ニュージーランドワインラバーズのコンセプト
NZ在住のいとこ 「ワインのお店をはじめるんでしょ?聞いたよ。で、ニュージーランドワインもやるの?」
僕 「え?ニュージーランドってワイン作ってるの?」
いとこ 「いやいやこっちのスーパーだと、棚2列くらいはまるまる地元のワインだよ。」
僕 「ほんとに?ワインと言えば、フランスとイタリアとチリだと思ってた。」
いとこ 「(絶句)・・・じゃあ開店記念に、何本かそっちに送るね。」
これが僕とニュージーランドワインとの出会いでした。
そう、10年前の僕はソムリエの資格も持っていなかったし、ただなんとなくワインが好きで、ワインの店をやろうとしていた無謀なヤツでした。どれくらい無謀だったかは、また別の記事で書きますが・・・
で、いとこから届いたニュージーランドの白ワインを飲んでみて驚きました。
「これまで飲んできたワインと明らかに違う!」
なんというか、一口目からいきなり美味しいんです。
グレープフルーツのような、とんでもなくフルーティな味。
そしてその果実爆弾(!)とも言える強烈な香りが、ワインを飲み込んだ後、口から鼻にずばーんと抜けるのです。
「果樹園がボトルの中にまるごと入っている!」
(当時の精一杯のソムリエ風な表現 笑)
こんなワインがあったなんて。ぜひとも僕がやる店で扱いたい。お客さんに広めたい。
そう思いました。しかし現実は、それがかなり難しかった。
なぜなら、当時のニュージーランドワインは比較的高価なものがメインだったから。
カジュアル路線の僕の店では、ちと高い。高いものはちゃんと説明できなければ売れるわけがない。僕自身が、ワインを紹介する知識も技術もぜんぜんなかったので、宝の持ち腐れになってしまう。
なので、店を開けてから数年は、南米やヨーロッパのリーズナブルな価格帯のワインをメインにしながら、自分なりに世界のワインの勉強をしました。
そして、4年後にソムリエ試験に合格。
そこからだんだん自信もつき、あの時僕が味わった感動をお客さんにも伝えようと、ニュージーランドワインをせっせと集めて紹介しはじめました。
専門書を読み、試飲会で知らないワインをテイスティングする。徐々にリーズナブルな価格帯のものもでてきたので、そういうものを積極的に仕入れる。そして、実際にニュージーランドへ行き、ワイナリーを巡り、その素晴らしさを実感する。それらの経験を、店のワインリストにまとめて紹介する。のめり込み具合はどんどん加速していったのでした。
そして、のめり込んだ結果、ひとつのシンプルな考えが浮かびました。
「あれ?もしかして、ニュージーランドワインって、これからワインを飲みたいっていう初心者にぴったりなんじゃないの?」
ここからは、その理由を書きます。
理由その1。
「ニュージーランドワインは日本人好みのフルーティーさがあるから」。
これは、先述したとおりですね。
NZ白ワインの代表格、ソーヴィニヨン・ブランを飲むと、しっかりとしたフルーツの味がします。まるでグレープフルーツをかじったような柑橘類の味わいです。
また、NZ赤ワインの代表格、ピノ・ノワールを飲むと、ラズベリーのようなベリー系のフルーツの味わいがあります。
日本人にとってワインは果実酒=フルーツのお酒のイメージがあります。特に初心者にとっては、フルーティーさがあった方がないよりも断然親しみやすい。ひとくち飲んで、ああ美味しい。めちゃ飲みやすい。これがニュージーランドワインの素晴らしいところ。とてもキャッチーなワインなんです。
理由その2。
「世界のワインの中では、極めてシンプルなラベル。見た目で味が想像できちゃう」。
ヨーロッパやその他の国では、日常のお酒。食卓に一本。向こうで生活していた友によると、味噌汁やお茶に近いんだそうです。
でも日本じゃ、いまだに横文字で書かれたわかりにくいお酒。ラベルのデザインでなんとなく選んで、よかった、イマイチだったとなる。
でも、なんせ種類が多すぎるから、いっこうに経験値は貯まらない。よって、いつまでも博打のようなジャケ買いから抜け出せない。
これが普通の初心者です。
でも、この「わからないからいつまでもジャケ買い」を打破してくれるのが、ニュージーランドワインです。
なぜなら、少し勉強すれば、ラベルに書いてあることがちゃんとわかるようになるから。
フランス語やスペイン語、ドイツ語は読めなくても、英語ならある程度はとっつきやすいでしょ。
ニュージーランドワインはすべて英語で書いてあるし、書いてあることはほぼ決まり文句です。一度法則を知れば、あとはスイスイわかるというわけ。「ちょっと覚えたら、あとはシンプル」なんです。
さらに、その決まり文句は、味わいにダイレクトに結びついていると僕は思います。これは10年ニュージーランドワインを飲んできた実感です。「こう書いてあれば、あの味ね」となるわけです。
書いてあることを情報をメモし、味の印象を記録しながら飲む。これを少し繰り返せば、売っているボトルから味わいがなんとなくわかるスキルが身につく。
こんなことができたら、ずいぶんとワインが身近に感じられると思いませんか?
