春の自信過剰

 

桜の花が咲くと、今年も春が来たなあと、みんなが思うと思います。僕の場合は、その前に、毎年「もうすぐ春が来るよ」のお知らせがあります。

それは、転勤の挨拶。「名古屋を離れることになりました」とお客さまが報告に来てくださるのが、毎年3月の風物詩です。カウンターで、「実はね」と切り出されると、「あら、そうきたかあ」となる。そこで初めて、僕は春という季節をはっきり認識します。

挨拶が終わって、桜が咲いて、桜が散り、緑の葉っぱが生い茂る。

この一連の流れがワンセットであって、春が本当にやってきたんだ、と僕はしみじみ感じます。

今年は、コロナ禍にもかかわらず、二人の方が転勤の挨拶に来てくださいました。ありがたいことです。奇しくも二人とも同じ日にいらっしゃって、さらに偶然にも二人とも「コロナがなければ、去年異動しているはずだったけど、1年のびてこのタイミングになった」とのことでした。

一人は名古屋支社から東京本社へと戻り、もう一人は、以前からの希望が叶ってシカゴへの転勤とのこと。

もちろん、すこし寂しさは感じます。が、僕の場合、それよりも、いってらっしゃい、いつかまたここで会いましょうという、わりと晴れやかな気持ちが上回ります。

これは、中学の卒業式で気づいたことなんですが、僕は、みんなが別れを惜しんで泣いていたのを見て、あれ?僕はそれほど悲しくないぞ、と思っていました。離れたって、また会おうという気持ちがあれば会えるのに、なんでそんなに悲しいの?という謎の自信を持っていました。

あれからだいぶたった今、名古屋を去る常連さんの背中を見送るときにも、いってらっしゃい、きっとまた会えますね、という謎の自信が引き続きあります。

実際、「今日は名古屋に出張だから、久々に来たよ」なんていう、とてもありがたい元常連さんもいます。そうなると、ほら!会えた!やっぱりね!という実績になっちゃいます。

根拠のない自信に実績がともなっちゃっているので、僕は年々、自信過剰になっている気がします。この春でいったんお別れだけど、また会ったときに話せるネタがいっぱい貯まるからいいじゃん、くらいに思っちゃっています。

さらに、そうやって久々にボクモに来てくださった方から「この店に通いだしてから、ワインが好きになって、転勤してもワイン飲んでるよ。」なんて言われることもあって、もう、たまりません。そりゃあね、予定になかったすごくいいワイン、グラスで出しちゃいますよ、大盛でね。

この情勢なので、この春、挨拶できずに新しい環境に行かれる人もいると思います。でも、大丈夫。なあに、また会えますって。会いたいと強く思えば、きっと会える。僕はここで頑張るから、あなたも新天地で頑張って。また話しましょう。

今週のワインとおつまみ

PAPER ROAD PADDY BORTHWICK PINOT NOIR 2017 WAIRARAPA

ペーパーロード パディ・ボースウィック ピノ・ノワール2017 ワイララパ

PAPER ROAD PADDY BORTHWICK PINOT NOIR 2017 WAIRARAPA

ニュージーランドは、ピノ・ノワールの名産地がいくつもありますが、その中でも本場ブルゴーニュにかなり近い栽培条件があると言われているのが、ワイララパ。

このワインも、たしかにブルゴーニュのピノっぽい、華やか&やさしい香りと味わいです。とてもきれいな果実味があって、おもわずにやけます。こういうの大好き。昔は、ガツンとした味わいが好きでしたが、今は、体に沁みるような、やさしくてフルーツ感のあるワインがいいなと思います。やさしくされたい年頃なのかな。

あわせたのは、パエリアです。名古屋の「地中海バル el jardin(エルアルディン)」さんが、簡単にパエリアを作ることができるレトルトのキットを売り出したと知り、これはキャンプに持って行くのにいいかも、と思ってポチりました。

黄金のパエリア

ただ、届いてから、先月のソロキャンプで準備不足のせいでえらい目に遭ったことを思いだし、これは予行練習しておかねばいかんと思って、自宅キッチンで試作をやってみることにしました。

黄金のパエリア

結果、うまく行きました。とっても楽ちん。子どもたちも美味しいと言ってぺろりと平らげました。よし、次は本番。キャンプに持って行こう。

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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