サトウ ワインズ ピノ・ノワール ノースバーン 2015

レビュー日 | 2020.01.15 |
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地域 | セントラル・オタゴ |
ワイナリー | サトウ ワインズ(Sato Wines) |
品種 | ピノ・ノワール |
収穫年 | 2015 |
香り | カシス、黒胡椒、クローブ |
アルコール | 13.5% |
シーン | ずばり、あなたのお知り合いのサトウさんの誕生日パーティーにどうぞ! |
購入先リンク | ▶楽天市場 |
希望小売価格 | 7,500円(税別) |


岩須
全てにおいてハイレベル。 あと3年〜5年待っても十分楽しめるワインですね。
まずは、色。
ピノ・ノワールとは思えない、紫や黒がかった赤色。
非常に深い色味をした赤ワインです。
少しスワリングすると、ワインの涙がねっとりとグラスをまといます。
外観から一見して旨味が強く、味わいも濃く、そしてアルコール度数が強そうなワインだなと感じられました。
つぎに、香り。
ワインの香りは「閉じている」という表現をしますが、このワインも開けたてのときはややこもった感じの香りでした。
スワリングして空気にふれさせていくと、本来このワインがもっている香りのポテンシャルが酸化ともにどんどん出てきます。
ピノ・ノワールの香りといえば、ラズベリーやストロベリーなど赤系果実のニュアンスを感じることが多いんですが、このワインはワインの色と同じく黒系果実、カシスやブラックベリーやブラックカラントのような香りが強いですね。
さらに、少し重たくて複雑味のある、植物的ニュアンスも強く感じられます。
例えば、樹木やシダ植物。
フルーツとはまた違う香りです。
このようなニュアンスを持つピノ・ノワールは、明るくてフルーティーなNZワイン代表マールボロ産のものとは一線を画すもの。
明らかに違う個性を見せてくれます。
その他、それほど主張はしてきませんが、ほのかな樽の香ばしいニュアンスも調和しています。
また、インクや鉛筆の芯といった、やはりフルーティー系ピノ・ノワールに使わないような表現を思い起こさせるワインです。
ここまでまだ一口も飲んでませんが、色、香りから、非常に濃いワインだろうなと想像できました。
そして、味わい。
第一印象。
「果たしてこれはピノ・ノワールなのか!?」というくらい濃い味わい。
口に含んだときのアタック感、全体的な味のボリューム感も非常に強い。
そして、口の中に広がる渋み成分のタンニンがさらさらとしていて、めちゃくちゃなめらかなんです。
きめ細かいタンニン。そういう言い方がピッタリ。
これは非常にエレガントな渋みと言えるでしょう。
旨味も強く、パワフルさと上品さが高い次元で拮抗(きっこう)しているようなイメージを持ちます。
香りにも感じましたが、味わいにも複雑味があります。
フィニッシュは、心地よい渋みをともなっていて、余韻が長い。
この渋みのまろやかさは、非常に特徴的だと思います。
ワイナリー「サトウ ワインズ」について
ワイナリー「サトウ ワインズ」があるセントラル・オタゴ地方は、世界最南端とも言われるワイン産地です。
非常に冷涼で乾燥しているこの地方では、香り豊かで高品質なぶどうがつくられ、世界のワインファンが認める有名産地となっています。
サトウ ワインズはナチュラルなワインづくりを信条とし、バイオダイナミック農法でぶどうを育成。
自分たちのフィロソフィーを消費者に向けてしっかりと表現していることが、他のワイナリーとはちょっと違うところです。
例えば、ワインボトルの裏ラベルを見てみましょう。
書かれている内容は、畑の場所や土壌、それからヴィティカルチャー(Viticulture:栽培方法)について。
収穫は日付まで書いてあり、2015年3月27日にハンドピック(手積み)で収穫されたことがわかります。
自然酵母で発酵させて、全て除梗しているということ。
17ヶ月フレンチオークの樽の中で熟成させているということ。
新樽は使わず、古樽ばかりであるということ。
ボトリングしたのは2016年の11月8日という日付も書いてあって、生産本数は2040本しかつくっていないということも書いてあります。
また、酸化防止剤については発酵途中では使わず、1Lあたり20mgをボトリングする直前に入れている、ということもしっかりと明記されています。
(酸化防止剤が入っていることで、5年近くたってもこのワインを楽しめるということに繋がっている、とぼくは思います。)
ここまで細かな情報を開示することは大手のワイナリーではなかなか難しいと思います。
どのような場所でどのようにぶどうを育て、どのようにそれをワインにしているのか、その手作りの様子を知ってもらいたいという思いが伝わってきます。
サトウ ワインズのオーナーは大阪出身の佐藤嘉晃さん。経歴を見ると、ちょっと異色のワインメーカーであることをうかがい知ることができます。
早稲田大学を卒業後、銀行に勤務。転勤先のロンドンで、奥さまと共にワインの世界に魅了され、そこからワインメーカーになることを決意します。NZの醸造学の名門リンカーン大学でワインづくりを学び、セントラル・オタゴの雄であるワイナリー、フェルトン ロードなどでの勤務経験を経て自らのブランドを設立したのが2009年。以来、夫婦二人三脚で、手作りのワインをつくり続けています。
ご夫妻がつくるワインの香りや味わいは、ご夫妻が関わったフェルトン ロードのスタイルに通じるような上質でナチュラルな旨みを持ったワインだと感じます。
このピノ・ノワールはあと3年から5年待っても、十分楽しめるワインだと思います。
おすすめのペアリング
単体で飲むのももちろん美味しいですが、フルーティーさを全面に出さず、ワインの旨味で勝負しているワインなので、じっくり食事と一緒に楽しめると思います。
セオリーでいうと複雑な旨味を持ったお料理や素材がおすすめ。
例えば鴨のグリル。
牛、それからラムなどでもいいですね。
シンプルにソテーでもいいんですが「グリル」をおすすめするのは、ワインの持つ樽の香ばしさと、食材の持つ香ばしさを合わせるといいと思ったからです。
表面をカリッと焼いて、岩塩とブラックペッパーをきかせ、そこにハーブも加えると、よりこのワインと合うでしょう。
エレガントな渋さがあるワインには、油分のあるお料理がすごくあうんですよね。
タンニンと油分が結びつくと、旨味に変わるんです。
だからもう、お肉系と合わせるっきゃないって感じです。
また、濃いピノ・ノワールは色で合わせるといいので、ちょっと茶色が濃いようなイメージのお肉だったりソースでいただくといいですね。
家庭料理でももちろんあいます、しかし「格を合わせる」といった意味で、ぜひちょっぴり気取った料理と合わせてみてください(笑)
鴨のグリル 赤ワイン醤油ソース
皮目はカリッと焼いて、中はしっとりやわらかくロゼ色に仕上げた鴨。
鴨のコクが、この赤ワインと間違いなく合います。
牛肉のステーキ
シンプルに、岩塩のみでいただく牛ステーキも間違いないですね。
ぜひ合わせてみてください。
ヒレ肉、もも肉、などであれば最後にバターをプラスしてもいいですね。
スペアリブの煮込み
スペアリブをホロホロになるまで赤ワインでしっかり煮込んで。
赤味噌を加えるとぐっとコクが増して複雑な旨みがうまれます。
複雑な旨みのワインにはばっちりあいますね。
このワインは飲むなら間違いなく冬、です。
温かい煮込み料理とぜひご一緒に!
この記事の筆者

- NZワインラバーズの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆しています。
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監修

- ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
ボクモ(BOKUMO)
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