フェルトン ロード ピノ・ノワール バノックバーン 2017

レビュー日 | 2020.04.30 |
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地域 | セントラル・オタゴ |
ワイナリー | フェルトン ロード(Felton Road) |
品種 | ピノ・ノワール |
収穫年 | 2017 |
香り | ダークチェリー、カシス、なめし皮、スミレ、バニラ、カカオ、タバコ |
アルコール | 13.5% |
シーン | 思い出に残したい記念日に |
購入先リンク | ▶楽天市場 |
希望小売価格 | 7,200円(税別) |


岩須
NZワインの最高峰のひとつ。心してかかれ!
ニュージーランドワインの最高峰のひとつとして知られる「フェルトン ロード」。
このワインを飲むときは、自然と背筋が伸びますね。
NZワイン産地の中で最南端に位置するセントラル・オタゴ地方は、世界のワインファンから注目されている生産地。この地を有名にしたワイナリー、それがフェルトン ロードです。
特に、1997年初リリースされ国際的に高い評価を得たピノ・ノワールは、評論家やワインラバーズを魅了し続けてきました。
彼らのピノ・ノワールのワインは1種類だけではなく、産地や畑、さらにその畑のブロックに分けられた、いくつかのシリーズを揃えています。
今回レビューするのは、「バノックバーン」というサブリージョンの名前が入った銘柄「ピノ・ノワール バノックバーン 2017」です。
まず外観を見てみます。
やや黒みがある、濃いルビー色ですね。
ブルゴーニュ地方のピノ・ノワールと比べると濃厚な色合いです。
何も情報のない状態でこの外観を見たら、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローのような品種にも見えますが、ニューワールドのピノ・ノワールの中にはこのように濃い色をしたものも多くみられます。
グラスを傾けてみると、ねっとりとしたワインの涙があります。アルコール度数が高いワインであることの証明ですね。
すなわち、太陽の光をしっかり浴びて育った完熟ぶどうから作られているということがわかります。
実際、この銘柄の名前になっている「バノックバーン」は比較的涼しい気候でありながら、夏の日照時間はとても長い産地です。なだらかな丘の傾斜に植えられたぶどうは、その長い日照の恩恵を十分に得ることができ、じっくり時間をかけて完熟していきます。
これは2015年に訪れたときのバノックバーンの畑の写真。ぶどう一粒一粒に日光があたるようにしっかり除葉されていました。非常に美しかったです!
次に香りを嗅いでみましょう。
素晴らしく良い香り!
ダークチェリーとカシスの強い香りが、ガツンと鼻腔を刺激します。また、なめし革のような動物のニュアンスと、スミレの花の香りも感じます。さらに樽由来のスパイシーな香りも加わり、なんとも複雑な香りになっています。
全体的に強いのは、やはり果実のニュアンスですね。雑味のない、非常にナチュラルな香り。
時間が経ってくると、バニラ、カカオ、タバコのニュアンスも出てきます。
こんないい香りがあっていいんでしょうか。香りだけで酔えるような、幸せな気分に浸れます。
では、いよいよ味わってみましょう。
うーーーん、これは、幸せなワインですね!
世界に通用するピノ・ノワールとはこういうことか、と思い知らされるような気がします。
口に含んですぐの印象は、香りで感じたチェリーやベリーよりもっと複雑な、樹木やスパイス、なめし皮のような動物的ニュアンスなどを強く感じます。それらが熟したチェリーやベリーの味わいと渾然一体となって何度も襲いかかってくるような感じですね。
樽由来のスモーキーな感じもしっかりあります。歯の裏に張り付くような渋みもありますが、非常に心地良く滑らか。
そして、このワインは間違いなく熟成する能力が高いワインです。
経年熟成するに従って、果実、スパイス、動物的なニュアンスの調和がより進むと予測します。
渋みの成分は、経年によって更に滑らかになっていくでしょう。今は小さい砂の粒のように感じるものが、もっとさらさらのパウダーみたいになっていくというイメージです。全体を通して、さらにまとまった香りと味わいになり、複雑さが増すのだろうなと想像できます。
きっと10年経ってもまだ生き生きしているかも。15〜20年寝かせてもよいと思います。その頃には超貴重な1本になっていることでしょう。
おすすめのペアリング
このようにタンニンが豊富で旨味が強いピノ・ノワールというのは、上質なお肉料理に合わせたいですね。
鶏(鴨)、豚、牛、羊。
迷うところですが、濃いめのソースでいただくならば、どのお肉でも調和はとれると思います。
