ソムリエ岩須(いわす)のブログ

トップ10に入りました

見事!トップ10に入りました! やったぞ、ついに。母さん、赤飯炊いてくれ。 なにがって、ニュージーランドワインのランキングです。 毎年発表される「輸入ワインの国別ランキング」で、ニュージーランドが第10位に入ったのです。 トップ10という響き、よいです。 ボクモに初来店される方の中で、「ニュージーランドワインなんて飲んだことない」という方の割合は、体感的に8割以上だと感じます。 「ニュージーランドのワインなんて珍しいですよね」と毎日のように言われます。 しかし、これから、そういうときには胸を張って言えます。 「実は、輸入ランキングでトップ10に入ってるので、意外と日本でもファンが多いんですよ!」 このままぐんぐん人気が出てきたらいいな。 そういや、俳優の上野樹里さんや佐野勇斗さんがニュージーランド政府観光局からアンバサダーに任命されたことがニュースになっていました。 それから、テレビ朝日の2時間特番でナスDのニュージーランドの冒険が特集されていましたね。あれはなかなか見応えありました。 そして高畑充希さんの「キリン 生茶」のCM、ロケ地がニュージーランドだって。 そう、近頃、お茶の間にニュージーランドというワードが流れ続けているのだ! そこへ来て、ワインの輸入量トップ10入りの吉報。 もしかしてひょっとすると。 いよいよニュージーランドワインがブレイクするときが来るのかも! そうしたらどうしよう。通販の倉庫を新しく借りねば。ボクモにもお客さんが殺到しちゃう。行列が出来ちゃうわん。 「前は気軽にふらっと行ってカウンターに座れたのにね」なんて常連さんに言われちゃう。 こりゃまいったぞ!母さん赤飯だ! ・・・なんていう話を、昨日カウンターでしていました。 そうしたらカウンター越しにこう言われました。 「でもさあ、もし、ニュージーランドワインがメジャーになっちゃったら、どこでも飲めるようになるってことでしょ?  そしたら、ボクモがやってることの珍しさがなくなっちゃうよ。だから、メジャーになんかならない方がいいんだよ。」 むむむ。 確かにそうかも知れない。 「毎日10種類のニュージーランドワインがグラスで飲める店」、これがレアな体験と思われなくなったら、ボクモの価値は目減りしてしまうかも。 スーパーでニュージーランドワインがたくさん並ぶようになったら、ボクモワインで買う意味がなくなっちゃう。 そうかあ、メジャーになるってのも良し悪しですなあ。...

お祭りが終わって

楽しいお祭りが無事終わりました。 先週末、鶴舞公園でワインのイベント「ZIP-FM SAKURA WINE FESTIVAL」が開催され、そこにニュージーランドワインのブースを出させていただきました。 ワインを搬入した金曜日の朝は土砂降りだったのですが、本番の土曜日と日曜日はしっかり晴れて、イベントは大盛況でした。 参加人数は2日間で4300人。名古屋でもトップクラスの規模のワインイベントになったのではないかと思います。 持っていったニュージーランドワイン7種類の中で、いちばん人気だったのはソーヴィニヨン・ブランのスパークリングでした。次いでほんのり甘みのあるリースリング。 やっぱり屋外だとフルーティーで親しみやすい味わいのものが好まれますね。 「美味しかったからおかわりちょうだい」とリピートしてくださる方もいましたし、7種類全部制覇する猛者も現れました。 ニュージーランドワインの魅力、まずまずアピールすることが出来たんじゃないかと思います。 心配していた体力面ですが、たくさんのワインを運んで注いだものの、なんとか持ちました。撤収を終える頃には、運動不足の僕にはちょうどよいくらいの疲労感に包まれていました。 そして備品を車でボクモに運び、家に帰った後。 なにか、このまま寝るにはちょっと収まらない気分になり、ひとりで近所の焼き鳥屋さんに行きました。 がやがやしたカウンター席は居心地が良く、いい感じに焦げたネギ焼きとささみを食べて一息つきました。そして、2日間を振り返りました。 「あ、このブース、ボクモがやってるんだ。前にお店に行ったことありますよ。」と声をかけてくださった方。嬉しかったな。 「来週お店に行きます!」とすぐにご予約を入れてくれた方も。ありがたいことです。 いつもの常連さんは「ワイン飲みに来たよ〜」。安心したなあ。 「名古屋に来る用事があったんで」と遊びに来てくれた元スタッフ。 「お疲れ様です!」とおにぎりを差し入れてしてくれたシェフ。 「どう?売れてる?」と気にしてくださったZIP-FMの方々。 「いつもブログ長いよ」と突っ込んでくれた、昔からお世話になっている方。 いっしょのブースでワインを注いだディレクター仲間の多田ちゃん。 そして手伝ってくれたボクモスタッフ。運営の皆さん。 色んな顔を思い出し、ああ、いっぺんにたくさんの方との繋がりが感じられたイベントだったなあ、と思いました。 僕の人生は、いつも綱渡り。そして、しばしば綱から落っこちそうになる。 でも、こういう繋がりを持てている実感が、なんというか、元来ぐらぐらの僕の体幹をすこし強くしてくれている気がする。 繋がりのある人たちからの優しい視線が、僕の背筋をしゃんと伸ばしてくれる。だから、よろけてもなんとか綱に戻ることができるんだろう。 そして、こうしてお世話になったラジオ局のワインイベントに出ることができたということ。 それは、30代前半までラジオディレクターとして働いていた時代の自分と、ワインの仕事をやっている今の自分、その二人の自分が、時を超えて繋がったということ。...

