地方では、アロマティック品種と呼ばれる香り豊かな(白)ぶどうにも力を入れています。

お隣にあるNZ最大のワイン産地マールボロ地方には大規模ワイナリーも多く存在しますが、ここネルソン地方ではブティックワイナリーという小規模経営のワイナリーばかり。生産量は少ないものの丁寧につくられるワインは、世界から高い評価を受けています。

穏やかで過ごしやすい気候のネルソン地方。この地方のワインの魅力を、地域の特徴とともにご紹介します。

豊かな果実味を持つワイン

ネルソン地方では、穏やかな気候と豊富な日照量のもとで凝縮感のあるぶどうが育ち、果実味が豊かなワインがつくられています。

穏やかな気候

「サニーネルソン」の愛称でも親しまれるように、晴れの日が多い地域で年間を通しての気温差も緩やか。

  • 夏季(2月)の平均最高気温は22.4℃
  • 冬季(8月)の平均最高気温は13.1℃

夏と冬の最高気温の差は10℃弱ほど。

東京の気温差が約22℃なので、その穏やかさがうかがえますね。しかし昼夜の気温差がしっかりとあるので、ぶどうはゆっくりと育ちます。

また北部は海に面しているものの、西、南、東の3方向は山で囲まれています。その山々が吹き付ける強い西風を防ぎ、ぶどうを守ってくれるのです。

代表するぶどう品種

ネルソン地方はワイン産地としての知名度はそこまで高くないものの、恵まれた気候のもとで家族経営のワイナリーが丹精込めてつくるワインが世界から注目されています。

この地方を代表するのはNZの多くの地域と同じく、白ワイン用ぶどう品種のソーヴィニヨン・ブラン。生産量の約半数を占めています。

ソーヴィニヨン・ブラン

ネルソン地方で作られるソーヴィニヨン・ブランは、おだやかな酸味と豊かな果実味、さらにトロピカルフルーツの香りが加わった、親しみやすさが特徴です。

また近年では、円熟したタンニンと複雑味を感じられるピノ・ノワールや、長期熟成にも向く高品質なシャルドネも高い評価を得ています。

その他にも豊かに香るアロマティック品種の栽培が盛んで、

などの品種が中心に栽培されています。

この地域はドイツ、オーストリア系の移民が昔から多く、その背景からドイツ系のぶどう品種であるリースリングやゲヴュルツトラミネールの存在も大切にされています。

サブリージョンはモウテレヒルズとワイメア平野

ネルソン地方のサブリージョンは以下のふたつ。

  • モウテレヒルズ(Moutere Hills)
  • ワイメア平野(Waimea Plains)

「モウテレヒルズ」は、ネルソン地方の西側にあるなだらかな丘陵地帯。

この地方の中では比較的冷涼で、NZ国内では珍しくミネラルの多い砂利質の土が特徴。これらにより、ピノ・ノワールやアロマティック品種と呼ばれるぶどうの栽培に適した環境です。

西からの風を山々が防いでくれるので安定した栽培が可能で、中には日光を効率よく浴びられる急勾配な地形もあります。

もうひとつの「ワイメア平野」は、マオリ語で「川の庭」という意味から名付けられました。

ワイメア川によって堆積した砂利や粘土質の土壌が特徴で、水はけがよく、根が地下深くまで伸び、日照量も多いことから良質なぶどうが育ちます。

軽やかかつフレッシュで華やかな香りを持つ、シャルドネやピノ・ノワールを中心に生産しています。

近年のワイン用ぶどう収穫量は増加傾向

ネルソン地方のぶどうの収穫量は、NZ国内で第4位です(2019年)。

1位のマールボロ地方が76.6%と圧倒的収穫量を誇り、2位のホークスベイ地方9.3%、3位のギズボーン4.1%に次いで、ネルソン地方は3.1%とごくわずか。

ですが、前年(2018年)と比べるとネルソンの収穫量は36%アップと急増しています。2019年のネルソンは気候に恵まれたヴィンテージだったと言えるかもしれません。

