ニュージーランドワイン大好きなソムリエが今年飲んで感動したワイン3選

最初は感動したことも それが日常になると、感動できなくなる。 ありがたみがなくなる。

それが人間の習性だと思います。

なんて素敵な女性なんだと思ったはずなのに 日常になってしまうと、なぜか鬼軍曹に感じる(笑)

ソムリエは日常的にワインを飲んでいるから、 美味しいワインを飲んだときの感動が薄れてゆくんじゃないか。 そう言われたことがあります。

たしかに、ワインを飲み始めた頃に感じた「こんな世界があったのか」という 初体験の感動はさすがに少なくなってきました。

が、たくさんの種類を飲んでいるからこそ、わかることも多い。

「キミ、まわりとは違う輝きを放っているね。まるで米津玄師だね。」 とか、 「おいおい、その値段でよくぞここまで表現できたな!カメラを止めるなかよ!」 とか。

ある程度俯瞰する能力が備わると、また感動の仕方が変わってくるのです。

てなことで、年末ということもありまして ニュージーランドワインを年間100本以上飲んでいる私が 今年感動したワインを3本、ここに記してみたいと思います。

王道部門

これぞニュージーランド、と言えるような、NZワインの特徴をはっきり感じることができ、なおかつその中でも凝縮感やバランス感が秀でていると感じたもの。

Framingham Sauvignon Blanc 2018 フラミンガム・ソーヴィニヨンブラン 2018 生産地:マールボロ 品種:ソーヴィニヨンブラン

毎年参加しているニュージーランドワイン試飲・商談会で今年出会った1本。 ワインの世界には「マールボロのソーヴィニヨンブラン(SB)の味と言えばこれ」という典型的な味わいが存在するのですが(ジューシー感が強くてグレープフルーツ、パッションフルーツ、ハーブの味)、見事にそのど真ん中を行くスタイルだと思いました。とんでもなく味が詰まっていて、フルーティーさが全面に出ています。ひとくち飲んで、ああ美味しい。そしてその美味しさがかなり長続きする。

ちなみに、これを選んだ理由は、NZワイン界のビッグネームである評論家ボブ・キャンベルが発表しているTop Wineries of New Zealand 2019でこのワイナリーが1位に選ばれたことも思いっきり影響しています。そんなスゴい人が認めたワイナリーならば一度飲んでみようと。そしたら本当にすごかった、と。ま、権威に弱い僕なのです。だはは。実際はリースリングがめちゃくちゃ評価されているワイナリーなんですが、僕はSBが気に入りました。

ヴィンテージが違いますが、Amazonで扱いがあったのでリンク貼っておきます。

→ [フラミンガム ソーヴィニヨン・ブラン 2017 白ワイン 辛口 ニュージーランド 750ml ]

異彩部門

ニュージーランドワインといえば、だいたいこんな範囲ね、みたいな味わいのゾーンのがあるんですが、それにとらわれない個性派。優等生じゃないワイン。ボカロ出身だから他と違う個性をもつ米津的な。

Pyramid Valley Vineyards The Body Electric Sparkling Riesling 2010 ピラミッド・ヴァレー・ヴィンヤード ザ・ボディ・エレクトリック スパークリング・リースリング2010 生産地:マールボロ 品種:リースリング

今では入手困難な1本。手に入らないワインを紹介する意味がどこまであるかはわかりませんが、まあ、本当にこの味に感動したのだからしょうがない。 とあるワインバーで出会い、めっちゃ美味しい!!と絶叫したら「そんなに好きなら1本どう?」と、在庫を1本譲っていただきました。持つべきものは優しい先輩。ありがたや。

味はたいへんナチュラルです。ニューワールドのリースリングにありがちな果実の厚みはありません。柔らかい酸味とほのかな甘みがまーるく調和していて、ほんの少しのぴりぴり感がここちよい。このマイルドさは、9年熟成したせいからか。 純朴な美少女が大人になったけど、ほとんどお化粧はしていない。田舎のべっぴんさん。そんなイメージです。