準備万端じゃない

ただいま支度をしています。 イベント出店のためです。 以前もお知らせしましたが、いよいよ明日と明後日の2日間、名古屋・鶴舞公園で開催されるワインのお祭り「ZIP-FM SAKURA WINE FESTIVAL」に、ニュージーランドワインのブースを出します。 僕にとってはだいぶ久しぶりのことなので、ちょっと緊張しつつ、あれこれ確認しつつ、段取りを組んでおります。 以前は「青空ワインバー」と称して、野外イベントによく出ていました。たぶん7,8回くらいは出店したんじゃないかな。 色んなミュージシャンをお呼びして、ブースの前で演奏をしていただいたりもしました。あれはホント楽しかった。 歴代のスタッフ、それからボランティアの方にも手伝っていただいて、準備から設営、撤収まで和気あいあいとやっていたなあ。まさに学園祭のノリ。 打ち上げで、心地よい疲労を感じながら飲むワインは格別でした。 その後、コロナ禍で営業スタイルが変わったりして、ここ数年はぱったりとイベント出店は途絶えていましたが、いよいよ今月、再始動です。 これまでの楽しく盛り上がればいいというのとは違い、今回は重要なミッションをひっさげての出店です。 そのミッションとは「名古屋の皆さんにニュージーランドワインの魅力を伝えること」です。 他のブースに日本ワイン、世界のワインがたくさん並ぶ中、ニュージーランド産をいかにアピールできるかが勝負です。 僕らのブースを通りかかった人が「ニュージーランドワイン」を目にする。 「へえ、ワインってニュージーランドでもつくってるんだ」となる。 「お祭りだし、ちょっと変わったものを飲んでみようか」 「なんだこれ、フルーティーで美味しいぞ!」 「今度からニュージーランド産、気にしてみよう!」 この流れをしっかりつくること。 つまり今回は「認知度アップ」が目的です。 そのために気をつけなければいけないのは、在庫切れです。途中で売るものがなくなってしまっては、たくさんの方に美味しさ、驚きを届けることができません。 よって、今回はかなり強気の仕入れをしました。グラスワイン用だけでなく、お持ち帰りのボトルの注文がガンガン入ったとしても、おそらく品切れは起こさないでしょう。 ただ、ずっと心配だったのが天気。今月に入ってから毎日、祈るように予報簿見ていましたが・・・ どうやら我々、日頃の行いが良かったようです! 名古屋の予報、3/30・31の両日とも晴れのち曇り。 予想最高気温、両日とも21℃。ナイスな陽気です。これはきっと、キリッと冷えた白、泡、ロゼがたくさん出るぞ! よしこれで準備万端だ。 と思ったけれど、ちょっと待てよ。何かが足りない。 これまでよくイベント出店していたのは、僕が30代から40代前半だ。数年のブランクの間に変わったことと言えば・・・...

