点からはじまるミラクル

ソムリエブログ

子どもの頃、僕は「点つなぎ」が好きでした。

1番の点から2番の点、2番の点から3番の点へと順番に線をつないでいくと、ライオンとかトランペットとかの絵になる、あれです。

点つなぎ

簡単なものは最初から完成図の予想がつくのですが、難しいものになると予想がつきません。

線が増えると徐々に図柄が姿を現し、ある線を書いたところで、あ、これはもしかして、となり、さらに進めると、やっぱりそうだ!となる。

わかってしまった後は、やや消化試合気味になっちゃうけれど、完成させたいから最後までやる。

で、「33番から34番の線を引いたときに、ロケットだってわかったんだよね」みたいに、終わったあと、判明の分岐点を振り返ったりすると、なお楽しい。

最近、ふとしたときに、「人生も、点と線で成り立っているなあ」と感じることがあります。

僕たちはたいがいのことを、ある日の出来事(点)と、ある日の出来事(点)を、線でつなげて、それを文脈として解釈しているように思います。


僕の店「ボクモ」が開店したのは、2009年の7月。

オープン当日は、アルバイトスタッフに、近隣の駅でチラシを配ってもらいました。

初日のことって、緊張とバタバタでほとんど記憶がないのですが、「さっき駅でこのチラシもらいました」と言って来てくださった方がいたことは、覚えています。とても嬉しかったです。

数年後、カウンターにひとりでやってきたお客様がいました。

この方は、お連れの男性と二人でテーブル席によくいらっしゃっている方でした。

「今日はお一人なんですね?」

と僕が言うと、

「はい、ずっと同僚といっしょに来ていたんですが、たまにはひとりで飲みたいなと思って。」

そう言って、少し緊張した面持ちでワインをお飲みになりました。

僕が、

「ところで、この店に来るようになったきっかけって、なんですか?」

と尋ねると、その方は嬉しそうに言いました。

「実は僕、開店初日に、アルバイトの方にチラシをもらって、来たんですよ。普段はこのへんは来ないんですけど、たまたまあの日、こっち方面で研修があって、チラシを受け取ったので、研修終わりに寄ったんです。」

「ホントですか!嬉しいです!・・・あ、でも、正直言うと、僕、初日のことあんまり覚えてないんです、ごめんなさい。」

「いえいえ、そりゃ覚えてないですよね。でも、僕、オープン初日のこの店を知ってるんで、それがちょっとした自慢なんですよ。」

たまたまあの日、矢場町付近で研修があり、たまたま配っていたチラシを受け取り、それ以来、友人といっしょに来るようになり、そして数年後、ひとりで来るようになった。

1番の点から、2番へ、3番へと線がつながって、その男性は、カウンターの常連さんとなった。

その後その方は、店にひとりで来ていた女性と仲良くなり、付き合いだしてからは、デートで来るようになりました。

そして先日、なんと、その女性と結婚するという報告と、式への招待状をいただきました。

点は、思わぬ方へと線を運んで、最初は予想しなかった絵の形を作ります。

これからは、また新しい点が、新しい形をつくっていくのだろうと思います。

昔遊んだ「点つなぎ」とは違って、完成図がどうなるのかはわかりません。

ただ、ここまでの「ひとまずの完成図」を見て、点を振り返ることはできます。

あそこがターニングポイントだったね。

そう振り返って、懐かしむことができる。それは、とても楽しいことです。

さて、もうすぐ僕は、「ボクモワイン」というワインショップをオープンします。また、点が1番からスタートします。


先日、自分の店で仕入れるワインの参考に、と思って、10年以上前から行っている近所のワインショップに行きました。地下のセラーには、数々のお宝ワインが眠っています。

僕のあとから、僕より年上のご夫婦が階段を下りてきて、仲よさげにお話しされています。

「ここ、ずいぶん種類が多いわね。ニュージーランドワイン、どこにあるのかしらね。」

「うーん、ちょっとわからないな。」

あれ?このご夫妻、ニュージーランドワインを探してる!?