自分で仕入れたワインじゃなくて、いただいたものなので詳しいワインの資料はなし。なので、ちょっと調べてみました。 やや専門的な話になりますが、残糖7g/lで瓶詰めしたところ、酵母が活動している状態だったため瓶内で二次発酵が起き、残糖3.5g/lの発泡ワインになったのをそのまま無清澄・無濾過で出荷したものらしい。 (輸入元がもう扱っていないので、公式情報ではないのですが)。

作り手は、ブルゴーニュやアルザスでナチュラルなワインづくりを学んだ方みたい。どうりで手作り感があるわけだ。ただし、作り手の本拠地はカンタベリーで、このワインはマールボロで買ったぶどうで作っているとのこと。栽培も醸造もその土地を反映したものにこだわるガチガチ系じゃないところは、ニューワールドっぽい。好きなやり方で作ってますというメッセージを感じます。 こういう自然志向のワインが好きなワインファンも増えているので、これからもっと注目が集まるかも。

コスパ部門

低予算なのにめちゃオモロな「カメラを止めるな!」ばりに、お安いのにめちゃ旨いヤツ。

Villa Maria Private Bin Merlot & Cabernet Sauvignon 2018 ヴィラ マリア プライベート・ビン メルロー&カベルネ・ソーヴィニヨン 2018 生産地:ホークスベイ 品種:メルロー & カベルネ・ソーヴィニヨン

ニュージーランドワインの良さをあげればキリがないんですが、ちょっとなあ、というところは「他の国と比べてお値打ち品が少ない」こと。 やっぱり家族経営のワイナリーがほとんどの国なので、少量生産・少量販売。だから価格はやや高めとなるのは致し方ないところ。

しかし、そんな中でもコスパ良しのワインはちゃんとあります。それが、泣く子も黙るNZの大手ワイナリー「ヴィラマリア」のプライベート・ビン・シリーズ。 ヴィラ マリアは、NZの中でもっと多くの受賞歴があるワイナリーで、北島と南島の両方でそれぞれの土地にあった品種のワインをつくっています。

エントリーのシリーズがこのプライベート・ビンで、中でもこの北島ホークスベイのボルドーブレンドは秀逸です。2019年はボクモでもグラスワインでよく出ました。 適度な濃さと、適度な酸味。適度なカシス感と、適度な樽の香り。適度に肉にあい、適度に余韻もある。そして何より参考小売価格が2000円。他のNZワインではなかなか実現できない適度感です。

楽天のリンクを貼っておきましょうかね。

【楽天市場】ヴィラ マリア プライベート・ビン メルロー&カベルネ・ソーヴィニヨンの通販

番外編

ワインもいいけど、NZ産ジンも面白い

Reid + Ried Barrel Aged Gin リード+リード バレル・エイジド・ジン

2019年は、去年に引き続きクラフト・ジンが話題になった年でした。国産ジンが次々にリリースされ、さまざまな国から個性のあるジンが日本に輸入されるようになりました。もちろんニュージーランド産ジンも続々と入ってきています。

クラフト・ジンは、いろんな植物で香りをつけることが個性となります。つまり、その植物の個性がそのままダイレクトに現れるのが醍醐味。 自然だらけ、オリジナルな植物だらけのニュージーランドから良質なジンが出てくるのは、それこそ自然な流れでしょう。

このジンは、カワカワ、ホロピト、マヌカ(ハチミツで有名ですね)というNZらしいボタニカルを使っています。香りは「カレー」のようなカルダモンがばっと広がり、その中に複雑な植物のフレイバーが入り混ざります。

そして、作り手がワインの醸造家ということもあり、3ヶ月ピノノワールの樽に入れてさらなる複雑味を追求しているとのこと。おもしろ!

ということで、ワインファンも一度ロックかソーダ割りでその独特の味わいを試してほしいと思います。 ただ、問題は値段がちょっと高い(5000円以上する)。 気軽に1杯試すなら、ボクモに置いてありますんでよかったら飲んでちょうだい(結局宣伝すまぬ)。


てな感じで、来年もワインが飲めるありがたみを忘れずに、 さらに美味しい&楽しいニュージーランドワインを探求していきたいと思います。

どうぞよろしく!

この記事の筆者

岩須
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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