特別な日のディナーに、大切な人と、ちょっとゴージャスなお肉料理とともに楽しみたいワインですね。
ご自宅で開けた場合は2日目、3日目も十分楽しめると思うので、一気に無理して飲むよりは、数日に分けて飲むのも良いと思いますよ。
ワイナリー「フェルトン ロード」について
ワイナリー「フェルトン ロード」の起源は1991年。
ステュアート・エルムズ氏がセントラル・オタゴ地方のバノックバーンに「エルムズ・ヴィンヤード」という畑をおこしたことから始まりました。
その後、醸造家であるブレア・ウォルター氏を招き入れ、1997年にピノ・ノワールを初リリース。そのワインは瞬く間に世界中のワインファンを魅了し、世界最高レベルの評価を得るトップワイナリーになりました。
今では、世界のワインファンが認める有名産地になったセントラル・オタゴ地方ですが、フェルトン ロードこそがピノ・ノワールでこの地方に世界中の目を惹きつけたパイオニアです。
ブルゴーニュにならったブランドづくり
非常にシンプルなデザインのラベルに大きく書かれているのは、
- ワイナリー名:フェルトン ロード
- 品種:ピノ・ノワール
- リージョン(産地):セントラル・オタゴ
- ヴィンテージ(収穫年):2017
そしてもうひとつ注目していただきたいのが、
- Bannockburn(バノックバーン)
という、更に細かい産地(サブリージョン)の表記。
冒頭でも触れましたが、フェルトン ロードのワインは“どの畑のぶどうを使っているか”によって、ワインのシリーズが分けられています。
これはつまり「同じ年」の「同じ品種」でも、「畑の違い」でいくつもの種類をリリースしているということです。
なぜなら、同じ産地でも畑ごとに違う土壌の個性があり、その個性の違いによってぶどうの出来、ワインの香りや味わいにも、違いが出るからです。
そして収穫される畑が限定されるほど、生産本数が限られるので「レアなワイン」となり、価格も上がることが多くなります。これは本場フランス、ブルゴーニュ地方で伝統的に行われてきたブランディングです。
現在、フェルトン ロードのピノ・ノワールには、以下のシリーズがあります。
【ブロックシリーズ】
自社畑「エルムズ・ヴィンヤード」内の特定の単一区画(ブロック3、ブロック5)で採れたぶどうのみを使用しているシリーズ。
【コーニッシュ・ポイント】
自社畑「コーニッシュ・ポイント・ヴィンヤード」で採れたぶどうのみを使用しているシリーズ。
【カルヴァート】
「カルヴァート・ヴィンヤード」で採れたぶどうのみを使用しているシリーズ。
【バノックバーン】
バノックバーンにある4つの畑「エルムズ・ヴィンヤード」「カルヴァート・ヴィンヤード」「コーニッシュ・ポイント・ヴィンヤード」「マクミュアー・ヴィンヤード」のぶどうをブレンドして使用しているシリーズ。
今回レビューしたバノックバーンシリーズは、フェルトン ロードの中では比較的お求めやすい価格になっています。
とは言っても、定価7,200円ですが…(汗)
「NZ最高峰フェルトン ロードのワインを思い切って買ってみよう!」という方には、エントリーモデルとしておすすめです。
選び抜かれたぶどうを使い、素晴らしい技術をもって醸造された、高品質なワインを是非楽しんでみてください!
NZの「グラヴィティ・フローシステム」の第一人者
自然の力を重要視したフェルトン ロードでは、すべての畑はバイオダイナミック農法により育成、より自然な醸造アプローチによってワインづくりをしています。
中でも注目したいのは「グラヴィティ・フローシステム」を採用していること。
これは、収穫したぶどうやワインを醸造する過程において、機械を使わずできるだけ自然の重力を利用するという手法です。
たとえば、ぶどうから絞られた果汁を醸造タンクに移すとき、そのタンクが足もとよりも低い位置にあれば、液体は重力によって自然に下へ移動していきます。こうすることで、ポンプなどの機械を使わなくても移動が可能になるというわけです。
近年、世界中の先進的なワイナリーで採用されていますが、フェルトン ロードはNZの中でも早くからこのシステムを利用し、より自然そのままの、土地の個性を活かしたワインづくりを目指しています。
この記事の筆者

- NZワインラバーズの編集部です。ソムリエ岩須の監修の元、ニュージーランドやワインについての情報を執筆しています。
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監修

- ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
ボクモ(BOKUMO)
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