この店は、地下のセラーには店員さんがいません。

僕は思わず声をかけてしまいました。

「あの、ニュージーランドなら、このへんにありますよ。」

「あ、そうですか、ありがとうございます。ここはプロも来るくらい品揃えがいいって聞いて来たんだけど、ちょっと私たちには、何を選んだら良いかわかんなくて。」

「そうなんですね。僕、ニュージーランドワインなら、少し説明できますけど・・・」

と、嬉しくなってしまって、つい出しゃばってしまいました。

聞けば、ご夫妻でニュージーランドを旅行したとき、ワイナリー見学に行って、そこがとても素晴らしかったと。併設レストランで飲んだワインがとても美味しかったと。

だから、またあのときみたいなニュージーランドワイン、飲みたいね、と、探しにいらっしゃったそうで。

なんたる偶然。

僕なりのお薦めのワインと、僕がNZワインが飲める飲食店をやっていること、今度、NZワイン専門ショップをやることを伝えました。

「コロナ休業明けたら、お店に行きますね。ワインショップも楽しみね。」

ご夫妻は、僕がお薦めしたワインを持って、地上へと戻られました。

ふと我に返り、余所の店で自分の店の宣伝をするのは、マナー違反だなよなあ、とちょっと反省。で、違反ごめんなさいの気持ちで、いつもより多めにワインを買いました。

それにしても、この点は、印象に残る点だぞ。もし線になるとしたら、今度は絶対に覚えている、ぴっかぴかの1番の点になるなあ。

さあ、これから、どんな点から、どんな線が結ばれてゆくのかな。

完成図は、想像しないでおこう。きっと、想像したって、それとは違うものになるだろうから。

NZワインショップ「ボクモワイン」、もうすぐスタートです!(5月中にと思っていましたが、6月になりそうです、ごめんちゃい)。

今週のワインとおつまみ

TE KAIRANGA
TK
PINOT NOIR 2018

テ・カイランガ
TK
ピノ・ノワール 2018

TKピノ・ノワール

先ほどのワインショップで買ったピノ・ノワール

このワインがつくられているマーティンボロは、ブルゴーニュと気候や土壌の条件が似ていると言われ、ピノがうまいこと育つ産地として知られます。ただし、エリアはとても小さい。ワイナリーの数もそれほど多くない。

このテ・カイランガは小さなマーティンボロの中でいちばん大きなワイナリー。マスター・オブ・ワインが醸造に関わり、クオリティの高いワインを生み出しています。

マオリ語翻訳ツールに入れてみたら、ワイナリー名の「TE KAIRANGA」は「クリエイター」と出ました。へえ。かっこいい名前ですねえ。

開栓直後は、ちょっと固い印象で、フィニッシュのほろ苦さが目立つ感じ。あれれ?スリムな味わいのピノかな?と思ったのです、空気に触れさせると、あら不思議。風味が良くなり、味わいも丸みを帯びてきます。

ぐるんぐるんスワリングして飲んだら、ベリーのほんのり甘い感じと土っぽさ、ほろ苦さがまるくまとまります。

さあ、料理。こういう、ちょっとしっかりめの味のピノには、お肉。しかも醬油の旨み、やや脂っこさも欲しいな、ということで・・・

チャプチェ

作ってみたのは、チャプチェ。

野菜と豚肉たっぷりで、唐辛子の辛さは控えめにしてみました。結果、良好!

ピノ・ノワールに甘辛いチャプチェ、非常に良いよ!

この記事の筆者

NZワインラバーズ編集部
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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当サイト「ニュージーランドワインラバーズ」は一般社団法人日本ソムリエ協会認定ソムリエで、飲食店「ボクモ」のオーナー岩須直紀が全記事を監修、一部執筆しているNZワインの専門サイトです。


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