個性豊かなワイナリー

生産量ではマールボロ地方など有名な産地には遠く及ばないものの、少数精鋭の素晴らしいワイナリーがあります。

観光で訪れる場合には、それらのワイナリーがモウテレヒルズとワイメア平野に集中して点在している為、少ない時間で効率よくワイナリー巡りができるのも魅力のひとつ。

ここではネルソン地方を代表するワイナリーや、日本人による注目のワイナリーをご紹介します。

サイフリード(Seifried)|最も歴史のあるワイナリー

太陽と芸術の街ネルソンで、最も歴史のあるワイナリーがこの「サイフリード」。オーストリア出身のヘルマン・サイフリード夫妻が1973年に設立しました。

ヴュルツァーという珍しい赤ワイン用のぶどう品種にも力を入れている、NZで唯一のワイナリーです。その天然酵母由来の香りはライチやジャスミンやスパイスのニュアンスがあり、たいへんユニークです。

サイフリード一家がオーストリア出身であることから、栽培しているぶどうは東ヨーロッパ系のものが多く、甘口のリースリングも素晴らしいものが生産されています。

また2019年には、THE NEW ZEALAND WINE OF THE YEAR(2019)のオープンワイン(白)部門で、国内だけでなく、海外にも広く輸出をしているサイフリードのソーヴィニヨン・ブランが「ネルソンのベストワイン」に選ばれました。

オープンワイン部門は、国内外で広く愛されるワインが選ばれます

サイフリードはネルソン地方の草分け的な存在です。ワイナリーは海にも近く、とても開放的な雰囲気です。

サイフリード(Seifried)

▶サイフリード

グリーンソングス(Green Songs)|日本人栽培醸造家が営むワイナリー

小山浩平さん

画像提供元:(株)サザンクロス

次に紹介するのは、日本人醸造家が営むワイナリー「グリーンソングス」。

ここは小山浩平さんが代表を務める、自然に配慮したワイナリー。小山さんは東京・ロンドンのビジネスの世界で長く活躍されたあと、2011年にワインづくりを志しNZへと渡ります。

国立リンカーン大学でぶどう栽培・ワイン醸造を学び、日本人初の主席で卒業しました。そしてNZやカリフォルニアでワインづくりを実際に学び、2014年に自身のワイナリーを設立しました。

ネルソン風景(グリーンソングス)

画像提供元:(株)サザンクロス

グリーンソングスの畑があるアタマイ・ヴィレッジは、果樹園や農場などが共同で運営されています。ここでは、地球環境にできるだけ負担の少ない暮らしを共通の目的としています。村内の電力は全て太陽光で賄われ、水は雨水を再利用するなど、とことん自然環境に配慮しながら、ソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワール、ピノ・グリなどを栽培しています。

チャレンジ精神旺盛な小山さんのつくるワインから、これからも目が離せません。

▶グリーンソングス

ノイドルフ・ヴィンヤーズ(Neudorf Vineyards)|英「WINE」誌で優勝したワイナリー

モウテレヒルズのモツエカ地区にある「ノイドルフ・ヴィンヤーズ」は、1993年にイギリスの「WINE」誌でシャルドネが優勝したことで一躍有名になりました。

ピノ・ノワールは、ダークチェリーやプラムなど、黒系の果実が香ります。

▶ノイドルフ・ヴィンヤーズ

ブラッケンブルック(Blacken brook)|元サイフリードのワインチーフが手掛けるワイナリー

「ブラッケンブルック」は、モウテレヒルズの海岸近くのタスマンという場所にある、家族経営のワイナリーです。

オーナーのダニエル氏は国立リンカーン大学でぶどう栽培・醸造を学んだ後、オーストリアやドイツ、フランス(アルザス)などで経験を積み、NZではサイフリードでワインチーフを務めました。

その後パートナーである妻のウルスラ氏と共に、2年もの歳月をかけて理想の土地にたどり着いたのです。

彼らのワインはとてもアロマティックで、果実の凝縮感が感じられます。また、「シャングリ・ラ」というアートシリーズのワインには、ネルソン地方のアーティストであるMarilyn Andrews氏の絵がラベルに採用されています。