あの店じゃなきゃ

ありがたいことに「ラムバーグ」が売れています。 ボクモの看板メニューと言えば、ながらく「ラムチョップステーキ」でした。 ニュージーランド産のワインとニュージーランド産のラム肉。ボクモにとって、これほど「伝わりやすさ」と「食べあわせて納得」を兼ね備えた組み合わせはないです。 ただ、もうちょっとひねりも欲しい。店ならではの強い独自性を持ったメニューが欲しい。 そう思っていました。 ラムチョップのお肉は、ボクモとまったく同じではないですが、探せば通販で売っています。上手に焼けば美味しく楽しめると思います。 そして、ニュージーランド産のワインは、ボクモワインの通販で買えます。よってそのペアは、やろうと思えばおうちでも楽しめます。 もちろん、焼き加減やソース、ワインのセレクトにはこだわりを持ってやっていますが、まあ、おうちでも近づけることはできるわけです。 そうでなくて「こちゃどうやっても家では難しい」「やっぱりあの店じゃなきゃ」というアイテムが欲しい。 そう思っていました。 自分が店に行くとしたら、やっぱり「この店でしか絶対にできないだろうな」という体験がしたいです。 やっぱりお店には、ちょっとやそっとでは真似できない何かが必要なのです。 そこで考えたのが、ラム肉100%のハンバーグです。 みんな大好きなハンバーグをラム肉でつくる。ソースはバルサミコ酢とたまり醤油のオリジナルソース。さらに、マッシュポテトをのっける。ローズマリーといっしょにバーナーで炙る。どーん、「ラムバーグ&マッシュ」の完成! シェフと何度も打ち合わせと試作を繰り返して、ここまでたどり着きました。手前味噌ですが、まずまずオリジナル感がでているんじゃないかなと思います。 ワインはメルローとカベルネのブレンドがばっちりあいます。ピノよりもメルカベです。 これを去年の11月にメニューに投入したところ、あっという間にラムチョップと並ぶ人気メニューに。 さらに、今月、ロースト林檎をのせて3種類のチーズで仕上げたラムバークの第2弾「チーズ&アップル」も追加して、これまたありがたいことによく出ています。 第1弾が濃いめのメルカベがあうので、次はちょっとやさしめのピノ・ノワールにあわせようと思ったのですが、結果、今回もメルカベにぴたっとあう味となりました。 でも美味しいからいい!シェフ、上手につくってくれてありがとう! 次はピノにあわせるための新メニューを考えるぞ。 そのためには、もっと「この店でしか絶対にできないだろうな」の体験が必要だ。 よし、オリジナルなことをやっているお店に行ってみよう。あ、パクりはしませんよ。あくまで、そのお店ならではの「ひねり方」を参考にしたいのです。 ええ、決してパクりませんとも!

野球とワイン

先日、プロ野球のオープン戦を見にバンテリンドーム ナゴヤに行ってきました。 ふと当日に思い立って行くことにしたので、チケットはほとんど残っておらず、なんとか取れたのはビジターの外野席。ヤクルトファンのビニール傘に囲まれて観戦しました。 面白かったのが、後ろの席の野球が大好きであろう青年。それほど詳しくない友人にずっと解説していました。 友人 「はじめてドームに来たけれど、人工芝ってすごく綺麗だね」 大好き青年 「ああ、今の人工芝は2年前に張り替えた6代目。はじめてツートンカラーを採用したんだよ。綺麗だよねえ。」 おい!ビール吹くじゃないか、詳しすぎるだろう! 選手の情報にもかなり精通している。おそらく毎日スポーツ新聞を熟読しているレベルだ。 「この時期にしては仕上がってるな」とか、「今のゴロのさばき方はちょっと危なかったぞ」とか。 その話を前の席でタダで聞いている僕は、終始ニヤニヤ。もう楽しすぎました。 ラジオ中継やテレビ中継のプロによる解説も良いけれど、客席の達人による解説も、じゅうぶん面白いコンテンツになるなあ。 帰り際、危うくその達人に解説代を払いそうになりました。 ところで、僕には毎回ドームに行くたびに抱く夢があります。それは・・・ 「中日ドラゴンズの優勝」 ではなく(今年はAクラスがいいな、くらいの謙虚な夢はあります)、 「美味しいワインを飲みながらプロ野球の観戦をする」 です。 いや、野球観戦のお供と言えばビールでしょっていうのは、わかってますって。 頑張っている売り子さんに注いでもらうと美味しく感じるし、売ってるおつまみもビールにあうものばかりだし。 でもね、ワインって、そろそろここ名古屋でも「お祭りに似合うお酒」になってきていると思います。 実際、去年のお花見イベントで行われたワインのお祭りにはとんでもない数の人が列をなしてワインを買っていたし、僕が過去に出店した野外イベントでも、ニュージーランドワイン、しっかり売れました。 スポーツ観戦はお祭りです。非日常です。そんな場のお供に昇格しても良いくらいの市民権は得ていると思うんです。 ワインが売れれば、当然おつまみも出る。生ハムとかチーズとか置いたらちゃんと売れると思います。 それに何と言っても良いのは、ビールと違ってトイレが近くならない。 ドームで野球観戦しているとき、相手チームの攻撃になると途端にトイレが混み合います。あれはビールのせいです。 せっかく生で見にきたのに、トイレに行っていたせいで肝心なシーンを見逃したなんて人も多いです。 その点ワインは、トイレ頻度がちょっとましです。 序盤は白。ロゼをはさんで、後半は赤。...

