アント マッケンジー ワインズ セオリー アンド プラクティス シラー 2013

赤身のお肉にぴったりな、濃厚な味わいの一本「アント マッケンジー ワインズ セオリー アンド プラクティス シラー 2013」のレビュー。濃厚さとしっかりとしたタンニンがありながら、食事に合わせやすいエレガントさをもったワインです。
レビュー日 | 2020.04.08 |
---|---|
地域 | ホークス・ベイ |
ワイナリー | アント マッケンジー ワインズ(Ant Mackenzie Wines) |
品種 | シラー |
収穫年 | 2013 |
香り | 黒胡椒、シナモン、インク、ブラックベリーやブラックチェリーなど黒系果実のジャム |
アルコール | 13.5% |
こんな人におすすめ | 肉食系な方に! |


岩須
可愛いジャケして肉食系な1本です。
今回は、赤身のお肉にぴったりな、濃厚な味わいのワインのご紹介です。
その前に、赤ワインにまつわる法則をひとつ。
「お肉料理に合う赤ワインは、温暖な産地でつくられる」
どっしりとした赤身のお肉料理には、濃厚で渋みのある赤ワインがぴったりです。そういった赤ワインは、しっかりと完熟した糖分の高いぶどうからつくられます。
そして、そのしっかり完熟したぶどうは、温暖な場所でしか作ることができないので、「お肉系ワイン=温暖産地」という法則ができるというわけです。
このワインの産地ホークス・ベイもその法則どおり、NZの中でも温暖な産地として知られています。
従来、NZも含めたニューワールドの温暖な地域でつくられるシラーは、どっしり重い味わいで、ちょっとヌメッとした感じが舌に残るような、超ヘビー級な赤ワインというイメージがありました。
しかし近年、世界の赤ワインの傾向は、重たいものから軽いものへ、よりナチュラルなものへというように変化してきていて、ホークス・ベイからもそういったワインが出始めています。
品種の特徴を保ちながらも、べったりとした重さのない、食事に合わせやすい「ややエレガントなシラー」。
今回はその中の1本をレビューしていきたいと思います。
向こう側が透けて見えないほどの黒さをもった、深いルビー色をしていますね。
エッジにはオレンジがかったトーンがあり、これは熟成されたワインに見られるものです。
傾けたグラスを起こした時に見られるワインの涙は太いですね。アルコール度数の高さがルックスでわかります。
熟成感があり、ボリューム感もある、旨味たっぷりのワインだろうなと予想。楽しみになってきます。
さっそく香ってみますと…
思わず「わーお」という声が出てしまいました(笑)
「シラーのお手本」というような、特徴的なスパイスの香りがブワッと鼻腔に広がります。
まさに「スパイス・ボム(爆弾)」ですね。
ブラックベリー、ブラックチェリーなどの、黒系果実のジャムのようなニュアンスもありますが、そういったフルーツの印象は少し控えめです。
それに覆い被さるように、黒胡椒、シナモン、そしてインクのような香り、つまりシラーという品種の持ち味がはっきりと香ってきます。
意を決して口に含みますと、まさに期待通り。
スパイスのフレーバーを全面に感じます。シナモンが一番強いですね。
フルーツ感は、黒系果実を煮詰めたジャムのような感じ。そのジャムから甘みを取り去ったようなイメージというと、わかりやすいかもしれません。
舌に広がるなめらかさは、非常に心地良いです。
そして飲み込んだ後の鼻に抜ける香りも、やはりスパイシーです。
口の中には、上質でサラサラとしたタイプのタンニンが残りました。
スタイルとしては、濃くもありますが荒々しくはない、エレガント寄りなシラーと言えるでしょう。
そしてエレガントな赤ワインはフードフレンドリーでもあり、食事と合わせることで魅力が倍増します。
スパイシーな味付けのお肉料理と合わせれば、このワインが仕上げのステーキソースのような役割をして、お互いをより引き立て合ってくれることと思います。
ワイナリー「アント マッケンジー ワインズ」について
ホークス・ベイで生まれ育ったマッケンジー氏は、リンカーン大学でぶどう栽培と醸造学を学んだ後、国内のいくつもの有名ワイナリーで経験と実績を積みました。
現在ではコンサルタントとして、醸造学校の講師など、産業を支えながら新たなつくり手の育成にも従事されています。
20年以上のキャリアの中で幅広い人々に受け入れられ評価されるワインをつくってきたマッケンジー氏ですが、さらに焦点を絞ったこだわりのワインづくりをすべく、2013年に自らが手掛けるワイナリー「アント マッケンジー ワインズ」を設立しました。
土地の個性を最大限に活かし、できる限り人の手を加えない方法で栽培。手摘みで収穫した後、自然酵母で発酵させます。
醸造はフレンチオーク樽とステンレスタンクだけでなく、ドイツの伝統的なフーダー樽(1000リットル入る大型の樽)や、ヨーロッパで古くから使用されてきたテラコッタ(大きな卵型の陶器の壺)を取り入れるなど、NZワインにとって新しい要素を取り入れています。
アント マッケンジーのワインには3つのシリーズがありますが、今回レビューした「セオリー アンド プラクティス」は、その中でも特にホークス・ベイというリージョンの個性を活かしたものになっています。
他に、ホークス・ベイの食文化がスペインに似ているということでスペイン系品種のみの「トーニョ」というシリーズもあり、地元への愛を感じます。
おすすめのペアリング
ケバブ
こんがり焼いた塊肉をナイフでそぎ落とし、スパイシーな味付けで頂くエスニック料理。
合挽き肉にクミンなどのスパイスを練り込んで形成し焼いたものなどもあります。
しっかりとしたお肉の旨味と特徴的な味付けが、このワインのスパイス感とぴったりマッチすること間違いなしです。
名古屋風どて煮
名古屋風のどて煮は、豚のモツを八丁味噌ベースの味付けで煮込んだものです。
このワインをテイスティングした時点では思い浮かびませんでしたが、自宅でたまたま合わせてみたら、驚くほどぴったりでした。
八丁味噌の濃厚な甘みの余韻を、シラーのスパイス感とタンニンがしっかりと包み込んで、とても満足感の高い旨味のハーモニーが生まれます。
一般的にはビールや焼酎と合わせるケースが多いと思いますが、ぜひ一度赤ワイン、特にシラーと合わせてみてください。
この記事の筆者

- NZワインラバーズの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆&編集しています
- SNSフォローよろしくお願いします!
- Twitter ▶ @nzwinelovers
- Instagram ▶ bokumowine
監修

- ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
ボクモ(BOKUMO)
Facebook
Twitter