▶ブラッケンブルック

ビール原料・ホップの産地としても有名

ネルソン地方はワイン生産地としての側面もありますが、ビールの原料となるホップの産地としても有名です。そのホップの名を「ネルソンソーヴィン」と言います。

白ワインの原料となるぶどう品種、ソーヴィニヨン・ブランに似てますよね。

これは、この地で収穫したホップから作られたビールが、NZの代表的なぶどう品種であるソーヴィニヨン・ブランに似た香りがしたことから、この名前が付けられたようです。

このネルソンソーヴィンを使用したビールは、グランドキリンから発売されています。ビールはホップによって大きく味わいや香りが変わるので、機会があれば一度飲んでみてくださいね。

グランドキリンホワイトエール
引用:グランドキリン|ビール・発泡酒・新ジャンル|商品情報|キリン

実際に飲んでみたところ、“白ワイン”という感じはあまりしませんでしたが、グレープフルーツを思わせるフルーティーさ、そして爽やかなホップの香りからソーヴィニヨン・ブランをイメージすることができました。

アーティストが集い、アートあふれる街

ネルソンの街はその陽光あふれる穏やかな気候が、多くの人を惹きつけています。

ネルソン(街)

別荘地や観光地として有名ですが、アーティストが多く集まる街としても名が通っていて、ガラス工芸、絵画、彫刻、写真、ファッションなど、幅広いジャンルのアーティストが数多く暮らしています。

街中にはカフェが点在し店内でアートが楽しめるほか、毎週土曜日朝に開催されるネルソンマーケットでは、ネルソン地方に暮らすアーティストの作品が購入可能です。

またギャラリーも複数あり、そのスタイルもさまざま。カフェが併設されていたり、散策コースに作品が設置してあるなど個性豊かなギャラリーが存在します。

ネルソン地方を訪れた際にはワインだけでなく、アートにも触れることをオススメします。

海に面したネルソン地方は、アクティビティも豊富

北島と南島を隔てるクック海峡に面したネルソン地方は、北に海を望み、西・南・東を山で囲まれた場所。

非常に自然豊かで、近郊に3つの国立公園があります。

中でもアベル・タスマン国立公園はボートやヨット、シーカヤックなどを利用して、海とビーチにアクセスできます。

アクティビティもハイキング、カヤック、シュノーケリングなどアクティビティも豊富で、トンガ島ではオットセイも見られます。

ネルソン市街からタスマン湾を望むと、そこには見事な砂嘴(さし)があります。

「砂嘴」とは、岬や半島の先端から海に向かって細長く突き出た砂の堆積(たいせき)のことを言います。

日本では京都府宮津市の「天橋立」が有名ですね。

そのような背景から、ネルソンは京都府・宮津市と姉妹都市となっていて、ミヤズ・ガーデンズ(Miyazu Gardens)という日本庭園もあり、ネルソンの観光名所の1つとなっています。

ネルソン地方へのアクセス

ネルソン地方はNZ国内でも比較的アクセスのしやすい立地です。

国内最大の都市オークランドからネルソン空港までは約1時間30分で、北島の南端にある首都ウェリントンからはフェリーで3時間。レンタカーでそのまま北島から渡ることも可能です。

またNZワインの一大産地である、マールボロ地方のブレナムからは車で1時間30分なので、マールボロ地方を訪れた際には、ぜひとも寄り道したいところですね。

ネルソン地方は、人々を引きつける魅力の宝庫

一度行ったら長期で滞在したくなる様な、魅力たっぷりのネルソン地方。

「サニーネルソン」の愛称でも親しまれ、穏やかな気候に誘われるように国内・国外を問わず人々が訪れます。そして個性豊かな芸術家などが集まり、工房やギャラリーも多く、街は活気に満ちています。

そして生産量は少ないかもしれませんが、熱意溢れるワイナリー達が多く集い、毎年高品質なワインを作り続けています。

NZに行く際には、ぜひこの地のワイナリー巡りを組み込みたいですね。

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