好きなものが同じ

好きなものが同じって、良いですよね。 知らない人同士が隣になって、ひょんなことから「好きなものが同じ」と知る。 そうなると一気にその場が盛り上がる。カウンターでそんな光景をたくさん見ています。 今週カウンターで何回か話題にのぼったのは「あんかけスパ」でした。 うちの店にない食べ物で盛り上がるのってどうかとも思うのですが、まあそれはそれ。他の飲食店の話って、うちみたいな店では定番の話題なので。 あんかけスパと言えば、名古屋のB級グルメの代表格です。が、名古屋に住んでいる人同士だと、あまりあんかけスパにまつわる話ってしないと思います。 好きな人はごく普通に自分の好きな店に通っている。僕もそうです。でも、それは日常的な行為なので、あえて話題にすることもない。自分の家の味噌汁の味を説明する機会がないのと同じかな。 しかし、そんな生活の中にあんかけスパが入っている人の輪の中に、名古屋以外出身の「あんかけスパ未経験の人」が入ったとき、面白い現象が起きます。 「僕、名古屋に引っ越してきてだいぶ経つけど、あんかけスパってまだ食べたことないんですよ。」 「え?それはもったいない。ヨコイくらいは行っておかないと!ミラカン食べておかないと!」 「パスタ・デ・ココとか、普通にうまいですよ。」 「入りやすさで行ったらチャオもいいんじゃない。店もたくさんあるし。」 「チャオと言えば、最近、チャオと名城食品が共同開発した自宅で食べられるあんかけスパセット、スーパーで売ってますよ。なかなか美味しかったです。」 「僕は25年前から通ってる「る・るぽ」のピカタが人生No.1ですね。あれはあんかけスパと言うより、ちゃんとした洋食なんです。」 こんな具合に、名古屋人の日常に潜り込んだ、それぞれの生態があぶり出されるのです。外の人が入ることで、隠されたあんかけライフをさらす機会を得るわけです。 そして、愛する気持ちはいっしょだけれど、その中の細かいこだわりの部分に少しズレがある。こういうのがいちばん盛り上がります。 その日は、あんかけ未体験の方がいたおかげで、みんなが自分のこだわりを話したくなるモードになりました。盛り上がったなあ。 そして思いました。 「る・るぽ」のピカタ、近いうちに食べに行きたいぞ!と。 「ナイフとフォークでお肉を食べる感じがたまらないんです。それから、たまに炒めすぎて麺が焦げているときがあるんですよ。あれに当たるとラッキーです。香ばしくて最高なんですよね。」 行く!絶対に行く! ちなみに、あんかけスパにあうワインは、フルーティー系のピノ・ノワールかサンジョヴェーゼだと思います。 いつか、あんかけスパの店にワインを持ち込んでペアリングのパーティーなんてやってみたいな。

ゼロから1

ゼロから1を作ることができる人を心から尊敬します。 僕はラジオの原稿を書く仕事をやっています。今のレギュラーは月に10本くらいなのですが、そのうちの9本は資料さえ揃えることができれば自動的に書ける原稿です(もちろん切り口などの工夫は必要ですが)。 しかし1本は、資料などまったく役に立たない、何もない状態から物語をつくる必要があるのです。 これが難しい。引き受けてから5年経ちますが、今でも締め切りが近づくたびに引き受けなきゃ良かったと毎回思います。 僕はウソをつくのが下手です。 でも、物語を書くということは、ウソをつかなければいけません。 物語は、最初から最後まで、部品すべてがウソです。そのウソの部品が上手く組み合わさるとマコトになります。 ウソをつき通すのには、精妙なロジックが必要です。つじつま合わせの才能が必要です。 僕にはこれが欠けているんだな、と毎月落ち込みます。 しかし、仕事は仕事。 この仕事がやってきたのは、神様に「好きなことばかりやっていないで、苦手なこともやりなさい」と言われているんだろうな。 確かに、苦手なことを克服することで得られる達成感はあります。 でも、達成にたどり着くまでの、モヤモヤしている時間が非常に長い。物語のゴールが見つかるまでの時間がしんどい。 想像力が豊かな人は、「あ、こんなテーマで書きたい」と思いついたら、ゴールに向けてすらすらウソが出てくるんだろうな。すごいな。もしかしたら作家って、普段から息を吐くようにウソついてるんじゃないの。詐欺とか不倫とかしまくりなんじゃないの。違うか。 僕にはそれができない。ひとつのウソをひねり出すのにも時間がかかるし、そのウソを補強するためのウソもとんと出てこない。 親は、僕が正直者になるように、名前に「直」を入れたらしい。ああ、岩須嘘紀だったらもっとスラスラ書けたはずなのに。 こんなくだらんことを書いているのは、もちろん、次の原稿を一行も書けてないからでござる。 逃走はやめて、観念せよ!俺! はい。ゼロを0.1くらいにする努力をします。 まずは、先人たちの素晴らしいウソを勉強するために、積ん読の小説を読もっかな(やはり逃走)。   (ちなみにこんなラジオドラマを書いています)

