逆襲の栄

ソムリエブログ

「ボクモワイン」と「ボクモ」の拠点は、愛知県名古屋市の栄(さかえ)にあります。

今日はその栄の話。

名古屋にゆかりのない皆さんにとって、栄と言われてもあまりイメージが湧かないかもしれないですが、端的に言うと、栄は名古屋いちばんの繁華街です。

デパートがいくつかあって、飲食店がたくさんあって、長い帯状の公園があって、真ん中にテレビ塔がある。そんな町。

中学の頃は、栄は僕にとっては「未知の大都会」でした。

ある日、お洒落好きな友達に「いい店があるから名古屋に服を買いに行こうよ」と誘われました。僕は「うわー、ついに俺も栄デビューか」とめちゃくちゃドキドキしたのですが、赤い名鉄に揺られ、着いた場所は、栄じゃなくて、名古屋駅の地下街エスカでした。

そう、愛知の田舎町のスポーツ刈り男子にとって、名古屋駅、通称:名駅(メイエキじゃなくて、メーエキと読みます)が、ギリギリ許される名古屋でした。栄なんて、もう、上流階級の人しかいない異国。パスポートなしでは足を踏み入れることができないと思ってました(さすがに言い過ぎ)。

その点、名駅のエスカはいい。その隣の生活倉庫もいい。入りやすくて親しみやすい。僕らの味方ジャスコやユニーに通じる、洗練されきってなさが、実にちょうどよい。名駅界隈なら安心。そんな感覚がありました。今思うとだいぶ可愛いですな。

(たぶん、埼玉の人にとっての池袋が、愛知・岐阜・三重の郊外の人にとっての名駅なのかな。)

僕が栄にはじめて足を踏み入れたのは、大学に入ってからです。

名駅からも栄からも近い円頓寺商店街で一人暮らしをはじめてから、自転車で栄をうろうろするようになり、一気に都会の人の仲間入りをした気分になりました。

当時、栄のテレビ塔界隈は、夜はだいぶ危険なエリアで、普通に歩いているだけで、怪しい外国人が近づいてきて「ナニホシイ、ナンデモアルヨ」とよく声をかけられました。

そんな「危ないところに来ちゃった感」も、田舎者の僕にとってはめちゃくちゃ新鮮でした。

それから、栄のすぐ近くのラジオ局で仕事をするようになり、栄の端っこの5丁目で店をはじめて今に至ります。

エスカではじめてジーパンを買ったあのスポーツ刈りの少年は、今じゃ未知の大都会で、未知の酒ニュージーランドワインなんぞを売っている。時は流れたなあ。

さて、その栄。

実は、ここ最近、元気がなかったのです。

理由は、二駅隣のライバル・名駅の異常な盛り上がりがあったから。もともと名駅は、僕ら田舎者に優しいターミタル駅。先述のとおり、ややいなたいイメージが強い場所でしたが、2000年のJRセントラルタワーズ開業を皮切りに、ミッドランドスクエア、大名古屋ビルヂング、グローバルゲート、JRゲートタワー、JPタワーと、大型ビルが次々に開業。大変革を遂げました。

長らく名古屋の中心地と言えば栄だったのですが、この10年くらいで一気にオフィスと店舗が名駅に集中し、今では名駅が中心地の座を奪い取った格好になっています。

なので、10年以上栄で店をやっている人間なら誰でも、「名駅にお客さんが流れてしまった」と感じています。

コロナが始まる前の話ですが、名駅3丁目なんて、飲食店は平日でも満席、行列が普通でした。金曜日はもう、フェスです。夜通しとんでもない盛り上がりになっていました。

結果、栄に残ったのは、「第2の繁華街くらいがちょうどよい」と思う人たちです。「名駅の騒がしすぎる感じは嫌」「チェーン店じゃなくて個人店がいい」という志向のお客さんが、栄(そして、その周辺の伏見や新栄、あるいは今池など)を選択していると思います。

ちなみに、僕ら栄組にとって、流れて困ったのは、お客さんだけではなく、アルバイトスタッフもです。

名駅にはどんどん新しい店ができ、高い時給で募集をかけまくる。ターミナル駅ですから、アクセスは抜群に良いし、ニューオープン&高時給の店にはスタッフは集まりやすい。これまで栄で働いていた人たちが、名駅に次々に鞍替えしていきました。

幸いにしてボクモは、良縁に恵まれて、優秀なアルバイトスタッフが途切れることなく働いてくれています。とてもラッキーだと思います。が、他の店のオーナーさんと話すと、やっぱり栄は人のやり繰りがけっこう難しいと聞きます。

