Zoom飲み会をなぜやるか。そしてそのやり方。

ソムリエブログ

僕が飲食店を始める前、ある老舗のうどん屋のご主人から言われたことがあります。

「岩須さん、カウンターの飲食店をやるとね、世界が見えますよ。」

正直、その時は、そのご主人の真意はわからなかったです。僕は当時、ラジオの音楽番組のディレクターをやってました。音楽業界の人やミュージシャンには頻繁に会っていて、それなりに「人とコミュニケーションをとる仕事をしている」という感覚はありました。恥ずかしい話、コミュニケーションのスキルがある方だと思っていました。しかし、店をはじめるとぜんぜん違った。うぬぼれにもほどがあるぜ、当時の自分。ダサすぎて落ち込みます。

店を始めたのは2009年。テーブルがメインで、カウンターは4席しかない店ですが、それでもほぼ毎日途切れることなくカウンターにひとり飲みの方がいらっしゃいました。会社員、公務員、経営者、アルバイター、主婦、学生。来てくださる方の職業、職種は当然バラバラです。

うーむ。何を話そうかな。そうだ、とっかかりは音楽がいい、と、最初のうちは音楽の話ばかりしていました。前職でそれなりに音楽を体験してきたので、どんな音楽が好きですか?へえ、あのバンドっていいですよね、みたいな話は普通にできるわけです。そこに、実はあのバンドってこうなんですよっていう、いわゆるギョーカイトークをちょっと挟む。すると、「へえ」とか「すごい」って反応してくれる。当時はこれを「話が弾んでいる」と思ってました。アホです。

でも、そんなことをしているうちに、だんだん気づいてきます。

あれ?もう、ネタがないぞ??音楽の話が終わったら、しーんとなる。まずい。確かこの人は、水道設備の会社だ。でも、その水道のことも設備のこともぜんぜん知らない。この人は今日、出張先で取引先に頭下げて、疲れて、癒やしを求めて、愚痴のひとつでもこぼしに来ている。なのに、「なるほど」しか言えない。「なるほど10連発」とかしてしまう。ダサい。

世の中には他にどんな仕事があって、みんながどんな気持ちで、どんな働き方をしているのか、完膚なきまでに無知だったのです。

そして、今さらながら気づくのです。自分の得意ジャンルのことばかり語るって、それはスキルでもなんでもない。ひとりよがりの勘違い。相手のことをちゃんと見て、そのひとりひとりに興味を持たないと、心って通じない。やばい。相手のことをもっと知らなきゃ。いや、知りたい。

そこでうどん屋のご主人を思い出します。

「岩須さん、カウンターの飲食店をやるとね、世界が見えますよ。」

そういうことか。毎日、色んなジャンルの人と会って話すことで、その人たちのバックグラウンドを知りたいと思うようになる。そのバックグラウンドをつなぎ合わせれば、それは世界だ。

なるほど。自分にしか興味がなく、自分の手元ばかり見ていると、世界は見えない。カウンターにいて、席に座る人たちの向こうを見ようという気持ちが出てきたら、世界は見えてくる。きっとそうだ。(うどん屋のご主人はそんな意味で言ってないかもしれんけど。)

そういう意識を持ってからは、すこしお客さんとの会話も変わってきました。世の中は知らないことで出来ている。他の人に興味を持つことで、その知らないことがちょっとわかって楽しいね。得したね。なんとなく、そんな雰囲気が共有できるカウンターになってきました。まだまだ未熟さゆえ、出しゃばりが顔を出しちゃうこともありますが。

そこへ来てコロナです。今のボクモは、お弁当屋さん&ワインショップです。カウンタートークができない。切ない。日に日に世界が狭くなっていく。

というわけで、Zoom飲み会をやるしかないでしょ、となりました。だって世界、見渡したいもんね。つなぎ合わせたいもんね。みんなもそうでしょ?と呼びかけました。もちろん、やるからには参加してくれる方が楽しんでくれないと意味がないので、どうやれば楽しくなるか、けっこう考えました。

結果、4回やって、参加者はのべ45人くらい。参加してくださった方から、あとから「楽しかった」「また誘って」っていうメッセージが届いているので、とりあえずは小さな成功と言っても良いかなと。

そして、Zoom飲み会やるよって声かけたときに、わざわざボクモでお弁当とワインを買って、家に持ち帰って参加してくださった方もいました。ありがたすぎて、ありがたい。そんな変な言葉しか出てこないくらいありがたかったです。