もしやり直せるなら

カウンターにいらっしゃった若いお客さんにこんなことを言われました。 「もし人生のある地点からやり直せるなら、いつに戻りたいですか?」 僕はうーんと考えてしまいました。 どんな人生であれ、多かれ少なかれ、後悔はあると思う。 立派な人だって、あのときなんであんなことをしちゃったんだろう、って思っている気がする。 大谷翔平ならば別かも知れないけれど。 でも、大谷翔平だって、自転車で夜道を走っているときに、過去のやらかしが突然頭に蘇ってきて、わーーと大声を上げて立ち漕ぎをした経験があるでしょう。 ないか。 ただ、そのとき思ったのは。 「もしやり直せるなら」という問いが、若い人からおっさんに向けて出るのって、なんか凄くないかということ。 その彼は、この春から就職し、東京に行くのだという。もしかしたら、おっさんの後悔ポイントを仕入れておいて、これから自分はそうならないように注意しようと思ったのかなあ。 きっと彼は社会に出るに当たって、今、人生について真剣に考えている時期なんだろうな。偉い。老成している。 自分が若いときは、おっさんがしまったと思っていることなんて、まったく興味がなかったです。目の前の自分ごとでいっぱいいっぱいで、年長者のすねの傷を他山の石にしようなんていうアイデアなんて思いつきもしなかった。 SNSで「人生何週目?」っていう言葉が流行ったり、ドラマ「ブラッシュアップライフ」でループ構造の世界観が話題になったりしましたが、若い人たちには、ああいうのの影響があるのかもな、と思ったりもしました。 今って、人生ってものを俯瞰して見て、自分が今人生のどのへんなのかをちゃんと認識できる人が多いのかも。 僕なんか、大学の頃なんて、目の前50センチくらいしか見てなかったなあ。 そして、僕はその「いつに戻りたいですか?」にこう答えました。 「大学を卒業するときです。」 僕はアホだった。あのとき、新卒というのが人生に一回きりで、学生にとって素晴らしく価値があるものだということを知らなかったのです。 就職活動のときに、ちゃんとその価値をわかっていたら、もうちょっとまともな道を選んでいたかも知れない。 しかし、あのときの僕は、バイトでやっているラジオの仕事が楽しくて仕方がなかった。目の前の50センチくらいしか見えていなかったので、まんまと就職活動をし忘れ、学生ADからフリーターADになりました。 そして、目の前の楽しそうなことを選択し続けて、飲食店にたどり着き、今に至ります。その結果、いまだに自転車で「なんであんなこと言ったんだ俺!」と叫んで立ち漕ぎをします。それも込みで楽しいなと思ってます。 どうやら人生を俯瞰するというスキルを身につけることなく、すくすく無邪気にアラフィフになってしまったようで。 こんな僕だから、もし大学のときに、新卒って価値があるんだよ、と教えてくれるおっさんがいて、その地点に戻ったとて・・・やはり、フリーターを選択していたかもな。そして、結局はこんな位置にたどり着いている気がする。 うまくまとまらないですが。 若い人よ。 目の前のやりたいことをやり続けたら、こんな感じになるという1サンプルの人生がここにあります。 俯瞰の材料に使ってもらえたら幸いです。