そこへきてコロナ。

栄の知り合いの店で、残念ながら閉店を選択したところもあります。でもなんとか耐え忍ぼうと頑張ってるところも多い。うちもなんとか耐えてます。

まん防が明けて、今は、少しずつお客さんが戻っている感じもありますが、まだまだ本調子には遠いというのが正直なところです。これから先、どうなるか、みんな不安だらけだろうなあと思いますが、僕は、ひとつポジティブになれる材料を持っています。

それは、「栄、再開発で名駅に逆襲」の計画です。

まず、2020年、久屋大通公園の北エリアが「Hisaya-odori Park」として、めちゃくちゃ綺麗にリニューアルされました。これは相当大きい。うっそうとした森のようだった公園が、一気に開けた明るい場所になりました。

そして、栄のシンボル的存在だった中日ビルが、今、建て替え工事中で、2024年に開業予定(実はこないだテナントに来ないかと誘われちゃった)。

ずっと空き地になっていた三越の北向かいの「栄広場」の再開発も決まり、地上41階の高層ビルが建つことが決定。2026年に完成するようです。

さらに、三越も松坂屋も建て替えの計画があるようなので、ここから、一気に栄の町に新しい建物が増えていくのは間違いないと思います。

そして、これらの新しいビルを繋ぐのが久屋大通公園。栄のいいところは、公園とビル群が繋がっているところ。南北に広い異なるゾーンを、歩いて移動できます。栄は歩いて楽しい町、なんです。

公園の南エリアは、コロナ前からお祭り会場として欠かせない場所になっていましたが、今後はさらにその機能を充実させるようです。まだ有識者の懇談会の段階なのですが、公開されている資料によると「国内外からの来訪者を惹きつけられるような魅力的な機能を持たせる」そう。おそらく今後はイベントのジャンルの幅がもっと広くなりそうです。このエリアに近いボクモとしては、ワインイベントとか、NZイベントとかも開催されたらいいなあ、なんて期待しちゃいます。

とまあ、発表されているだけでも、栄がまた元気になる要素満載なのです。

いやあ、待ってましたよ、このときを。苦節10年。名駅の攻勢に耐え忍んだ栄、ここから挽回のときです。

そうそう、アフターコロナ、いやウィズコロナは、おそらく「混んでいることが嫌われる時代」になると思います。

当分の間、人が喋るときの飛沫を誰もが気にしちゃうと思うし、知らない人が近い空間にいて喋っているだけでも嫌だな、と感じる人もそんなにすぐには減らないと思います。

激混みの酒場よりも、外がいい。公園でやってるイベントに行って屋台で飲み食いした方がいい、と思う人もしばらくは多いんじゃないかと思います。

とすれば、栄地区の公園イベント、たぶん盛り上がります。公園と繁華街を行ったり来たりできる栄の町って、ウィズコロナに向いている町って言えるかも知れないなと思います。

ちなみに、ボクモは、公園から歩いてすぐのひっそりした栄5丁目にあります。リニューアルして一ヶ月やってみて、今の内装だと、満席になっても「激混み状態」にはならないことがわかりました。例えば、昼〜夕方、公園で遊んでから、日が落ちたら落ち着いてNZワインでも、みたいな使い方、どうかなあ。できたら、ゆっくり飲める酒場もウィズコロナの時代のレパートリーに入れていいただけるとありがたいなと思います。

これからはじまる、栄の逆襲。

人の流れはどうなるのか。ライバル名駅から流れがまた栄に来るのか。しっかり見届けるために、一日でも長く、この栄で店を続けたいと思います。

今週のペアリング

名古屋と言えば、こんなのをいただきました。

元祖鯱もなか本店の「鯱もなか」。

フリーライターの大竹敏之さんが、リニューアルのお祝いで持って来てくださったのがこれです。

鯱もなか

コロナで大打撃を受けたそうですが、4代目の若い社長さんのアイデアで逆襲をかけている、と聞きました。

味は実に素朴。期待を裏切らない、懐かしのザ・最中です。

こういう和菓子、もちろんお抹茶がベストパートナーですが、こんなワインにもあいます。

サイフリード スイート アグネス リースリング (375ml)2016

サイフリード スイート アグネス リースリング 2016

甘いお菓子×甘いデザートワインのペア、なかなか良いです。特にあんこは、豆の味がぐんと引き立って、別のものを食べている印象に変わります。おもしろ国際結婚、お試しあれ。

この記事の筆者

NZワインラバーズ編集部
岩須 直紀
ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
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当サイト「ニュージーランドワインラバーズ」は一般社団法人日本ソムリエ協会認定ソムリエで、飲食店「ボクモ」のオーナー岩須直紀が全記事を監修、一部執筆しているNZワインの専門サイトです。


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