では、ここからは、実際に僕がどのような感じでZoom飲み会をやったのか、そのあたりついてちょっと詳しめに書いてみます。ご覧の皆さんの何かの参考になったらこれ幸い。

告知はFacebookで

TwitterやInstagramも日常的にやっていますが、Zoom飲み会には基本的にそれらは使いませんでした。Facebookは顔と名前が一致する(場合が多い)。

11年やってきて、困った人にカウンターの雰囲気を荒らされてしまう経験を何度かしています。それは勘弁。

主催する側としては「明らかに空気の読めない人にかきまわされない」環境を担保したい。なので、安全策としてとりあえず僕とFacebookで繋がっている面識のある方に絞らせていただきました。

ただ、TwitterやInstagramのみのつながりで、この方なら喜んで参加していただけるだろうなっていう方もいるので、今後はFacebookしばりじゃなくしようと思ってます。

告知するときに気をつけたこと

まずひとつ、「ボクモのカウンターでお話しするような会」と銘打ったことです。カウンターは、基本的にひとりで来て、そこで出会った人と気があえばしゃべる、みたいなイメージ。カウンターの向こう側には僕がいて、話の回し役になる。

そういうイメージを共有することで、自宅から参加するんだけど、ちょっと一歩外に出ている気分になってもらおう、と。カウンターなんだから、初めての人とも話しましょうね、というこちらからのサインです。もしかしたら新しい人間関係が生まれるかも?の期待感もある雰囲気にしたかったのです。

ただ、そんなの関係なく、部屋着&ドすっぴんで参加された女性もいました(それはそれで可愛いかった)。

もうひとつは、テーマ設定をしたこと。

テーマを設定しないと、初対面の人とは盛り上がりづらいと思ったのです。Zoomはひとりが喋っているとき、他の人は黙って聞くシステムです。カウンターで4人座っているときには、2人と2人にわかれて別のテーマの話ができますが、そうはいかない。だから、今日はこれについて話す、というみんなのコンセンサスがあるといい。テーマがあれば、みんなが一応話を持ち寄ります。知らない人同士でも、そのテーマについて質問したり答えたりしているうちに、理解が深まる可能性があります。

実際、「海外の今、日本の今」っていうテーマにしたときは、かなり盛り上がったし、回を重ねることで、前回と比べてどうですか?みたいな話も出来ました。

また「ワイン」をテーマにした会では、僕が普段やってるワインセミナーをショートバージョンしてやったりもして、そのあとそれぞれが飲んでいるワインの紹介などで盛り上がりました。

遠隔であることをフル活用する

11年やってると、店に来たことがあるけれど、今はだいぶ離れたところに暮らしているという人がまあまあ増えます。そういう人と繋がることができるのも、うちみたいな店が主催するZoom飲み会の良いところだと思います。だから、日程を海外の人と繋ぐことを優先して決めました。

僕の場合、まずいちばんお世話になっているクライストチャーチ(NZ)の方と繋ぎたいという気持ちがあったので、まずそのスケジュールをおさえて、それから皆さんに「海外と繋ぎますよ」と呼びかけました。

結果、4回やってみて、僕のいる愛知県以外で繋がったのは、クライストチャーチ(NZ)、オークランド(NZ)、ミシガン州(アメリカ)、ダブリン近郊(アイルランド)、バンコク(タイ)、東京、札幌です。

やはり海外にいる日本人は、日本のことが知りたいし、自分たちの置かれた境遇を共有したい。日本にいる人は、世界はいったいどうなっているのか、世界から見て日本は今どんな立ち位置で、その中の自分はどんな立ち位置か、知りたい。店主催のZoomなら、その思いをつなぐハブになれるということが、よく分かりました。

時間は18:00~21:30にしてみた

メインで繋ぎたいNZと日本の時差は3時間。日本で夕方6時にはじめれば、NZは夜9時。これくらいの設定ならば飲み会としてはまあ良しかなと。でも、アメリカは朝6時、アイルランドは朝10時だったので、当然飲み会じゃなく、モーニングコーヒーでの参加となり、ちょっと申し訳ない感じにはなっちゃいました。そんな中でもいろいろと積極的に話してくださってとてもありがたかったです。

日本での参加者にも、早い時間が得意な人と、遅い時間がいいという人がいます。いろんなニーズに合わせようとすると、当然だらだらやることになります。結果、4回やってすべて時間オーバーになってしまいました。後半になるとタイムスリップするのは、普通の飲み会と同じです。