ソトは美味しい

外(ソト)で飲んだり食べたりするもの。あれ、なんであんなに美味しいんでしょうね。 例えば、キャンプでのバーベキュー。高くないお肉でも、多少焦げていても、たいへん美味しいです。 家のコンロで焼いて食べようなんてまず思わないけれど、焚き火で焼いたマシュマロって極上のスイーツになります。たまりません。 去年山に行ったとき、山小屋のテラス席で食べたなんの変哲もないカレーや、小雨の中で雨宿りしながら飲んだビール。あれも格別な味わいだったなあ。 やはり、ソトというシチュエーションが感じ方を大きく変えることは想像に難くないです。 では、ソトはウチと何が違うのか。 ソトには、日光がある。風がある。雨がある。川の流れる音が聞こえる。木では鳥が実をついばんでいる。地面の蟻は餌を運んでいる。 僕らはそれらの情報を五感で感じます。 すると、自分という存在も、この地球の中にいる生き物のひとつであることが認識しやすくなる。 と、僕は思うのです。 だから、いつもの壁と天井と床のあるウチよりも、飲む食べるという行為が「他の生き物と同じように、命を保つために行っている」感じがする。 そして、それがありがたく思える。 ありがたくいただくと、美味しく感じる。 こんな理屈で、ソト飲食は、素晴らしく美味しい体験になるんじゃないかな、と。 そしてソトで飲むワイン、これはまた格別です。 特にワインができる工程を見たことがあるならば、余計にそう思うのではないでしょうか。 今、目の前に一杯のワインがあるとします。 そして、僕は地面に立っています。その地面をたどった先には畑があります。その畑には、丁寧に育てられたぶどうがたわわに実っています。職人さんが、つやっつやのそのぶどうを潰して、上手に発酵させ、それから、上手に熟成させます。 そうやって、手元にやってきたのが、今、口にしているワインなのだ! ぶどうや職人さんたちと同じ、土の上に立ちながら、今、それを味わっているのだ! やあ、やあ、これはありがたい。素晴らしく美味しい体験だ。 実際は、いちいち飲むときにそこまで考えていないとしても、でもね、屋外で飲んでいるとき、僕らはどこかで自然との結びつきを感じていると思うのです。 さあ、もうすぐ暖かくなります。 そうなったら、ソト飲みをしよう。自然の一部に、たまには自分もなろう。 === ここからはCMです。 === 2024年3月30日(土)31(日)、ニュージーランドワイン専門店「ボクモワイン」は、お祭りにブース出展するよ! 場所は、名古屋が誇る桜の名所「鶴舞公園」の奏楽堂。 ZIP-FMが主催する、SAKURA...

木村滋久さん

「前から歩いてくるヤンキーに目は逸らすけれど、バンジージャンプは飛べるタイプ。」 木村さんはご自身のことをそう言っていました。 昨日、ニュージーランドのワインメイカー・木村滋久さんが4年ぶりにボクモにやってきました。 コロナをジャンプしての再会、嬉しかったです。 満席の店内で、お客さんに向けてご自身がつくるキムラセラーズのワインの話をたっぷりしていただきました。 終始丁寧な話しぶりで、ご自身のこだわりや思い、自社畑のオーガニック製法などについて詳しく聞くことが出来ました。 こんな機会はなかなかないと、遠くからはるばるいらっしゃった方も。みなさん、本人からお話を聞きながら飲むワインは格別だとおっしゃっていました。 それにしても、ホテルマン時代にワインをつくってみたいと思い立ち、夫婦でニュージーランドに移住して、大学で栽培と醸造を学び、そして大手ワイナリー勤務を経て独立。 なかなかそんな行動ができる人なんていないですよ。 僕がそう言ったら、木村さんは「僕は基本臆病者なんです。でも、思い切りは良い方なんです」と言い、冒頭の言葉が出てきたのでした。 なるほど。こういう性格の方が自分の思いを成し遂げるんだな。 まあ、僕だって昔は前からヤンキーが歩いてきたら、すれ違わないように曲がりたくない角を曲がるタイプではありました。 にしても、海外で農業をやるなんて、僕からすると度を超えた特大のバンジーです。 そしてワインについて知れば知るほど、そのバンジーの飛距離が途方もないことがわかるのです。 ワイン業界の端くれにいると、「自分もワインをつくってみたいな」という思いが頭をかすめることがなかったとは言えません。 でも、ワイナリーを訪れたり、こうして実際にワインをつくる方の話を聞くと「無理無理」と正気に戻ります。 毎日土にまみれて地道な作業の繰り返し。栽培や醸造について勉強すべきことは山ほどある。 常に自然の脅威と隣り合わせ。 丹精込めてつくったものの、思い通りのぶどうにならない、発酵が進まない、香りや色が出ない、余分な菌が入ってくる。そんなこともあるでしょう。 なのに、ぶどうは1年に1回しか収穫できない。どんなに凄いワインメーカーも年に1度ずつしか経験値は貯まらない。 ・・・難しすぎるだろう! だから、こうして素晴らしいワインをつくっている方が、もうそれはそれは神々しく、キラキラ輝いて見えるのです。 特に今回新入荷したドライ リースリング、相当良いです。リンゴのコンポートのような香り、ピュアな飲み口、そして余韻にミネラル感と塩味。たまりません。 ボクモワインでも数量限定で入荷していますので、気になった方はぜひ。 キムラセラーズのアイテムはこちら 最後に、ずっと気になっていた質問をしてみました。 「日本の甲州をニュージーランドに持っていったら、うまく育つと思いますか?」 すると、木村さんは 「余裕で育つと思います。きっと美味しいワインが出来ると思いますよ。」...