しかし。
シンプルと言われると、逆に奥行きがない、つまらないと感じる人もいるでしょう。ノーノーとんでもない。
理由その3。
「奥行きもすごいぞ、ニュージーランドワイン」
さっきのとおり、ある程度情報を覚えたとき。初心者から中級者くらいになったとき。さらに掘り下げていくと、そこには世界のワインファンが唸るような、好奇心をビシビシ刺激してくれる要素もちゃんとあります。
まず、ニュージーランド各地には、世界のセレブがヨダレを垂らす高級ワインもごろごろ眠っている。一度は飲んでみたい、プレミアムな銘柄が各地に点在しています。
たとえば、オークランド北部の「プロヴィダンス」、北島マーティンボロの「アタ・ランギ」、クライストチャーチ近郊の「ペガサス・ベイ」、クイーンズタウンから近い「フェルトンロード」などなど。それぞれの産地に1本1万円を超えるプレミアムワインがだいたいあります。 そして、もうひとつ。「味がどんどん進化している」というのもニュージーランドワインの魅力。
ヨーロッパと違ってワインづくりの歴史は浅い分、ワイナリーはみんな「頑張らなきゃヨーロッパに追いつけない」の精神を持っています。
みんな切磋琢磨して、毎年「去年より美味しいものを」と技術を向上させているわけです。
それぞれのワイナリーは、年を追うごとに味わいをブラッシュアップさせたり、新しくラインナップを増やしたりと、いろんな工夫をしています。
だから、好きなワイナリーを定め、そのワイナリーのワインを毎年追いかけて飲んでいくっていうのも、非常にわくわくする楽しみ方だと思います。
つまり、まとめると・・・
ニュージーランドワインは、入り口はシンプル。わかりやすく覚えやすい。瓶を見ればなんとなく味がわかるようになる。
しかし、掘っていくとしっかり深い。
産地の多様性や、ぶどう品種の特性、ワイナリーの個性、プレミアムワインの存在に目を向けると、非常に興味深いワールドが広がっているんです。
どうですか?ニュージーランドワインって面白そうでしょ?
僕は、こんな話を毎日のように自分の店でしています。
でも、小さい店なので、伝えられる人の数と伝わる情報量には限界がある。だから、このサイトなのです。このサイトで、みなさんに知ってもらいたい。
ここをきっかけに、ニュージーランドワインの「美味しさ」「楽しさ」「わかりやすさ」そして「奥行き」がちょっとでも伝われば、とても嬉しいです。
この記事の筆者

- ニュージーランドワインが好きすぎるソムリエ。ラジオの原稿執筆業(ニッポン放送、bayfm、NACK5)。栄5「ボクモ」を経営。毎月第4水曜はジュンク堂名古屋栄店でワイン講師(コロナでお休み中)。好きな音楽はRADWIMPSと民族音楽。最近紅茶が体にあってきた。一般社団法人日本ソムリエ協会 認定ソムリエ。
ボクモ(BOKUMO)
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