回し役は大事

さっきも書きましたが、Zoomはひとりが喋ってみんなが聞くというスタイルです。基本的に進行役がいないと成立しません。ましてや、初めましての人が多い場合は、主催者が人と人をつながないと話しづらいです。

発言していない人に話をふることも必要。よく喋ってくれる人を適度にさえぎることも必要ですね。

ある程度ゆるい雰囲気を作る

途中参加、途中退場オッケーにする。30分とか離脱して帰ってくるのもあり。ごはん作りながらもいいし、ちょっとコンビニに買い足しに行くとかもあり。かっちりにしすぎない方が参加ハードルが下がります。でも、ずっと滞在していたら面白い話を聞き逃さないけどねっていう感じ。

ただし、途中参加の人が多いと主催者はちょっとたいへんです。新しい人が加わるたびに、また全員の紹介が必要になる。それをやらないと、新しい人が置いてきぼりになってしまう。あ、そうだ。もしかしたら、チャットで軽い自己紹介を書いてもらうっていうルールを導入したら解決するかも。次はそうしよう。

人数は15人くらいまでが適当

人数が増えすぎると、確実に「待ち時間」が長くなります。自分が喋っていないときは、グラスに手が伸びがち。結果、想定外に酔っ払いがち。これはZoom飲み会をやってる人はみんな実感していることでしょう。ちょうど良いと感じたのは15人くらいまでですね。募集をかけるときには毎回マックス人数を設定した方が良いでしょう。

やってみて

さて、やってみた結果、冒頭に書いたとおり、参加者と「世界を知る」ことを共有できたのか。

答えは、イエス。

メディアやSNSではわからない、リアルなことがわかりました。僕自身たいぶ視野が広がった気がします。視野が広がるときって、楽しさを伴う。「へえ」を重ねると楽しさも重なってくる。そう思いました。

具体的にどんな「へえ」があったのか、まとめておきます。

Zoomで知った世界

ニュージーランドは、ロックダウンへの決断が早かった。女性の39歳の首相の鶴の一声にみんな従って、封じ込めに成功。「バブル」という新しい言葉を使って、「今、いっしょに過ごしてもよい集合単位」を国民に示した。

ミシガン州では、職や住処を失った人の暴動に備えて、かなり早い段階から市民の武装がはじまっている。弾薬や銃が売れている。中国人への差別、また中国人に見えるアジア系全般への差別も普通にある。自動車産業はほとんど止まっている。貯金をしていない人も多いから、このままだととんでもない数の人が家賃を払えずに路頭に迷うことになる。

アイルランドは、首都ダブリンに感染者が一極集中。なぜかというと、産業が豊かではないアイルランドで、ダブリンに外資系企業を誘致するため、税制を優遇する特区にした。グローバル企業が集まったおかげで豊かになったが、海外との行き来が激しい人が多いためにクラスターを生んでしまった。

バンコクの人たちは、比較的警戒心が強く、外出する人は多くない。クーラーがあって人が集まる場所を早めに封鎖したせいか、ある程度封じ込めに成功している。現地駐在の日本人にはそれほど悲壮感はない。

とまあ、こんな感じのZoom飲み会でした。

まとめ

現在、僕は、お弁当営業やワインショップをいつまでやるか、再開の時期をどうするか、スタッフにどう動いてもらうか、取り巻く環境の変化にどう対応するか、そして、目下最大課題のお金問題など、毎日考えていますが、やっぱり答えはすぐには出ません。

そんな中でも、世界を知る、やはりこれも優先順位の上の方に置いておきたいなと思いました。

なぜなら、手元を見ているだけでは、ぜったいに判断を間違える自信があるから。元来、すぐに自分の得意ジャンルのトークに持っていこうとするヤツです。よっぽど注意してないと、重大な経営判断を迫られたとき、そういう視野の狭さが出ちゃうんだろうなと思います。そして、それに対してもう誰も注意なんてしてくれない年になってしまった。

「おい岩須、世界を見なさいよ」

今度は自分で自分にそう言い聞かせないといけないと思っています。

みんなはどうよ?

この記事の筆者

NZワインラバーズ編集部

岩須 直紀
ラジオ番組の構成作家(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。「ボクモ」と「ロックモ」を経営。
ニュージーランドワインが大好きなソムリエ。
毎月ジュンク堂名古屋栄店でワイン講師やってます。
ボクモ(BOKUMO)
ロックモ(ROCKMO)
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