海を渡った日本人

今日はちょっとお知らせです。 その前に、ニュージーランドに住んでいる日本人ってどれくらいいるかご存じでしょうか? 外務省のデータによるとおよそ2万人です(2021年)。けっこうたくさんいるんだと感じる人も多いのではないでしょうか。 ニュージーランドは人口500万人の国なので、0.4%が日本人という計算になります(ちなみにこの割合は、日本に住むベトナム人の割合とだいたい同じです)。 僕の従兄弟ファミリーもあちらに住んでもう長いです。 四季があるけれど夏は暑くない。手つかずの自然だらけ。何と言ってもワインが美味しい!日本人にとって住みやすい国なんだろうなと思います。 そして、けっこうたくさんいるんだ、と言えば、ニュージーランドでワインをつくっている日本人です。 僕が把握しているだけでも、岡田 岳樹さん(フォリウム)、木村 滋久さん・美恵子さん夫妻(キムラセラーズ)、楠田 浩之さん(クスダワインズ)、小山 浩平さん(グリーンソングス)、小山 竜宇さん(タカケイワインズ)、佐藤 嘉晃さん・恭子さん夫妻(サトウワインズ)、寺口信生さん(MUTU睦)、中野 雄揮さん(久能ワインズ)。それからワイナリー経営も含めると、大沢泰造さん(大沢ワインズ)。 10人以上います。 ニュージーランドは、小さな資本で起業しやすい国で、自国を盛り上げてくれるなら、外国人の起業もウェルカムなムードがあると言います。 そして、外国人にも門戸を開いている「リンカーン大学」が、ぶどう栽培やワイン醸造についてしっかり学べる環境を整えているというのも、日本人のワインメーカーが多い理由だと言われてます。 とは言え、です。 実際に、海を渡ってワインをつくろうと決断する。そして実行する。これは並大抵のパワーじゃないことは容易に想像がつきます。 そして、彼らが生み出すワインが、これまたすごいのです。 どれもそれぞれの土地の個性を活かしたワインにちゃんとなっている。おしなべて品質が高いです。 やっぱり日本人は勉強熱心で勤勉なんだな、そしてニュージーランドはワインづくりに向いている条件が揃っているんだな、とワインから感じます。 その中でも、僕のお気に入りと言えば「キムラセラーズ」です。ソーヴィニヨン・ブランは、和の柑橘を感じます。ピノ・ノワールは、力強くて奥行きがあります。 価格は安くはないですが、夫婦二人がつくった素晴らしいハンドメイドワインと考えると、決して高くはないでしょう。 ボクモワインでもリピーターが多く、やっぱり美味しいものはちゃんと伝わるんだなと感じています。 そして、ここから重要。 そのキムラセラーズの木村滋久さん、久しぶりにボクモに登場!します! 前にお店に来ていただいたのはコロナ前。今回は4年ぶり?くらいのご来店です。通常営業の中で、木村さんのお話を聞く時間をつくって、キムラセラーズのワインをグラスで楽しんで頂こうと思います。 ご来店予定は、2月9日(金)です。...

昨日と違う店

新しく何かをはじめることが億劫になっている自分がいます。 昨日と同じ今日が良い。どこかでそう思ってしまっています。 年をとると、脳の機能が下がる。環境の変化に対応する能力が落ちる。それが普通の人間がたどる道。そう聞いたことがあります。 そして、「昨日と同じ店」って、価値があるように錯覚しがちです。 あの店の、あの味、あの雰囲気。 それが良いよね、と思う人は、次もその体験をしたいと思い、店を利用します。しかし、その「同じを求めるリピーター」だけでなり立つ店はごくわずかです。 残念なことに、人間の脳には「飽きる」という機能がついています。より楽しいことを求めるようにできています。 だから、「昨日と同じ店」は「昨日と同じ楽しさしか提供できない店」なのです。ちょっと言い方は強めですが。 店は、もっと楽しい、もっと美味しい、を提供し続けなければいけない宿命にあります。 なのに、店の中の人である僕の脳は、毎日ちょっとずつ老化している。 いかん! ストップ老化。刺激を入れなければ。老化に抗うことが、脳と店の活性化に繋がるのだ。 そう思って今週これをやりました。 「ボクモ×獬(シエ) ニュージーランドワインとジビエ料理の饗宴」 いつものボクモではない料理の数々を、いつもよりグレードアップしたニュージーランドワインといっしょに。 伏見のジビエ料理店「獬(シエ)」の酒井さんを招いて、ボクモの古園シェフとのWシェフ体制でお料理を楽しんでいただきました。 ペアリングを考え、当日の段取りを考えて、脳にびんびんと刺激を送りました。 参加してくださった方からは、「お盆と正月がいっぺんにきた食事会だった」と言っていただきました。皆さんの脳にも非日常体験という刺激が伝わったようでよかったです。 個人的にはもうちょっとああすれば良かったなという点がいくつかありましたが、これもまた脳への刺激。次はもっと良くするぞ、という気持ちが盛り上がってきています。 次回は春頃かな。また刺激的なやつ、やります。 ちなみに最近、妻がチョコザップに行き始めました。定期的な運動は、脳の老化を防ぐのに役立つらしいですね。 ボクモ負けてられん!

兄のシャツ

大人になると、自分が弟であることを忘れているときが多いです。 ボクモスタッフの中では年長者(断トツおっさん)だし、ボクモのカウンターにいらっしゃる方も年下の割合が多い。通販のボクモワインはほぼ同世代の集まりです。 実質、僕が弟らしい弟、自他共に認める紛れもない弟だったのは、実家にいた20歳まで。 その後、ラジオ局で学生ADをやりはじめたころは、最年少スタッフだったので、「おい、ナオキ!」とか呼ばれて、まだかろうじて弟っぽさはありました。 しかし、年下の人が多くなり、「岩須さん」と呼ばれることが増えていくと、甘えん坊ではいられなくなってきます。 苦手ながらもちょっとずつ脱・弟化していき、「これが大人ってやつかな」という像を演じるようになりました。 そして、いつしか自分のキャラクターとして体に馴染んでいき、実家暮らしの甘い僕ちゃんからは遠ざかっていきました。 今では「岩須さん末っ子なんですか?そうは見えなかった」と言われるほど、弟色を薄めることに成功していると思います。成功って、別に薄めたかったわけじゃないんだけれど。揉まれて自然とそうなった感じなので。 しかし先日、ああ、やぱり僕は弟なんだ、と思う出来事がありました。 兄がシャツを送ってきたのです。 今年の正月に会えなかったこともあり、兄夫妻は年始の挨拶にと、東京の珍しくて美味しいお菓子を送ってくれました。その箱になぜかギンガムチェックの可愛らしいコットンシャツ(男物)も入っていたのです。 衣類を送ってくるなんて珍しい。いや初めてじゃないか。 どんな意図?と思ってLINEしてみたところ、こんな返事が。 「洗って縮んじゃったのよねー。ほとんど着てないので、もし好みならと思って、菓子の緩衝材代わりに入れてみた。着なかったら処分して。」 ほほう!お下がりとな! 思い返すと、うちは裕福な家庭ではなかったけれど、親から兄のお下がりを着させられた記憶はあんまりありません。 きっと母親は、昔自分がお古を着させられて嫌だったから、僕にはそうしなかったんじゃないかと思います。 おそらく幼い僕もお下がりを嫌がったことがあるのでしょう。 でも、おっさんになった今、お下がりの受け止め方は、大いに変わった。というか、変わったことを、このシャツで知りました。 兄弟げんかをしていた子どもの頃。 あんまり連絡をしなくなった青春期。 お互いに家庭を持って、たまにいっしょにワインを飲むようになった今。 そんな変遷を経て、兄弟はおっさんとなりました。 そしてシャツに袖を通して、思わず笑いました。 「兄のお下がりを着るって、めっちゃ弟やん!!」 ああそう言えば、僕は弟だった。 シャツが、僕を長らく離れていたホームポジションに戻してくれた。懐かしい自分に再会した気分。 そうだ。東京へこのシャツを着ていって、兄とサシで飲もう。うん、それがいい。きっと弟にもっと浸れる。 そして奢ってもらうとしよう(弟の発想)。